41話
エアリーが物凄く小さな小さな声で
「今日はコニーさんが一緒です。出来ればアイラさんの時の方がよろしいかと」
どうゆう事なのかしら?と聞こうとして
「まぁ。私ではダメとはどうゆう事かしら?」
気付けばコニーさんが真後ろにいて笑顔で尋ねてきた
「べ、別にコニー様がダメと言う事ではなく、日を改めた方がよろしいかと思ったのです」
珍しくエアリーが動揺している。
エアリーもグレタも何か知っているわね?
絶対今日行きますわ
「日を改めてまた雨降りになったら大変でしょう。やはり今日行きましょう」
そう。今日は曇りで丸2日降った雨のせいで、舗装されていない道は水溜りと泥だらけになっている。
最初はもしやまた底なし沼では?と警戒したけれど、村の中には無いそうで安心した。
教会の周りだけは相変わらずバタバタしていたけれど、私達を認めるとシンと静まりかえってしまう。
だから一体何ですの⁈
扉を開け殿下達が固まって話し合いをしている場所へ向かう
「だから僕じゃ無理だって!ディランが聞きなよ」
「俺は嫌だ。アレとは話し合いにすらならない」
セラさんの嘆きと殿下の投げやりな態度で膠着状態の中声を掛けてみる
「みなさんご機嫌よう。何か揉め事でも?」
最初ギョっとした顔で私を見ていたけれどちょっと間をおいて
「そうだ!ナディア様にお願いしてみるのはどう?」
セラさんが提案する。
何を?
「…そうだな。ナディア頼む」
だから一体何を⁈
「いや今、と言うよりか2日前から話を聞きたい方がおられるのですが、中々話し合いにならなくて…」
方?偉い人かしら?
「いえ、一体どなたに何を聞けばよろしいのか」
「あ、そうですよね。まずどうやって誰と来たか、あとは、あとは、」
セラさんがワタワタしていたら周りがどよめき始めた。
振り返ると
「みなさんご機嫌様」
「何だ、マデリーン様ではないですか」
「ちょっと!何だとは失礼ではなくて⁈」
あら、最近ヒューズ君と話す機会が増えたからうっかり口から出てしまったわ。
突然の激怒に面倒な予感しかしない。
マデリーン様の後ろには侍女やら護衛がゾロゾロといらっしゃる。
あぁ私の幸福な日がたった2日で終わってしまうなんて。
「失礼致しました。ご無沙汰して…ないですね。何日かぶりでしたわ。マデリーン様、このゴタついている中どうやってこちらにお越しに?」
「馬車に決まっていますでしょう。わざわざディラン殿下の為に朗報をお持ちしましたのよ」
そうゆう意味ではなかったけれど、朗報?チラリと殿下を見ると眉間にシワを寄せ睨んでいた。
「そうなのですね。それはありがとうございます。こちらにはいつお越しに?」
「あなたに礼を言われる筋合いはなくってよ。まぁほんの2日前ですけれど」
話し合いをしたいのはマデリーン様でしたのね。
そして村人が私を見て可哀想等と言ってきたのはマデリーン様が原因かしら?
あら?ちょっと待って。
2日前と言えば不審者が侵入した日ではないかしら?
でもとりあえず目の前のマデリーン様に挨拶しないと
「まぁご挨拶もしておらず、申し訳ありませんでしたわ。それで、今はどちらにお泊まりに?」
まさか天幕で、なんて事はないわよね。
マデリーン様は生粋のお嬢様だ。私もですけれど。
「こちらの教会内の一室をお借りしてますの。少々狭いですけど」
この教会に空いている部屋なんてあったかしら?
あ、でも村長と会談した部屋なら空けれるのかもしれない。
等と考えていたら
「マデリーン様は殿下の側を離れたくないと、懺悔室で寝泊まりされています。とても健気でお労しいですわ」
⁈
あの部屋で寝泊まり⁈
横になるスペースもないのに?
マデリーン様の侍女の言葉に絶句していると
「まぁ少〜しばかり改造はしましたの。お陰で快適ですわ」
ほほほほとマデリーン様は高笑いをした後
「私、魔力増強に成功しましたの。これでもうディラン殿下のお側にずっといられますわ。ナディア様、短い間でしたけどご苦労様でした」
え?私お役御免なの?
「馬鹿を申すな。マデリーン嬢の魔力が増強しようがしまいがナディアとの婚約は解消しない」
あきれた顔で殿下が言うと
「馬鹿など申しておりませんわ。お持ちした書状に書いてありましたでしょう。私と婚約し直しましたら大手を振って王宮に戻れますのよ?」
え?乗っ取られていたのでは?
「父は権力を駆使して元老院を説き伏せて下さったのですわ!」
権力…チラリと殿下を見ると死んだ魚の目をしていた。
確か王妃教育で公爵家は全部で四家だった筈。その内王宮派が一家、元老院派が一家、中立派がニ家でしたわよね。
そしてエルラート公爵は中立派だったのでは?でもまさかお父上は中立派ですよね?とは聞けない
「そうなのですね。所でどなたといらっしゃったのですか?」
「何故私の話の流れを変えるのです⁈他にお話する事や質問なさりたい事が沢山ありますでしょう!」
お父上や権力の話は特にはないです。と言ったら更に怒りそう。
でも先程の殿下やセラさんの話ではマデリーン様に他にも何か聞きたそうでしたけど…
「勿論沢山ございますが沢山ありすぎて頭の中で整理しているのです。でもマデリーン様ともっともっとお話ししたくて…世間話をしながら頭の中を整理しようと思いまして…」
ちょっと苦しいかしら?と思っていたら
「ま、まぁ、そうゆう事でしたら…」
マデリーン様の耳が赤くなっている。照れてる?ちょっと可愛いらしいかも?そして私は話し合いの天才かも?
「ありがとうございます。それでどなたとここにおいでに?」
「ブラッド大尉の中隊に同行していただいたわ。ブラッド大尉ご存知かしら?」
「いえ、全く…」
困ったわ。
一体マデリーン様から他にどんな話を聞き出せば良いのか…
.
「ブラッド大尉は…」
マデリーン様が話始めたので顔を上げるとマデリーン様の後ろに侍女、更にその後ろに護衛騎士、そして更に後ろからセラさんが
『魔法使いがいたか聞いて』
と、紙に書いて掲げている
「まぁそうなのですか」
ブラッド大尉の話は全然耳に入らなかったけれど
「そのブラッド大尉の中隊に魔法使い様などいらしたのですか?」
「もちろんですとも。旅には欠かせませんから」
『誰?魔法使いの名前聞いて』
名前を聞く?
もうセラさんご自分で聞いてくださればいいのに