表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流されて帝国  作者: ギョラニスト
31/205

30話

 

 殿下の行った方へアイラさんは車椅子を進めた。


 私達が行っても何の役にも立たないのだから行く必要はない気もするけれど、3人とも止める気配はない。


 教会中央付近は更に人が密集していてその中に車椅子を押し進める。


「やぁディラン。ただいま」


リシャールさんの声だ。姿はちょっと見えないけれど。


「リシャール、首尾はどうだった?」


「あぁ、殿下隊18名、ラッサ隊11名連れての帰還だよ。捕虜扱いだった」


 リシャールさんがそう言った瞬間辺りは水を打った様に静まり返った。


捕虜って…もう仲間ではない、と言う意味よね?


「…そうか。ご苦労だった。ところでフレデリックの姿が見えないが」


「あ、あぁ。その事なんだか…」


ちょっと待って。

何?この間は。


リシャールさんは何を言おうとしているの?


「…ってしまったんだ…」


何?

聞こえない


「なん…だと?」


「だから!取られたんだ。焼き釜馬車を!フレデリックとその仲間達は焼き釜馬車を追って南に向かってる」


うん⁈

フレデリックさん無事なの?


「焼き釜馬車を取られただと?」


「そう。魔物が暴れている間土壁作って中で待機している時に…」




「そんな感じで後から来た大隊はスパイもごちゃ混ぜのおかしな大隊らしいんだよ。

 だからディランは塀を作って村の中に入れない様にしたんだ」


リシャールが大まかな説明をすると


「おかしいと思ったんだよなぁ。セラ副隊長は絶対村に入れるなって言うし、ちょっと村には入れないので、入り口辺りで待っていて下さいってお願いしたのにいきなり殴りかかってくるし」


殿下隊の1人が言うと


「俺なんか炎魔法いきなり飛んできたぜ。

同じ隊服着ているから、間違えたのかと思いきや連発してくるし」


「同じ隊服着た敵とか最悪だよ。

やり返すのも良いのか悪いのか分からなかったから、致命傷負わせない程度の攻撃とか難しいし」


殿下隊から一気に不満が噴き出す。


「ラッサ隊なんかいきなりフォリッチ本体に襲われたぜ」


何故か自慢気に言うラッサ隊員


「うおっ!マジか?それでどうしたんだよ」


「見事逃げ切ってやったぜ」


「よく逃げ切ったな!」


「ラッサ隊は入隊したらまず逃げる事を教わるんだ。過酷なんだラッサ隊長。無事逃げ切ってご飯を作るんだ!とか言って」


「ラッサ隊も大変なんだな…」


「いや、殿下隊も今回の作戦聞いて殿下やべぇって思ったよ」


そうなんだよ!お互い苦労してるよな!と慰め合いが始まった所でリシャールさんが


「外が大分静かになってきたからそろそろ壁壊してみようか。皆んなで塀の中に戻ろうか」


そう言った時フレデリックの所属する小隊長が


「俺はここから脱出した後行く所があるから塀の中には行かない」


「小隊長何言ってるんですか⁈」


フレデリックは叫んだ。


「フレデリック。俺たちの小隊の仕事は何だ?」


「え?焼きたてパン係ですけど」


「そう。ラッサ隊内で俺の小隊の本業は焼きたてパンを提供する事だ。

 だか、焼き釜馬車は同じ制服を着たヤツらがちょっと預かってメンテナンスするって言うもんだから渡してしまったんだ」


!!


「そんな訳で俺は行けない」


「「「小隊長!!」」」


「ならば私も!」


「いや、俺が!」


「皆んなありがとう。じゃあお言葉に甘えてフレデリック!一緒に行こう」


「え⁈僕何も言って…」


「フレデリック!俺達の代表頼んだぞ!」


「いや、あの…」


「無事取り返えしてくれよ」


「と、言う訳でフレデリックは小隊長と一緒に焼き釜馬車を取り返すべく旅立ってしまったよ」


「…不憫だな。フレデリック」


ポツリと殿下が呟いた。

初めて殿下と意見が一致したわ。


確かに焼きたてパンは美味しいけれど…



「それで隊員はラッサ隊も含めて全員確認できたのか?」


「いや、まだ確認中。所でラッサ大尉は?」


「あぁ無事だ。ただ、ラッサ隊に医師団が同行していたらしい。

 医師団を引き連れ井戸水で倒れた隊員や村人の診察に当たるべく陣の方へ行ってもらっている。

軍医はどうしても怪我がメインだから助かったよ」


まぁ!

医師団の方々もご無事で!


チラリとエアリーを見るとホッとした様に見えた。

幼馴染なら心配よね。


「ナディア、お前の為に連れてきた医師団らしいな」


「いえ、べつに私が頼んだ訳ではなく、セルゲイさんが連れて行けと」


「ふん。あの狸ジジィ…始めからからこうなる事を予測していたと言う訳か」


セルゲイさんが?


「って事は陛下と王妃様は」


セラさんが尋ねると


「セルゲイが動いたなら無事だろう。どこかに脱出してるんじゃないか?」


「そうかぁ。お2人が無事なら良いけど。だけど王宮取られたかぁ。…え?ディラン知ってたの?」


「いや。ただ井戸の毒がずっと気になってた」


「井戸の毒が?」


「俺達がハイドン村に行き、生き延びた村人の保護をしてここに来て連れて来てから撒かれたんだ」


「そうだけど…」


「ナディアが言ったんだ。何かおかしいと」


…確かに言った気がするわね


「最初は俺達の隊に疑いを向ける為かとも思ったが、どうも違う気がする」


「まぁ、他にもやりようはある…かも?」


「死なない程度の毒。この地域を手に入れるなら致死毒を撒く方が手っ取り早い。だか、そうしなかった」


「それは…陛下達が逃げた事と…」


「多分そうだろう。王宮を取っても陛下達はいない。それならば俺を生捕にするしかない。


元老院がいくら暗躍しても陛下か俺がいなければ最終的に法は変えられない」


「そうか…陛下達に逃げられたからディランを生捕にしなくちゃならなくなった…」


「多分だけどな。でなければこんな襲われ方変だろう?」


 わざわざ挟み撃ちにして逃げ込みそうな村に死なない程度の毒…そうね。

辻褄は合いそう。だけど…


「なぜって顔だな?」


殿下が私の顔を見て言う。


そりゃあ、ねぇ?

言いたいけれどコレ言っていいのかしら?

私が躊躇っていると


「陛下達が何故逃げたか?だろ」


私は黙って頷く。

だって大国の皇帝陛下よね。


逃げるなんて考えられない。

たとえ小国だったとしても。王様は王様ではないの。


「まぁもっともだけどな。一応事情はある」


 周りはまだざわついているけれど、この一角だけ静かになってしまった。

スミマセンm(._.)m

朝更新するの忘れてました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ