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流されて帝国  作者: ギョラニスト
39/205

38話


そんな事あるのかしら?


「なぜ、、何で兵士の貸し出し要請があったのか知ってる?」


すると5人顔を見合わせて


「さぁ?俺ら領主様に手伝いに行ってくれないかって頼まれただけで、理由は何も言ってなかったな。王宮でも敵を討に行きますってだけで」


…酷い。


 先程の殿下の話からすると、この人達に自分の村を滅ぼす為の手伝いをさせようとしたと言う事?


2週間も前に?

何も知らせずに、何も知らずに…


 もし殿下が塀を作っていなかったら、他の兵士と一緒に殿下を生捕りにこの村に攻め込ませる?

 そんな事になったら結果この村も村人も無傷ではいられないのに?


「…敵って誰?」


「そう言えば言ってなかったな」


「とりあえず敵を討に行くぞー。的な感じ?」


「俺らみたいな1番下っ端は何の情報もなかったしな」


「ただ一部の兵士は殿下をお助けするぞ!って言ったり、別の兵士は諸悪の根源、ディラン殿下を捕まえるぞって言ってたな。どっちなんだよって感じ」


ぷち


HA H A H Aって笑っているけれど、笑い事ではない。


何故確認すらしないのよ。


「例えばその王宮の大隊が目指していた場所がこの村だと…テオドール村だと知っていたらどうなさるおつもりでしたか?」


「な、何だよ急に。話し方も変だぞ」


「例えばその敵がこの村にいたとして、それでも王宮や領主に行けと言われれば、確認もせず行くのですか?」


「ジュード一体どうしたんだ?」


「あなた達は…」


「ナディアそこまでだ。それ以上は俺達が踏み込んでいい話じゃない」


殿下!


「誰だ⁈」


 殿下に向かって駆け出そうとして、足がもつれた。

筋肉痛な上に泥塗れな事を忘れていたわ。


 下半身が更に重い。

アッシャーさんが咄嗟に私を支えようとした手を私は払い除けそのまま殿下のいる方へ倒れ込んだ。


「また随分酷いナリだな」


難なく受け止めて放った一言

殿下にだけは言われたくありません。


「ジュード…そいつ一体誰だよ」


その場が急に険悪になる。


「あー、君達の話は聞かせてもらったよ。途中からだけど。こっちに入れる所があるからとりあえず中に入ってから話をしよう」


ラッサ大尉が後ろから出てきて敵じゃないですよ〜と和やかに話かけるも


「いや、行かない。お前ら誰だ?まさかこの村どうこうしようってんじゃ…グッ!」


次々と倒れた人を見てチラッと殿下をみると


「今こいつらとここで話をしている時間はない」


やっぱり

殿下面倒くさいとすぐ魔力ダダ漏らして終わらせようとする


「で、殿下、立て続けに2度はキツいですって…」


膝をついたラッサ大尉が懐から小さなビンを取り出し一気に煽った。


「あ〜やっぱり冷めてても効きますね」


うん?


「おい、ラッサそれは…」


「先程のナディア様のお茶の残りをビンに詰めてみたのですよ」


殿下が気遣わし気に私を見た。

へぇ…なるほどね。そうゆう事ですか…


その後私が激怒したのは言うまでもない




その後アッシャーさん達は後ろ手に縛られ、後から来た兵士に連れて行かれた。


殿下、ラッサ大尉、私が残った所で


「ナディア、車椅子はどうした?」


私は底なし沼を指差し


「多分あそこに沈んでいます」


「底なし沼に嵌ったのか⁈」


「はい。間一髪の所アッシャーさん達に助けていただきました」


「全く…」


そう言って私に指先を向け泥塗れの下半身を綺麗にし、乾かしてくれた。


本当に便利ね。


「よし!行くぞ」


そう言って私を担ごうとしたので


「担がないで下さい!」


「まだ怒っているのか?足を挫いたのなら歩くのも難儀だろ」


足は筋肉痛だとは今更言えない。


「違います。担がれたらお腹が苦しいのです」


もう大丈夫ですからとヨチヨチ歩き始める。


「しかし…」


あぁ、相変わらず靴が重い。

けれど担がれるよりはマシだわ…と思っていたらヒョイと持ち上げられた。


父親が子供を片手に抱き上げる様に。


「これならば苦しくはないか?」


苦しくはないけれど、ここは普通お姫様抱っこなるものをするのではないの?


「はい。大丈夫です」


まぁ殿下ですものね。

そんな気遣いはないのでしょう。


 塀が途切れている所まで来ると、セラさんが相変わらずヒステリー状態で怒鳴っていた。


「とりあえず村人と救護所にいる人達を安全な所に移動させて!あっ!ディラン!」


セラさんが私達を認めて声をかけてきたと同時に


「「ナディア様!!」」


エアリーとグレタが突進してきた。


「ウゴッ」


激突された殿下がお腹に一撃され奇声を発していたけれど、無視してその腕から抜け出る。


「エアリー!グレタ!」


ヨロヨロしながら2人に抱きつく


「心配しました!」

「申し訳ございません!」


それぞれ半泣きになりながら言ってくる。


「私の方こそ勝手にいなくなってしまってごめんなさいね」


私も半泣きになって謝ったら


「「全くです!さ、懺悔室に参りましょう」」


え?そこはそんな事ないです。とかではないの?


「ならば俺が運ぼう。どちらにせよ教会には行くからな。少し待っていてくれ」


殿下まで!

何故か懺悔室行きが決定している


殿下はリシャールさんやセラさん、ラッサ大尉と少し話をして再び塀を築いていた。


ラッサ大尉が寄ってきて


「今度の塀は穴を開けられたらすぐに判る様に、結界も張り巡らしているみたいですよ」


ツーン。知りません。

ラッサ大尉の話なんて聞きません。

私はまだ怒っているのです。


「ナディア様。そうお怒りにならないで下さい。あのお茶は素晴らしい戦力になります!」


まだ言うのね。

ただのお茶ですってば!


 暫くして戻った殿下は再び私を抱き上げ、その場に兵士を10名程残し教会へ向かった。


 教会では丁度村長とアッシャーさん始め例の5人が話をしていた。


殿下は無言でその場を通り過ぎる。

そうね。

私達が口を出す事ではない。


そう思っていたら


「殿下!ナディア様!」


村長が話かけてきた


「こっ、この度は倅が大変な失礼を!!」


何かしら?

この最初の頃との違いは。平身低頭とは正にこの事。


殿下の事を本物だと認めたのかしら?


「倅がナディア様を小僧呼ばわりしたとか…」


 あぁその事でしたの。

その辺はあまり怒っていない。

途中から小僧っぽく振る舞ったし。それより


「いえ、私も名前など嘘をもうしましたし、それより村長さん、確か私のお茶を毒物呼ばわり…」


「つきましてはお詫びに村の施設全てお使い下さい!」


「許します!」


嬉しい!これでこの村の温泉に入れる!

横でラッサ大尉が早っ!って言っているけれど、無視無視。


その後懺悔室に連れて行かれた。


けれど今回はエアリーもグレタも色々と反省点があったので、と言って『今後絶対に1人でどこかに行ったりしません』を10回復唱させられるだけで終わった。



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