表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流されて帝国  作者: ギョラニスト
32/205

31話


「陛下が、父上が恋愛結婚なのは知っているか?」


黙って頷く。

王妃教育の時に王妃様の侍女が言っていた。


「母上は伯爵令嬢ではあったが、あまり旨味のないと言うか実家の伯爵家はあまり裕福な家ではなかった。当時周りは大反対だったらしい。


 前陛下は元老院を抑え込みたかったから、もっと有力貴族か他国の姫君にしろと。


 父上は悩みはしたが、譲る気も無く皇太子の座を弟に明け渡す事で婚姻まで漕ぎ着けた」


凄い。


本当に大恋愛だったのね。

皇位継承権まで手放すなんて。


「父上の弟、叔父上はやり手だったし野心家でもあった。

元老院とは全く剃りが合わず、そうこうしている内に前陛下が崩御された。


病気と聞いているが怪しいもんだな」


では一度弟が皇帝陛下の座についたのね


「崩御後に叔父上の戴冠式があったのだが、その前夜王宮に賊が入ってな」


…まさか


「襲われてそのままお亡くなりになった。

子供でもいればここまで拗れる事もなかったのだか、再び継承権が父上に舞い込んできた。

他に男児はいなかったし」


とんでもない歴史を聞かされた気がする。


「以前契約魔法の話をした時に俺に聞いたな?

 それはもしかしてディラン殿下の魔力が強すぎるから作られたと言うかできた魔法なのですか?と」


 聞いた気がする…


「一応そうだとは言ったが、原型があってな。

父上が戴冠式の時書類にサインした時それは発動したんだ。


今よりもっと荒削りで単純な魔法ではあったが、誰も気付く事は出来なかったらしい」


「因みにどの様な契約ですの?」


「簡単なものだ。元老院に逆らうなと」


「…逆らったら?」


「母上と姉の命が無くなると言われたらしい。確かめる術もなかったしな」


!!


「父上には婚姻によって味方もかなり数を減らしてしまい、なす術もなく傀儡に甘んじるしかなかった」


…元老院の方々ってもっと水面下でもう少し穏やかな方法でと言うイメージだったけれど、かなり強引と言うかやり口が汚いと言うか


「それではお姉様は?」


「5年程前だったか、他国へ嫁いで行った」


「他国なら大丈夫なのですか?」


「そう。他国なら大丈夫なんだか、俺が10才位の時に解除した。10年程前だが」


えっ?殿下20才だったの⁈


「…何だ。その顔は…」


「い、いいえ。そっ、その…解除できるモノなのですか?そして何故最近まで傀儡に?」


危なかった。

老けて見えるとか言いそうになってしまった


「原型だったからな。婚約に関するヤツは今の俺では解除できない」


今の、と言う事はいずれ解除なさるのね


「最近まで傀儡だったのはずっとこの時を待っていたんだろう。そう言っていたし」


「待っていた?」


「父上はずっと待っていたんだ。元老院を叩き潰すのを。

完全には無理かもしれないし、いつになるかわからないからそれまで解除した事を黙っておく様言われていた。

まさかこのタイミングだとは思っていなかったが」


 ふと気付くと音が全くしなくなっていた。


相変わらず周りに人は沢山いて皆んな動いているのに。

音消しの魔法かしら?


「あ、ここだけの話の時はこうやって周りに声が聞こえない様にする魔法があるんだよ」


私がキョロキョロしていたらリシャールさんがこそっと教えてくれた。


相変わらず魔法って便利なのね


「でもそれでしたら逃げなくても良かったのではないですか?」


「あの王宮は元老院が改築と増築を重ねたものだ。

いつ叔父上の様になってもおかしくない」


王宮(自宅)にいても心休まらないなんて…


「逃げたら契約魔法が発動すると踏んでいた元老院は何故陛下と妃殿下が生きていると判ったのでしょうか?」


「魔法をかけた者はわかるだろうねぇ。魔法ってそうゆうモノだし」


とリシャールさんが言った


「解除した時はわからないのですか?」


「あの時ディランてば突然『母上と姉上にくっていてるまぁるい模様は何?何か契約とか書いてあるヤツ』って言ったんだよ」


殿下の子供の頃なんてあったのね。

全く想像出来ないわ。


「僕が『ディラン殿下、これは契約魔法と言うものです』って言ったら陛下を始めセルゲイさんや妃殿下から無茶苦茶怒られて大変だったよ」


「当たり前だろ。何で知ってて言わなかったんだよ」


「?だれにも聞かれなかったから。事情も聞かされてなかったし」


リシャールさんて凄い。


 きっと自分だけ見えていたとこれっぽっちも思ってもいなさそう


「それでディランの魔法の勉強の為、その場で解除してみようって話になったら、再び陛下とセルゲイさんからお前がやれーって。ひどくない?」


「結局俺にやらせたじゃないか」


「だって契約魔法ってあんまり無いから絶対勉強になると思ったし、僕よりディランの方が魔力強いし」


「それでディラン殿下が解除を?」


私が聞くと


「あぁ。横にリシャールに付いていてもらい、一つ一つ模様を剥がすようにやったな。一気にやるとバレるからとか言って」


「ディラン優秀だから僕横で見てるだけでよかったんだよ。凄いよね」


「お陰で姉上に6時間、母上に5時間ぶっ通しでやってその後寝込んだがな」


「ディラン凄いんだよ。一晩寝たら元気になってるんだ。僕だったら丸3日寝込む自信があったよ!」


誇らし気に言っているけれど、10才の子供にひどいのでは?


殿下も青筋立てて睨んでいるし。


根に持っていらっしゃる


「それでディラン。これからどうするの?」


セラさんが尋ねる


「とりあえずここを本拠地にする」


「まぁそうなるよね。村長の説得頼んだよ」


「俺が?」


「うん。僕無理。怒りまくりで全然話にならない」


ウンザリした顔のセラさんに同情を覚える。

話聞いてもらえないってツライわよね


「ならば今夜か明日朝にでも話してみよう」


「わかった。村長に聞いてみるよ」


そうか殿下は心を読める。

話をしながら村長の落とし所を探すのね


「いくら位渡せばいいだろうか…」


お金⁈金に物言わせるの⁈


「ディラン駄目だよ。ナディア様本気で目ひん剥いてる」


「ふむ。シャナルでは冗談は通じないのだな」


馬鹿にしないで頂きたい!


シャナルにも冗談はあるけれど、殿下の今のは冗談にもシャレにもならないのです!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ