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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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66話


マデリーン嬢とその侍女が居なくなってしまった為、女性1人になってしまったグレタは僕達の馬車に乗る事に元々なっていた。


体格良くしたディランがいるだけでも狭いのに、ハリーと情報交換するんだって言い張るから、4人で乗っていたりする。

狭い…


「兵士達王都の西に行ってるみたいっすよ」


ハリーが言った


「え?何かあったのか?」


「詳しくは…ただ何か出たって」


「何かって何さ?」


「言い寄られててそれどころじゃなかったんで」


「昨日王都の西にいた時特にそんな様子もなかった。今朝入れ違いで何かあったと考えるのが普通だが…」


ディランの言葉に不安がジワリと湧いてくる。


こんなタイミングだと罠ではないかと嫌でも考えてしまう。


ディランもハリーも同じ様に考えていたみたいで黙り込んでしまった。


何となくだけど、早く王都からは出た方が良い気がする。

王都の様子なんか見てる場合じゃない。


元々今日は王都には泊まる予定では無かったので好都合だ。

一気に駆け抜けようと思っていたら


「俺は一旦降りる。やはり街の様子を知りたい。ナディアの服も買いたいし」


「まぁ!ナディア様のお洋服を?ナディア様喜びますよ!」


「はぁ⁈何言っちゃってるの⁈ここは一刻も早く王都から出た方がいいって!」


「俺もちょっとでいいから情報集めたい」


「3人共バカなの⁈何かの罠かも知れないじゃん!」


「そうなんだが、このままずっと俺と同じ馬車と言う訳にはいかんだろ。

どのみち1人で馬で行くのだから早々にここで馬に乗り換えて後で落ち合う事にしよう」


うわー出たよ。

ディランは言い出したら聞きやしない。


そして横を見るとハリーも


「俺も俺も!この格好なら色々聞けそう」


嬉々とハリーが言うとディランも


「なら、ついでに遷都するかもよ、って噂流してくれないか?俺の方でもやってみるが」


「殿下!任して下さい」


はぁ〜〜…言い出したら聞かない奴が2人になっちゃったよ。


仕方ないので、次の馬車を停められるちょっとした広場まで行きそこで2人を降ろそうとした所、ハリーが


「殿下、いくら何でも軍服はマズイですって」


「ええ〜、あの肉衣装に軍服以外着る服なんて無いですよ!」


言いながらグレタはカバンを漁り出した。


「いくつか見繕いますが…殿下、ちょっと手直ししたいので」


着替えやら手直しやらで僕は馬車から降りて待つ事にした。


ディランとグレタを2人きりにするとおかしな噂になりそうだから、ハリーを残して。


すると中からかなりおかしな会話が聞こえてきた


「それでは殿下が溢れ出てしまいます!」


「チンピラ風はダメだ。あの衣装はロクな事にならない。他の鬘はないのか⁈別のにしてくれ」


「でも鬘は白髪混じりの黒髪と金髪のこれしかありません。殿下の赤い髪はそれだけで俺は殿下だと言ってる様なものです!」


「確かに赤毛ってうちの国じゃあんまり見かけないかもですよ。俺、殿下とアイラさんの他2人くらいしか知らないですもん。諦めて金髪にしたらどうですか?」


「ならば衣装を何とかしてくれ!」


「え〜チンピラ殿下素敵でしたのに」


「チンピラ殿下とかヤメテクレ」


やっぱり1番おかしなのはあの侍女、グレタに違いないと思った所で3人が馬車から降りてきた。


ディランは皮の靴、黒いズボンにチュニック、ベルト、中にはシャツを着ていてそこそこ良いのでは?


と思って鬘を見た瞬間愕然とした。


鬘一つで何を揉めているんだと思っていた自分を殴りたい。


何故鬘が衣装を凌駕して全てを台無しにするのか…


「セラ、どうだ?」


どうだって聞かれてこれ程言葉に詰まった事はない。


「う、うん。いいんじゃないかな」


そっとハリーを見ると目を逸らされた。


結局ディランはそのまま馬に跨り夕方に王都の西門で落ち合う事に、ハリーはこのまま歩いて行くと言う事で話はついた。


代わりにオズワルドが僕の護衛として同乗してくれる事になった。


問題は夕方までこの大人数でどうやって時間をつぶすか…

元老院の手前おおっぴらに街中をうろつくのも憚られる。


もしかしたら付けられているかもしれないし。


とりあえず昼食を何処かで取り、ゆっくり西門に向かう事にした。


全員が入れる食堂がなくて、いくつかの店に分散して入る事になったが、僕にピッタリ付いているオズワルドが自分も食事がてら情報を集めたいと言い出し、かなり庶民的な店で食事を取る事になってしまった。


僕一応偉い立場の人なのに…


結局僕とオズワルド、グレタに他に諜報員になりたてのクラウスとで店に入る。


ざわつく店内は昼食時を過ぎているのにそこそこ混み合っていて、僕達は大き目なテーブルに4人で座る事になった。


食事を摂っていると


「あんまり見かけない兵士さんだね。新人さんかい?」


店の女将さんらしき女性にクラウスが話しかけられた。


「いえ、自分は入隊3年目です」


あぁ、生真面目だなぁ。

もうちょっと会話広げたらいいのに…


と思っていたら横にいたオズワルドが


「女将さん、この店繁盛してるね。兵士も良く来るの?」


「そうだよ。見回り兵士御用達なんだよ。あんたら違うのかい?」


「俺達はこの方の護衛」


オズワルドが僕に話を振ってきたので


「どうも。この店の食事はどれも美味しいですね。所で今日は他の兵士いないみたいだけど、何かあったのかな?」


「まぁ、ありがとうございます。あのね…出たらしいのよ」


声を潜めて女将さんが言う


「何が?」


僕もつられて小声で聞くと


「エル・シッド」


誰ソレ…

僕が眉を顰めているのを見て


「あれ、アンタ偉い人なのに知らないのかい?大分前の話なんだけど、いたんだよ。正義の味方が」


その後うっとりした女将さんが説明してくれた話によると、以前どこからともなく現れて弱い者イジメをする奴らをやっつけたり、貴族から奪ったお金を貧しい人々に分け与えたりする人物がいたそうな。


眉唾だな…そうゆう話って大抵ソイツが裏で悪い事してお金もガッポリ稼いでたりしそうだけど。



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