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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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67話


「それで、そのエル・シッドが出たら何で兵士が追いかけるんだ?その貴族から金を奪った罪か何かかな?」


「それが、王宮の偉い人の秘密を知っちまたって噂だよ。で、血眼になって探してたんだけど、ある日プッツリ現れなくなっちまってねぇ。


みんな王族の誰かか、元老院に消されたって言ってたんだよ。今の若い子は知らないだろうけどね。

下町の英雄エル・シッド」


そう言って女将さんは別のテーブルを片付けに行ってしまった。ここにいる4人を見回す。


みんな似たりよったりの年齢だから誰も知らないか…


「あのう…」


グレタが恐る恐る声をあげた


「ん?何?何か知ってるの?」


「昨日のチンピラ殿下のモデル…もしかして今の名前の人だった…かも」


…昨日?

モデル?

ディランは昨日巨漢で街に繰り出したのではないのか?


「えっと、どうゆう意味?」


「殿下が巨漢は目立つから他の変装道具はないかと言ったので…」


「…別の変装がチンピラ風って事?」


「はい。昔物語で読んだ甘ったれ皇太子がチンピラ風の格好して下町に行き悪を倒したりする話だったのです。


大好きだったし丁度殿下も皇太子だったのでチンピラ風にしたのですが…その物語の主人公エル・シッドって名前でした」


丁度殿下も皇太子って…


グレタはやっぱりおかしな侍女…

あれ?


ディランは昨日街に出た後ハリーとオズワルドに会ったのか?


「オズワルド、昨日どこで殿下に会った?」


「宿の食堂です。時刻は多分7時は回ってました」


昨日僕と話した後グレタに衣装の準備をさせたとしても3時間ほどある。


ディランはオズワルド達に会う前にチンピラ風の格好で1人で出かけてた?


昨日までいなかったエル・シッドがいきなりこのタイミングで出てくるなんてあるのか?


しかも王宮の兵士まで追いかけて?


いや、でもディランは何も言ってなかったし、何か隠し事をしている風ではなかった。


難しい顔して悩んでいると客が1人店に飛び込んできて


「大将!女将さん!裏の通りで騒動が起きてるよ。念の為店閉めた方がいい」


「えぇ⁈何の騒ぎだい?」


「わからねぇんだけど、兵士がすげぇ勢いで走り回ってるよ」


客達はそれを聞き慌てて支払いをし、店を後にしてしまった。

僕達も早く出た方が良さそうだ。


いらない騒動に巻き込まれるなんてゴメンだし。


支払いを済ませ店を出ると、既に野次馬が集まってきていて人でビッチリだ。


他の皆んなと待ち合わせ場所にしていた所まで行きたいのに、人がごった返しで全く前に進めない。


何でこのタイミングで騒動が⁈

もしかしてコレも元老院の仕業かも知れない。


僕達を王都から出さない為の…


よし!こんな所でウダウダしている場合じゃない。

ディランとハリーを回収してとっとと王都から出よう。


僕達が回り道をしながら待ち合わせ場所に向かうと、既に兵士達はほぼ集まっている様に見えた。


「スマン。遅くなった。皆揃っているか?」


「バーナビー達の4人が来ればそろいます」


「そうか。この人混みだから中々進めないかもな。揃い次第ここは出る。準備を」


「ハッ!」


西門近くの方がまだ空いているはず。


とにかくここから出ない事にはディランとハリーを探すのも手間だ。


僕とグレタとクラウスで馬車の中で待っていると外から


「バーナビー達帰ってきました!」


ならここからはさっさと離れよう


「よし!全員揃ったな!目指すは西門の横の広場。一緒に行動しなくていい!必ず全員で王都を出るぞ」


「ハッ!」


馬車がゆっくり進み出す。いかんせん人が多くてスピードが出せないのがもどかしい。


でもそこは当初の予定通り。

と思う事にした。


本当は今すぐにでも2人を探しに行きたいけれど、ここで焦ってこの隊がバラバラになるともっと面倒だ。


誰一人欠ける事なく戻らなければ…


ノロノロと馬車が進み、まだ西門の脇にある広場まで距離があるな、という所でいきなり馬車の扉が開いた


!!


「誰だっ!ってハリー!!」


僕とグレタを後ろに庇い、前に出ていたオズワルドが言った。


「話は後だ!これをナディア様に!!」


完全に地声のハリーが叫ぶ。

渡された幾つもの紙袋と箱を受け取りオズワルドも叫ぶ


「いいからハリー!お前も乗ってとっとと扉を閉めろ!危ないだろ」


するとハリーは


「追われているのはエル・シッドと言う名の金髪の男だ」


「それは僕達も聞いたよ!」


僕も負けじと大声で言う。


ちなみに馬車はスピードこそ出ていないが走り続けていてかなりうるさい


「殿下からの伝言です。後から必ず追いつく。だから先に出発してくれ。との事です」


「ディランに会ったの⁈なら…」


「何故か殿下がエル・シッドと呼ばれ追いかけられていました!

俺はこの新たに手に入れた鬘を殿下にお届けし、必ず助けます。オズワルド、後は頼んだ」


そう言ってハリーは走る馬車からドレスのまま飛び降りた。


「ちょっ!!待って!馬車、馬車を停めろ!」


御者台にいるクラウスに叫ぶと馬車は急停止した。


ハリーの言った事は一体どうゆう事だ⁈


オズワルドと共に急いで馬車を飛び降り、ハリーを探しに前へ進むが人だかりで見つけられない。


そうこうしている内に周りにいる人達から


「邪魔なんだよ!何だ⁈こいつら貴族じゃねぇか⁈」


「何⁈本当か⁈まさかエル・シッドを捕まえに来たのか⁈」


ヤケに殺気立つ市民に鳥肌が立った。

これは一体何だ?

何故こんなにイラ立つ?


「おい!こいつらを前に進ませるな!」


うぉぉ


地鳴りの様に皆んなの声が地面を揺らした



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