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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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37話


泥濘みに車輪がはまった。


 雨も降っていなかったのに泥濘みなんて…

早く棺桶馬車に戻って暖かいベッドに入りたい。


 いえ、その前に温泉に入って何もかも洗い流してまったりしたい。

両手足を伸ばし広い湯船に浸かりたい。


 仕方ないので車椅子を降りて泥濘みから車椅子を取り戻そうとしていると、反対側の車輪がズブズブと泥濘みに沈んでいく。


まって!

私の右足も沈み始めた⁈


これがかの有名な底なし沼では?

何故村の中に底なし沼が⁈


そこにランタンらしき光がチラチラと見えた


「たーすーけーてー」


大きな声で叫んだつもりだけれど、いかんせん足を踏ん張る事が出来ないので声は届いているのかどうか…


「誰だ⁈そこにいるのは⁈」


誰だって良いではないの!


そんな事よりこれ以上嵌ってしまったら抜けないのでは?


 右足はもう太ももまで、左足だって膝まで嵌っていてバランスをとるのも辛い。


倒れる!!

そう思った瞬間誰かが私の手を握った。


「大丈夫か⁈今引っ張ってやるから。おいそっちの手も出せ!お前らも手伝え」


せーの!と言いながら両手を引っ張られる。

下半身が重い!


少しず泥濘みから抜けていくのがわかるけれど、手も肩も痛い!


ズボッと抜けその場にいた全員がゼイゼイと肩で息をしている。


良かった。

今度こそもうダメかと思った


「あ、ありがとうございました」


顔を上げお礼を言う。

ちゃんと目を見て言わないと。


「あぁ。無事で良かった。この辺の底なし沼物凄く飲み込みが早いんだ。後ちょっと遅れたらアウトだったよ」


ですから何故村の中に底なし沼が…


 振り返り自分が嵌った沼を見ると車椅子はもう跡形も無く、今言われた事が本当だったのだと知りゾッとした。


 何故村の中に底なし沼が?

と聞こうとして今度はギョッとした。


 兵士の服を着ている。


それも今まで見たドレナバルともギョロ目引きいるフォリッチとも違う隊服。


一体どこの兵士⁈


「あれ?それドレナバルの隊服じゃねーか」


大変!一体何と答えれば…


「何?お前兵士なの?」


相手は全部で5人もいる。

筋肉痛でなくても逃げられない。


「あ、あの…」


「さては…」


こ、ここは村の中ではないの⁈


「誰かに憧れて兵士ごっこしている小僧だろ?」



兵士ごっこ…小僧…


「あの、ソウデス。憧れて」


「やっぱりな!兵士っぽくねーもんな」


「え?何?兵士になりたいの?お前名前何て言うんだ?」


どうしましょう。

勘違いなさっている。


 このままナディアだと本名を名乗らず適当な名前を名乗った方がが良い気がする。


名前名前…男性の名前


「ジュ、ジュード」


あぁ村長さんごめんなさい。勝手にお名前を拝借してしまった


「お、いい名前だな。俺の親父と一緒だ。俺はアッシャー。このグループのリーダーだ」


この5人の中でリーダー格と思われる男性が言った。


「は、はは、そうなんだ。お父君と」


「お父君ってガラじゃねーな。若い女の子大好きで口は悪いけど、村を守るって意識は人一倍あるし。俺も好きにやらせてもらえるし、まぁいい親父だな」


村を…守る?


「俺の親父このテオドール村の村長なんだ。いつのまにかこんな馬鹿でかい塀ができてはいるが、この中は間違いなく俺らの生まれ育った村がある」


ここは塀の外なの⁈

いつ出てしまったの⁈


でも村長さんの息子さんならば味方よね。

やっと息をほぅっと吐けた。


「あ、あの…」


「まぁ今は領主のアルバナール伯爵家の私兵として春から働いてる。しかも2週間前王宮から私兵の貸出要請があったとかで仮だけど王宮のドレナバルの兵士なんだ」



「ん?何だ?」


「なんでもないデス」


 凄く凄く誇らしげに言うけど、あの大隊の一員で、先程の話し合いの中で出た、怪し気な伯爵の私兵…


私は今底なし沼並みのピンチな気がする


「そお?それより俺の任されているグループまだこれしか人数いないんだ。良かったら入れてやろう!」


「えっ⁈い、いえっ、そのっ」


これは本格的によろしくない。

どう言って切り抜けましょう


「いいからいいから。遠慮なんかするなよ。将来有望じゃねーか。俺達に憧れるとか」


そうたそうだ!俺達と一緒に敵を討って討って討ちまくろうぜ!とか言っている。


 多分私はその敵の親玉の婚約者なのに。

そして決して憧れていない。


だけど、あぁどうしたら良いのか


「所でジュードお前どこの村の子だ?」


「え?」


ハッ。

しまったわ。

ジュードは私の事ではないの


「こ、このテオドール村…です」


「こんなヤツいたか?」


「見かけた事ねぇな」


ヒィィ。怪しまれている


「あ、あのこの春引っ越してきたのです」


「じゃあ俺達知らないか!」


ははははっ!って笑っていらっしゃるけれど、もう嘘吐きまくっていて心臓が苦しい。


どうにかして話を変えたい


「あのっ、何故ここに?」


「な〜んか言葉遣い固いよな。ジュードって」


言葉遣い⁈


「そ、そうかな?」


「うん固い。もっと親しげなのがいいな。同じ村民だし」


親しげな言葉遣い、親しげな言葉遣い…


「そっ、そうだな!」


作り笑いも付けて言ってみる


「そうそう!俺らに遠慮すんなよ」


多分良い人なのでしょう。

敵なのに…本当に敵なのかしら?事情を知ったら…


ダメだわ。迂闊に私が話すのは良くない。

けれども…


「あぁそうだ!俺達がなんでここにいるか?だったよな」


「う、うん。そう」


「さっき王宮から貸し出し要請があったって言ったろ?行ってみたらすんげームカつくヤツがいてぶん殴って出てきちまったんだよ」


「そうそう。俺らの事すげー田舎者扱いしてさ、感じ悪いのが、1人2人じゃねぇでやんの」


「あいつら本当腹立つよな」


「で、領主様の所に帰る途中、どうせだから一回村に帰って一泊してから帰ろうと思ってたんだけど、いつの間こんな馬鹿でかい塀作ってんだよな。行けども行けども出入り口ねぇし」


暫く皆んな愚痴を言っているけれど、これはラッサ大尉やアイラさんが言っていた、いくつもの小競り合いと言うものね。


「それは出発して暫く経ってから?」


「うんにゃ。王宮出てすぐの話さ」


では、その後の事は何も知らない?



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