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流されて帝国  作者: ギョラニスト
69/205

68話


どうする⁈

どうしたらいい⁈


馬車を振り返ると、自分達が乗っていた馬車には既に人がよじ登り始めている。


マズイ!

御者台にいるクラウスが蹴落としているが、人が多すぎるし一般市民に積極的に怪我をさせる訳にはいかない。


中にグレタがいるのに!


するとものすごい勢いで馬車の扉が開き、数名の人が馬車から転げ落ちた。


中から大荷物を持ったグレタがのこのこ降りてきて大声で


「通りま〜す。どいてください!」


嘘だろ⁈⁈


馬車によじ登っていた人達も一瞬呆気に取られ、その合間を縫うようにグレタは歩き出した。


あんまりな状況に動けずにいると、いち早く気づいた年若い男がグレタの肩に手をかけ、肩からぶら下げていた荷物を叩き落とした。


「あぁ!ナディア様の服が!!」


グレタの悲鳴の様な声が響いた


マズイ!

早く助けに行かなくては!


駆け出す瞬間グレタが視界から消えたと思ったら、グレタの荷物を叩き落とした男が股間を押さえて蹲ってしまった。


しゃがんでいたらしいグレタは手をパンパンと叩き再び荷物を持つと


「私は貴族でもなく、一市民なので護身術を使いました。か弱い一市民を襲う様なマネはなさらないで下さいね」


完全に目が据わってる…

くるりと踵を返しスタスタ歩きだしてしまった。


今のは『私は一市民で兵士ではないからやり返した。

兵士とは関係ないから襲わないで』


と言う説明にも言い訳にも聞こえる。

よくわからないけどこれはチャンスだ!

オズワルドに


「馬車と馬を切り離すぞ!急げ」


2人で駆け出し、1人御者台の上で悪戦苦闘しているクラウスの元に行く。


群がっていた人達を引きずり下ろし、馬と馬車を繋ぐハーネスの安全ピンを引っこ抜く。


馬は2頭、オズワルドと僕が2人乗りをし、もう1頭にクラウスが飛び乗った。


いきなりハーネスを外され、飛び乗られた馬は驚き前脚を高く上げ嘶きを上げたが、それに驚いて人々が逃げまどい馬の前に道がひらけた。


振り落とされない様しっかりオズワルドにしがみつき後ろを見ると、荷馬車に乗った兵士達の方は既に馬首を左にめぐらせ方向転換をしていた。


あれなら多分大丈夫。

問題はグレタ。


どこ行った⁈

少し走ると人が大分減ってきたので一旦馬を止める。


「僕ちょっとグレタを探しに行く。2人先に行ってて」


そう言って馬から降りようとすると


「セラ殿に万が一があっては困ります。ここは俺が行きます。クラウス!セラ殿を頼んだ」


そう言ってオズワルドがヒラリと馬から飛び降りた。


「待って。それなら馬乗って行って」


馬から降りながら僕は言葉を続ける


「僕はクラウスの馬に乗せてもらうから。いいか?オズワルドくれぐれも気をつけて行って。グレタの事よろしく頼むよ」


「ハッ」


その後オズワルドが馬に乗って走るのを見届けてからクラウスの後ろに飛び乗る。


「クラウス、よろしく頼むよ」


遠回りしながら、人がいない道を選んで僕達は西門を目指す。


やっと辿り着いた時には待ち合わせに近い時間だった。


荷馬車組と乗馬組は既に到着していて人数も揃っている。


足りないのはあの4人…


さっきのハリーの言葉、ディランがエル・シッドと呼ばれ追いかけられているって一体何だ?


何がどうしてそんな事に…


元老院の仕業か?だとしたら回りくど過ぎて意味がわからない。


ハリーは新しい鬘を殿下に渡すと言っていた。


あの鬘、金髪であの変な髪型がエル・シッドだとしたら?


そんなバカな…


馬車は無いので、広場の近く民家の軒下でヘタリこんで考える。


マトモな考えが出てくる訳もなく、ひたすら時間が過ぎるのを待つだけだった。


これを聞いたのはいつだったか…


指揮官たるもの最悪の事態を常に想定しておけば何とかなる。

そんな言葉だったか


ディランを元老院に奪われる、4人共戻らない、もしくは戻れない、そして僕達も王都から出れない、が最悪だ。


ならば…


あ〜あ…こんな時エル・シッドが本当にいるのなら、僕達を助けて欲しいと心から思った。


待ち合わせの夕刻はとうに過ぎ太陽が沈みかけている。


日が沈んだら西門は閉門されるだろう。

緊急事態でも無い限り明日朝までは開く事はない。


そろそろタイムリミットだろうかと思っていた時、ボロボロになった箱をいくつか持ったグレタと、中身がほぼ出ている紙袋を持ったオズワルドが馬を引きながら大通りを正々堂々と歩いて来るのが目に入った。


僕が駆け出すとクラウスがピッタリくっついて走り出す。


多分僕より先に気づいていたのに、オズワルドに僕の事頼まれたから僕に付いていてくれたに違いない。


そうだよな、上官に頼まれたらそれを聞くのが仕事だし命令なら尚更だ。


クラウスもオズワルドもキチンとと仕事した。

ならば…


「2人共大丈夫か⁈」


2人に会った所で声をかける。


「…はい。大丈夫です」

「…お陰様で」


あれ?2人こんな険悪だったっけ?

まぁいい


「よし!2人が戻った。出発しよう」


歩きながらそう言うと、オズワルドが


「よろしいので?でん…バートンとハリーは」


この中で知らないのはクラウスだけだけど、一応ディランが紛れ込んでたのは秘密だからな。


「…うん」


皆が集まってる所まで行き大声で叫ぶ


「皆んな今から出発する。馬車一台無くしたので、荷馬車に僕とグレタ殿が乗る。

2人荷馬車から降りて、2人乗りで乗馬してくれ」


「え?マジっすか?バートンさんとハリー置いて?」


「えーハンナちゃんは?別れの挨拶もしてないし連絡先も聞いてないんすよ」


「ハンナは王宮を出た所に親戚が迎えに来てたからそっちに行った。

バートンもハリーも大丈夫!さぁ閉門まで時間がないぞ。急いで」


「ハッ」


慌ただしく走り回る兵士達。

きっと今日はもう出発しないと踏んでたんだろうな。


僕もさっきまで悩んでたし。

でももう迷わない。


僕は僕の仕事をする。


ディランは自分に何かあったら皆を連れハイドン村へ行けと言ったし、ハリーはディランを助けると言った。


大丈夫!

全員自分の仕事をするまでだ。


閉門近い時間のせいか、あまり並ばず検問を受ける。


来る時はないのに出る時は調べられる事は今までもそうだった。


いつもの事だ。

それでも順番が近づくと緊張感が増してくる


「次!」


王宮の兵士の掛け声に乗馬組が前に進み、荷馬車がその後に続く。


乗馬組の荷物はサラリと調べたが、荷馬車の番になると控えていた王宮兵士が走り寄ってきた。


馬車は沢山あったのにこの荷馬車だけ?


「中を改める。全員降りろ!」


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