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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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69話


馬車内が一気に緊張感に包まれる。


「僕はディラン皇太子殿下の使者、セラ・パーカーだが何事か?」


この中で1番下っ端っぽい僕が声を上げる。


「貴様ら何者だ?ディラン皇太子殿下の使者殿ならもう随分前にここを通過して行ったぞ」


!!!


何だって⁈


落ち着け。僕!

きっと何かの間違いだ。


「どうゆう事?僕らは間違いなくディラン皇太子殿下の使者だけど」


使者の証明書を懐から取り出し…

あれ?ない…証明書がない⁈


落とした⁈いつ⁈そうだ!

手紙を、元老院の封蝋印を見せれば…


ピーーー


「不審者出現!全員臨戦体制を取れ!」


確認もせず臨戦体制⁈


「「セラさん!!」」


こちらの兵士達に緊張感が走る。


クソッ!人がワラワラ出てくる。

どうする⁈大人しく捕まって事情を話すか?


いや、違う!始めっからこうなる筋書きに決まってるんじゃないか⁈


チクショウ…

ここで捕まったらきっともう王都から出る事は叶わない。

ならば


「全員臨戦体制!強行突破!橋を渡れー!」


オー!!


王都を囲む堀に架かる橋は手動だった筈。


先頭の乗馬組が魔法で攻撃しながら道を空ける。

僕はその間呪文を唱えながら馬車に防御魔法をかける。


乗馬の方が早く駆け抜けられるから王都からは出れるだろう。


でも馬車はギリギリ間に合うか…


馬車に乗っている兵士も馬車から攻撃をするが、王都の兵士が後から後からやって来ては攻撃してくる。


もはや捕らえる気なんか無い。

しんがりを務めているオズワルドやクラウス達に


「後ろ!前へ行け!」


この馬車でギリギリなら後ろは間に合わないと思っての言葉に


「嫌です!ですが、横につけます!中から魔法ぶっ放なさないで下さい!」


オズワルドがそう言うと、後方から左右に2頭ずつ並走し、王宮の兵士と戦いながら前に進む。


最後にオズワルドとクラウスの乗った馬が馬車の後ろにピタリとついて、オズワルドが馬車に飛び乗った。


オズワルドを始め皆んなは文官な僕と違って戦闘には慣れている。


ここは任せた方が良さそうだ。

クラウスはオズワルドが乗っていた馬を引き前へ出る。


すると馬車の中の何人かの兵士が


「オズワルドさん!手伝います」


そう言ってにオズワルドを含め5人の兵士が馬車の後方に並ぶと


「3・2・1」


オズワルドの掛け声で巨大な爆炎魔法をぶっ放した。


衝撃で馬車が数メルトン前に押し出される。

明らかにやり過ぎな気がする。


神様どうか一般市民が巻き込まれていません様に。

西門の一部は破壊され周りが黒く煤けてしまった。

けれど


「っシャー!!」


ウオォ!!


とりあえず門も堀も通過する事ができた。


「全速前進!!」


追手が来るだろうから安心はできないけれど、第一関門突破だ。


走りながら点呼を取り、全員無事な事を皆んなで喜んだ。


その後魔法の力も手伝い、大分前へ進んだ所で陣を張る事にする。


はぁ〜〜…死ぬかと思った。

負傷者の手当てをする者、天幕張る者、馬の世話をする者、とにかく皆んなで王都を出る事には成功した。


後はディランとハリー、あの2人は無事王都から出る事なんてできるのだろうか?


いや、ディランが本気出したらエライ事になる。

王都を破壊する事なく脱出してほしい。


西門を破壊した事は綺麗に忘れてそう思った。


一晩休み、夜明けと共に出発する。


追手が来るのではと警戒したがそんな気配はなく、来なければ来ないで気味が悪い。


元老院はディランが来ていないと思って、手を出さないだけかもしれない。


でもそれならこのままハイドン村へ直接行くのはマズイのではないか?


元老院はディランの生捕りを目論んでいるなら…

それとも生捕りの必要が無くなった?


だとしたら囚われたのは陛下?ナディア様?

…無いな。


捕らえたのなら手紙を読んだあの時、バクレール公爵なら顔なんて歪めないで嫌味のオンパレードだ。


考えろ。


このままハイドン村に直接行くか、どこかに立ち寄って様子を見るか…


「どう?追手は?」


「後方には誰もいません」


馬車の後ろを走るクラウスに聞くとそんな答えが返ってきた。


進路は一直線にハイドン村を目指しているけれど、少し寄り道をして様子を見るのはアリかもしれない。


クラウスと並走して走るオズワルドに


「ねぇ、先頭にメイラーの町に寄る様言って」


「メイラーですか?」


「うん。追手が来なさすぎて気味悪いから」


オズワルドは一瞬目を見開き、その後苦笑いしながら了解と言って先頭へ向かった。


進路変更した後暫くは何事も無く進んだが、メイラーの町まで後少しと言う所で先頭の馬がいきなり攻撃された。


「敵襲!敵襲!」


すんでのところで避ける事は出来たが、馬達は驚きバラついた所に岩陰に隠れていた兵士が一斉に襲ってきた。


数は十数名で全員乗馬していて多くはないけれど…何故ここに!


「全員退避!体制を立て直せ!」


オズワルドが叫ぶ。

先頭にいた兵士が


「中央組!馬車を守れ!」


中程にいた乗馬組が馬車を守る様囲み、木が生い茂る林に誘導しながら、敵の攻撃を辛うじて防いでいた。


馬車内の兵士達も応戦しているが、乗馬と馬車ではスピードが違う。


林に近づきはするが敵に囲まれ防戦一方でいると、敵兵の1人が叫んだ


「殿下!早く出てこないと馬車が木っ端微塵だぜ!」


バカな!

ディランはここにはいない


「ここに殿下はいらっしゃらない!何者だ⁈」


大声で問いかけるも


「いないなら好都合!行くぞ!!」


ウォー!!


敵の総攻撃が始まり、火の玉やら雷が立て続けに襲ってきて、防御魔法もあっと言う間に破られた。


並走する兵士が


「馬車はもう保ちません!1人ずつこっちへ!」


車輪だけとりあえずついて走る馬車に、手を伸ばして言うので


「グレタ殿!手に掴まって乗って!!」


手を掴んでグレタを先に逃そうとして気が付いた。

震えて固まっている…


クソッ!


「おい!お前が先に行け!」


攻撃していた1番近くにいた兵士に言う


「は、はい!」


手を伸ばし並走する馬に飛び乗るのを見送った後、次々に攻撃を避けながら1人ずつ乗馬組に引き渡して行く。


マズイマズイマズイ!

1番に助けなければならないグレタが動けない。



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