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流されて帝国  作者: ギョラニスト
76/205

75話


「どこか痛む所はありますか?」


「いえ。ただとても怠くて眠いです」


私の部屋にサウル医師。

いつこの村にいらしたのかしら?


「風邪とは少し違う様ですね。本当にトカゲに噛まれただけ?」


「ええ。ト・カ・ゲに噛まれたのです」


相変わらず冷たい表情で答えるエアリー。

まさか魔物にとは言えないものね。


「他に変わった事をしたとか、いつもと違う所へ散策しに行ったとかは?」


「ナディア様はこの所刺繍に勤しんでおいでで、散策も気晴らし程度に近くを巡るだけでした。何故その様な事を?」


「いや、ナディア様が見知らぬ草などに触れそのせいでとも思ったのです。風邪でもなく、高熱でもなく、食欲もあまり無く、怠くて眠いなんて妊娠初期みたいだなぁと思って。ハハハ。あり得ませんよねー」


「あり得ませんよ」


まだ婚姻も結んでいないのに。

あぁ眠い。


「ふむ。ナディア様には魔術を身体に巡らせても意味ないですし、とりあえずちょっと様子を見て下さい」


「ええ。わかりましたわ」


サウル医師が部屋を出て行った。

あぁダメだわ。眠くて仕方ない。


ベッドに横たわろうとして、玄関の扉が閉まった音が聞こえた瞬間エアリーが駆け寄り


「ナディア様!おめでとうございます!!」


「なっ?何が?」


眠気が飛ぶ程大きな声で


「赤ちゃんがいらっしゃるのですね!」



「な、何を言ってるの?エアリー」


「こうしてはいられません!」


「いや、待って!エアリー⁈」


エアリーにしては珍しくドタドタと階段を駆け下りて行ってしまった。


しばらくすると


「ナディア!おめでたって本当か⁈」


「ナディアちゃんやったわね!」


「ナディア様、私もとっととセラさんと結婚してナディア様より早く産んで乳母になります!」


アイラさん、コニーさん、グレタが押し寄せて畳み掛ける様に喋ってくる。


「ち、違うわ!皆んな聞いて!そして、グレタが言ってる事は無茶苦茶よ!」


相変わらず私の言葉は皆んなの耳には届かないらしく、挙句アイラさんが


「照れるなって。暫くは大人しくしなよ」


「そうよ。ナディアちゃん。身体冷やさない様にしないと。あ、もしかして殿下はいち早く気づいて指輪をナディアちゃんに託したのかしら?」


コニーさんがとんでもない事を言い出した



「なるほど…殿下は始めからナディアに子供が出来たの知って指輪を託したって事か。殿下の魔力を持ってすれば、それくらいの事はわかってしまうって事だな」


「アイラさん?何を真顔で言っているのです?お願いだから話を…」


「ナディア様!私今から赤ちゃんのおくるみから靴下、帽子、肌着もぜ〜んぶ作りますからね!」


「グ、グレタ⁈」


グレタはそう言って階段を駆け下りてしまった。


「コニー!アタシこんな木造の家じゃ安心できない。一緒にこの家の増強しに行くよ!」


「わかったわ」


「待って!2人共!早とちり…」


アイラさんとコニーさんも階段を駆け下り残ったエアリーが


「悪阻には良い食べ物取りに行ってきます!ナディア様は暖かくしてお休み下さい!」


そう言っていなくなってしまった。

そんな馬鹿な…何故子供か出来たなんて皆思ってしまうの⁈


…ハッ!あの日?あの時殿下と固く握手を交わした日の事まだ誤解している⁈どうしましょう。どうしたら皆んな私の話を聞いてくれるのかしら?


もう眠気なんて吹っ飛んで私はカーディガンを羽織り、階段を駆け下りようとした途端視界がグラリと揺れた。


「ウギャーー」


咄嗟に階段の手摺りに掴まりしゃがみ込んだ。

コレ地震だ!


怖い!!下から突き上げる様な揺れになり更に怖さが増す。こんなの一生慣れる事なんてできない!


玄関から外に出ようとしていたアイラさんが文字通り飛んで来て、私の頭と身体を咄嗟に庇い少しだけ開けている階段の踊り場まで運ぶ。


「ナディア!大丈夫、大丈夫だから」


いやだ、アイラさんカッコいい!ステキ!

思わずアイラさんに抱きついてしまう。


しばらくすると揺れは収まってきて3人も階段を上がってきた


「ナディア?大丈夫?」


アイラさんが顔を覗き込んで聞いてくる。


「こ、こ、怖かった〜」


「だね。今のはちょっとデカかった。大丈夫、大丈夫」


頭をポンポンとしてもらい更にアイラさんしがみつく。

カッコいい!もうアイラさんと結婚したい!


皆んなで一階に降り私が落ち着く様にとエアリーがホットミルクにハチミツを入れた物を作ってくれた。


お茶ではないの?


「ナディア様には今はこちらの方が良いかと思って」


ハッ!そうだった!

地震のせいでうっかり妊娠の事を忘れていた


「あの、皆んな勘違いしているけれど、私妊娠なんてしてないわよ?あの夜だって別に殿下とは何もなかったのよ?」


「「「「はい?」」」」


良かったわ。

今なら聞いてくれるのね


「え⁈妊娠は⁈」


「だから…」


ガシャン



「ナ、ナディア様!妊娠?…うわー!やったー!」


玄関先にはヒューズ君がいた


「い、いや、ヒューズ君⁈」


「ぃやっほう!たまたま通りかかってデカいのが来て心配で覗いてみたら!すっげ!ビッグニュース。俺皆んなに知らせてくるよ」


「ま、待って!待って!ヒューズく…」


飛び出したヒューズ君を、アイラさんとコニーさんが追いかける様に飛び出した。


残された私達は仕方なく家で待つ事にした



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