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流されて帝国  作者: ギョラニスト
77/205

76話

途中からディラン視点の話になります。


「ナディア様…本当に違うのですか?」


おずおずとグレタが聞いてくる


「違うわよ。何度も言ったけれど皆んな聞いてくれないのだもの。私と殿下はまだ婚姻していないのだから当然だわ」


「まぁ、そうなのですけど…本当に本当ですか?」


「グレタ、しつこいわ。何故疑うの?」


「申し訳ございません。疑っている訳ではなく、ただ…そうだったら1番良いなと」


「…どうゆう意味かしら?」


「いえ、その…」


言い辛いのかモジモジしているグレタに


「はっきりと言って欲しいわ」


グレタはエアリーと目線を交わした後


「わかりました。はっきりと申し上げます。実は兵士たちの間でナディア様ダメじゃないか説が流れているのです」


「ダメじゃないか説?皇太子妃に相応しくないと言う意味かしら?」


私よりもマデリーン様の方が、皇太子妃に相応しいと言う噂が流れていると耳にはしたけれど


「いえ…あの、お、お身体、お身体が弱いのではないかと…」


身体が弱い?

確かに今発熱しているわ。


そう言えばこの間もやむにやまれず発熱した事にしたわ。王都のアーバレック城にいた時も寝込んだわね…


今以外、心労だったり仮病だったり…

あら?確かに身体が弱そう。


他にも担がれたり、おぶられたり、抱っこされたり、車椅子に乗っていたり…兵士達が言うようにダメかもしれない。


身体の弱い王妃は跡継ぎ問題に直結だわ。


でもね?

私個人的には今以外元気だったけれど、それを知っているのは私だけかもしれない…


「ですから跡継ぎさえいたら誰も文句言わないのにと思いまして…」


「そうだったのね。わかったわ、グレタ。どうもありがとう。私なら大丈夫だから」


グレタは私の事を思って言ってくれている。

それはようく分かる。


確かに私は魔法は使えないし、体力面でも劣ってしまう。


このドレナバル帝国の皇太子妃は完璧な淑女、立ち居振る舞いやマナー、センスと言うだけではダメなのだわ。


淑女な上に健康は勿論、体力も手にしなければならない!私が決意を固めていると


「でも!ナディア様に魔力が無いのはほとんどの人はご存知ありません。それはもう仕方のない事だと思っているのですが、兵士の中にはいつも軍服で、まともに歩く事もできない、変な帽子を被っている等心ない言葉もあると言います。私にはそれが許せないのです!」



そんな事言われているの⁈

まともに歩けず、服や小物のセンスもない…それは皇太子妃淑女云々ではなくもう貴族令嬢ですらないではないの⁈


「グレタ!そこまで言ってはダメよ!」


エアリーが思わずといった風に口を挟んだ。


「でも!」


あんまりな言われ様に愕然としていると


「ナディア…悪い…ヒューズに逃げられた挙句言いふらされた…」


ガックリしたアイラさんとコニーさんが帰ってきた。


…挙句の果て、婚姻前に身体を許す身持ちの緩い女だと噂されるのは、時間の問題と言う事になるのかしら?


その日私の熱がグングン上がり、私の噂に虚弱体質が加わった


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっと見つけた!」


肩に手を置かれバッと振り向くとそこには美少女ハリーが息を弾ませ座り込んだ。


「ハリー!お前セラ達と一緒に逃げなかったのか?それともセラ達に何かあったのか?」


ここは狭く薄汚れた路地裏で、俺は1人身を隠していた。

時間帯は日も暮れた夕飯時、どうやって門を出ようか考え中だった。


「ハァハァ…セラさん達は無事だと思います。西門はかなりダメージがある様ですが」


「じゃあ何故ここに」


「異常だったから。元老院が手を回したにしても異常過ぎます。それで…殿下1人の方が動き易いのは知っていますが、どうしてもこれを…」


そう言ってハリーは紙の袋を出してきた


「これは?」


「新しい鬘です」


!!


急いで紙袋を開けるとそこには茶色い短髪の鬘が入っていた。


「助かった。どうも皆この頭を目指して追いかけて来ている節があったから」


言いながら金髪の鬘を剥ぎ取り新しい鬘を被った。

ピッタリミラクルフィットしている。


「ええ。そうです。正に皆その髪型を目指して殿下を追いかけていたのです」


「それは一体…」


「後で説明します。とりあえず付いてきて下さい。ここは衛生上問題ありまくりですよ」


確かに一般の人が間違っても立ち入らない様な、暗く薄汚い、しかも臭いと言う三重苦の様な場所だ。

ネズミも駆け回っている。


2人そっと立ち上がり、辺りを警戒しながら通りへと足を踏み出す。


少し広目の通りは、昼間と違い人が大分少なくなっていた。


これはこれで問題アリだ。

この時間ここいら辺は稼ぎ時の筈なのに。


「でん…いや、ここはバートンさんで通しますね」


「あぁ、頼むよ」


「そしたら私の事もハ・ン・ナって呼んで下さいね」


バチンと音がしそうなウインクをしてハリ…ハンナは言った。


「ゴホン、さっきの話だと髪型がと言う事らしいが、何か情報を掴んだのか?」


「ええ。バートンさんを探しがてら色々と…こっちです。アタシお腹空いちゃって。ここでご飯食べましょ」


ハンナは俺の腕を取り酒場に入る。


店は繁盛しているとは言い難く、時間を考えれば閑古鳥が鳴いていると言っていい位だ。


「らっしゃ…い」


店主は愛想なしだったのにハンナを見たらいきなり態度を変えた。


「やぁ、いらっしゃいませ。今日は渡り鳥のシチューパイと川魚の香草焼きがお勧めですよ」


「まぁ、どっちも美味しそう。私シチューパイお願いするわ」


「あいよ!今日はいい果実が手に入ったからお嬢ちゃんにてんこ盛りでサービスするよ」


「まぁ、嬉しいわ。ありがとうございます!私沢山たべますよ?」


「おう!食べきれない程出してやる。で、あんちゃんは?」


店主…ハンナと俺で態度違いすぎだろう。


「…同じ物で」



2人で腹を満たし店を出た。


因みにハンナは籠いっぱいの果実も平らげ、店主を涙目にさせていた。


流石大食いに自信を持っているだけの事はある。


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