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流されて帝国  作者: ギョラニスト
26/205

25話

「ゴホン。要するにこの兵士3人はフレデリックが3人の女性を侍らせていたと言う勘違いも甚だしい間違いをし、挙句3人の女性達を監視下に置く事もなく保護するでもなく、野放しにし逃したと。間違いないね?」


「「「も、申し訳ございません」」」


「謝らなくていいよ。3人共降格。兵士見習いからやり直して。とりあえず王宮に戻るまでここには置いておいてあげるから」


兵士見習いってヒューズ君より下になってしまうのね。年だけ見たら10才以上違うのに。


まぁ仕方ないのかもしれないけれど。王宮に戻るまでって一体いつになるのかしら?


「あの。ナディア…様。ありがとうございました。そして今までのご無礼お許しください」


アイラさんが頭を下げてきた。


「ちょ、ちょっとやめてください」


あら?でも人前で今まで通りとはいかないのかしら?

アイラさんの腕を取り教会の隅っこへ向かう。


「アイラさん。人前でなければ今まで通りでお願いします」


「え?その様な訳には…」


 あんなに陽気で親しげなアイラさんが上官に使う様な言葉遣いで話しかけてくるのがとても悲しい。


「あのですね。とても…とても楽しかったのです。あの外風呂に入った時。あの時の様な時間をまた持ちたいのです」


「そう仰られても…」


 あの時みたいにくだらないお喋りをする事はもう無理なのかしら?


 アイラさんとコニーさんと3人でケラケラ笑いながら髪の洗い方教わったり、湯船に浸かって感動したり…私にとって初めてで貴重な体験だったのに


「アイラ・マイルセン。其方に仕事を頼みたい。」


いつの間にか殿下が側にきていた。


「はい!」


「ナディアの専属護衛を頼む。丁度女性の護衛を探していた所だ。所属は第5部隊だったか?部隊長に会えたら私の所属に変更する様頼むが、嫌か?」


「殿下の部隊所属に⁈私がですか?」


い、嫌かしら?この先どうなるかわからない隊の所属になるのは


「あ、あのっ!光栄です。本当に殿下の部隊所属になってよろしいのですか?」


「あぁ。是非頼みたい。コレはたまに1人でふらふらするから。人前でなければ言葉遣いも今までと一緒で構わない」


コレとは失礼な。1人でふらふらだってそんなにしていない。


でも、アイラさんは嫌ではないかしら?


「謹んで拝命致します」


殿下にそう言った後


「ナディア。これからよろしく」


小声でそう言ってウィンクしてくれた。

嬉しい!


 私達はそのまま教会の懺悔室に行く事になった。徹夜したからそこで休ませてもらえるのかもしれない。


 そう言えば食事も入浴もしていない。そしてとても眠い。


 野営食とタライでも贅沢は言えないわね。

非常事態なのだから。


 懺悔室の間の仕切りは降りているけれど、普通の懺悔室で人1人座ったら他にスペースはない。


 これでは休む事はかなり厳しい。

座って仮眠をとるのかしら?


「ナディア様。何か懺悔なさる事があるのでは無いですか?」


いつの間にか仕切りは上がっていて向こう側に薄らエアリーとグレタがみえる


「エアリーなの?一体…」


「アイラさんにナディア様と出会った経緯を聞きました」


⁈⁈


 私はその後懺悔と言う名の取り調べをされ、小一時間に渡り神の導きと言う名の説教を受ける事になった。





パチリ。

ここはどこだったかしら?


 寝心地の良いベッドで目を覚ます。

見覚えのあるこの低い天井。


ガバリ。

棺桶馬車?


 懺悔室を出てタライ風呂に入り、食事をした辺りまでは覚えている。


その後どうしたかしら?

寝ぼけてこの馬車に来たのかもしれない。


 室内履きを履き綿帽子を被ってから扉を開けると日はもう傾いていた。


 馬車は陣を張ってある横に置いてあり、相変わらず人がパタパタ動き回っている。


 朝よりもバタついているみたい。


寝起きなのにお腹が空いてきて、この後の食事もまた野営食かしらと考えながらお手洗いへ行こうと歩いていると


「一体この村をどうするつもりなんだ!こんな馬鹿でかい塀なんか作りやがって」


「ですから殿下が敵からの攻撃を防ぐ為に作られて…」


「本当に敵なんかいるのか⁈この村乗っ取って何しようとしてるんだ」


うわっ。

揉めている。


そ〜っとその場を離れる。

私はこれ以上揉め事は勘弁なのよ。


さて、どこで用を足そうかと歩いていると


「ほんっと油断も隙もないね。どこ行くの?」


ビクッとして振り返るとアイラさんがムッとして立っていた。


「ア、アイラさん。いや、これは、その…は、花を摘みに行こうと思って」


「懺悔室で1人になるなって散々説教くらったのに全然懲りないね。ま、いいさ。こっちだよ、ついてきな」


そうだった。

1人には絶対なるなって言われていた。


トボトボとアイラさんに着いて行き用を足した。


 そして連れて行かれたのはエアリー達のいる天幕だった。3人で一つの天幕を使っているとの事。


いいなぁ。3人一緒で楽しそう。


「本当は6人で使う物らしいのですが、殿下の隊に女性は他にいらっしゃらない様で」


 それなら私も仲間に入れて欲しいと言ったらきっとみんなダメって言いそう。


「ナディア様はこの先も馬車でお過ごしなさるのかしら?」


エアリーが誰にともなく口にした。


「この様な時村長さんの家の一室借りたりしそうですけど、誰も何も言ってこないですね」


グレタが言うとアイラさんは


「あ〜。それは多分無理だろうね。城壁の件と教会乗っ取られたってスゲー剣幕で怒っていたから」


それはそうかも。

 

 殿下隊を疑っていてもおかしくはない。

実情は知らないでしょうし。殿下達も証拠も無いのにアレコレ言う訳にもいかないでしょうし。


「あ、そうでした。コレをナディア様に渡したくて、アイラさんに目覚めたら最初に連れて来て下さる様お願いしていたのです」


 グレタが差し出したのはショートブーツ。


 茶色の皮でできたブーツの靴紐は薄いオレンジ色のリボンになっていて、くるぶしの辺りにワンポイントに花らしきものが貼り付けてある。


「まぁ!何て可愛いらしい」


うん?手にとってみると結構重い。


「あ、やはりちょっと重いですか?」


「そ、そんな事はないわよ」


そう言ってみたけど、やはりちょっと重い


「ナディア様ずっとお部屋履きでしたので気になっていたのですが、中々代わりになる物がなくて。


いくつか靴を持って来ていたのですが、ナディア様とはぐれた時にナディア様の着替え等を乗せた馬車ともはぐれてしまったのです。


それで殿下にご相談しました所軍靴を渡されたのです」


軍靴⁈

殿下は頭がどうかしているとしか思えない。


 何故うら若き貴族令嬢に軍靴。


 ハッ!もしかしてコレを履いて私の足腰を鍛えようとしているのかしら?


「そのままですとちょっと厳つかったので、ちょっと飾りを付けてみたのです。いかがですか?」


上目遣いでグレタが聞いてくる。


「う、嬉しいわ。ありがとう。大切に履かせてもらうわね」


 グレタにあんな目でいかがですかと言われたら、ちょっと…とは言えない。


靴紐を解いていると


「ナディア様。ここからは私が」


 エアリーが私からブーツを引き取り、するすると紐を解き私の前に差し出してくる。


足を差し込み紐を結んでもらい立ち上がるとやっぱり可愛い。

思わず微笑んでしまう


「おっ。よく似合うじゃん」


「うふふ。アイラさんありがとうございます」


やはり可愛い物は気分が上がる。


歩いてみようと足を前に出すと…やはり重い。


 でもこのブーツを履き続けたら強靭な足腰になるに違いない。


頑張ろう



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