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流されて帝国  作者: ギョラニスト
60/205

60話


「では我々も戻りましょう。そろそろ室内も整えられたと思いますので」


「あの、ラッサ大尉。私達2人で戻れますわ。ラッサ大尉も少し休憩された方が…」


「何を仰るのです。これで戻ったら魔力有り余ってるんだろ?とか言われてリシャール殿の様に強制連行ですよ。


なので送らせて下さい。こうしている間も魔力が徐々にではありますが戻るので」


そうゆう事ならばとお言葉に甘え送ってもらう事にした。


家に到着し中に入ると


「まぁ!」


「へぇ」


私とアイラさんは感嘆の声を上げた。


奥の方に長方形のテーブルが置かれ、ベンチ式の椅子が添えられている。


手前には暖炉、その前にソファがありまだまだ寂しいけれど家らしくなっている。


「おかえりなさい」


元気の良いヒューズ君の声に


「ただいま」


家自体シャナルや王宮で与えられた部屋と同じくらいの広さだけど、こぢんまりとし可愛いらしさすら感じる。


「大急ぎで造った家ですので、小さく狭くて申し訳ない。仮住まいとなりますので、落ち着いたら改めて新しくナディア様の家を…」


「いいえ!充分ですわ。とても可愛いらしいくて気に入りました」


「え?いや、しかし」


「壁に飾り付けをし、ラグ等敷いたらもっと素敵になるわ」


ラッサ大尉は苦笑いをし


「ナディア様がそう仰るなら。王宮ができるまでお好きに飾り付けて下さい」


「ありがとう。ラッサ大尉」


「いいえ、どういたしまして。食事はこちらにお運びしますので…」


その後日常生活の説明をしラッサ大尉は帰って行った。

それはもう名残惜しそうに。


余程堀造りが嫌なのね…


「ナディア様のお部屋はこちらになります」


エアリーに案内され2階に上がり扉を開けるとベッドに小さいテーブルに椅子。


最低限の物しか置いていないけれど、日当たりも良く窓から山の稜線が遠くに見える


「とても素敵な眺めね」


「ガラスが手に入り次第取り付ける予定になっております。この村冬は寒さが厳しいらしいので急がせてみますが、この冬は無理かも知れません」


「仕方ないわよ。贅沢言っていられないもの」


「ベッドカバー等は裁縫が得意なグレタにお願いしようかと。私あまり裁縫は得意でなくて…」


「構わないわ。色々一から作っていくのはワクワクするのよ」


「ふふふ。ナディア様らしいです」


「そう?」


「ええ」


2人で一階に戻りあちこち見てまわる。


グレタが戻って来るまで当分の間、女性4人での生活になるけれど特に心配はしていない。


護衛2人は凄く強そうだし、エアリーは言わずもがな、頼りまくりな毎日だし。


後はグレタが帰ってきた時も心地よく過ごせるように。


「ナディアちゃん凄く楽しそうね」


「はい。この様な生活をした事ないので」


一旦休憩しましょうと、今は一階のテーブルで4人でお茶を飲んでいる。


エランさんとヒューズ君は昼食を取りに行ってくれた


「ナディア室内なのに帽子脱がないのか?」


アイラさんに聞かれ


「はい。被っていると落ち着くと言うか…」


貴重品が縫い付けてあるとは言えない。


「これからの季節防寒にもなりそうだし」


言い繕ってみる。

ドレナバルに来てから嘘をつく事が凄く増えた気がするわ。


「まぁナディアちゃんらしいわね」


コニーさんが手のひらを差し出した


「コニーさん?何か?」


「帽子を見せて?」


「な、何故ですの?」


コニーさんはニッコリ笑って


「変だもの。ナディアちゃんキチンとしてるのに、室内で帽子脱がないなんて何か隠してるとしか思えないわ」


「ぐっ!」


どうしましょう!

何か良い言い訳は…


「ナディア様。隠さないで下さい!シャナルからの帰って来いと言うお手紙ではないですか?」


えっ⁈


エアリーが目に涙を浮かべ言う


「ち、違うわ!」


何と言えば良い?

殿下は特に誰にも言うなとは言って無かったわよね?


無言で顎紐を解き裏側を見せる


「これは…一体」


エアリーが言ったので縫い付けてある小袋を解き中身を出す。


シャラララ、コロンコロン…


「「これって…」」


「ネックレスはシャナルを出る時にシャナルの陛下から餞別として頂いた物です。

指輪はテオドール村を出る時にディラン殿下から預かりました」


室内はシンと静まり返り誰も口を開こうとしない。


もう仕舞ってもいいのかしら?

ソロリと小袋の口を開けネックレスと指輪に手を伸ばすと


「ナディアちゃん、ちょっと聞いてもいいかしら?」


コニーさんが話出し、出した手がビクッとなってしまった


「は、はい。何でしょう?」


「まず一つ目、このネックレスの中央の宝石はサファイアかしら?」


「えっと、多分違うかと。この大きさでサファイアだとしたら餞別に貰って良い物ではないかなぁと」


「そう…かしら…ねぇ」


「本物に見えるけどなぁ」


「アイラさん?」


「ちょっと失礼」


アイラさんはそう言ってハンカチで鎖の部分を持ち日に翳して見ている。


そして


「あ〜アタシ宝石商じゃないから絶対じゃないけど、多分本物のサファイアだよ」


ギョっとした。

私の手のひらの半分はありそうなこの青い石がサファイア⁈


「ええぇ⁈ナディア様、この様な粗雑な扱いはダメではないですか?」


「本当よナディアちゃん。他の貴金属と一緒に小袋なんて問題外よ」


「す、スミマセン。本物だと思わなくて…」


思わぬところでお叱りを受けてしまった。


「それにね、ナディアちゃん」


コニーさん、まだ何か?


「この指輪…殿下からの預かり物って言っていたけれど、まさか左手の人差し指のじゃないわよね?」


どうだったかしら?

殿下はあの時自分の人差し指から指輪を引き抜き、そのまま右手で私に渡したわよね?


「えっと…多分人差し指です。左手の」


ガタガタッと3人が椅子から立ち上がった


「ナッ、ナディア様…」


「…マジかぁ」


「何て事…」


3人して非常に動揺している。左手の人差し指の指輪に何か意味があるのかしら?


殿下何も言って無かったけれど…



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