24話
そうこうしている内に沢山の天幕が見えてきた。
ここに陣を張っているらしい。
早朝にも関わらず相変わらずガヤガヤと騒がしい。
殿下はキャシーから私を降ろし、馬車組にそこで待つ様指示をしてから2人で大き目な天幕へと向かう。
「ここにセラの部下、もしくはフレデリックと言う者はいるか?」
いきなり中にズカズカ入り殿下が言う。
天幕の中で大きなテーブルを囲んで何やら話し込んでいた人達は一斉に立ち上がり胸に右手をあて敬礼をした。
「殿下!無事のおかえりで。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした」」」
ヒェ。
みんなが一斉に声を上げる。
何か怖い
「挨拶はいい。セラの部下かフレデリックと言う者は?」
「ハッ。ここより西側に4つ進んだ天幕で未だ取り調べ中です」
えぇ⁈フレデリックさん取り調べされてるの?
「わかった。皆続きを。行くぞ」
殿下はさっさと天幕を後にした。
人混みを避けながら目的の天幕を目指すと
「だから!何度も言ってます。ラッサ隊の者ですって。ナディア様の侍女の保護しろとの命令でした」
「嘘をつくな!!女性3人も侍らせて。脅して連れていたんだろ⁈わかっているんだ。早く吐け」
「ですから侍女2人の保護とアイラは…」
はべらす?
フレデリックさんって人言いがかりつけられているのではないかしら?
「失礼」
入っても良いかとも聞かずに殿下は天幕の中に入ってしまった。
「誰だ!勝手に入っ、て…殿下!!」
先程と同じ様に立ち上がり敬礼する。
「お前がフレデリックか?」
部屋にいたのは全部で4人。
内3人は敬礼しているので殿下の隊員?
と言う事は1人椅子に腰掛け後ろ手に縄をかけられているのがフレデリックさん。
「は、はい。ラッサ隊第3部隊フレデリック・アルノーです」
私は駆け寄り縄を解こうとした。
エアリーとグレタを守ってくれた恩人に何て事を!
ラッサ隊にいたけど多分見かけた事は無い気がする。ずっと棺桶馬車の中に居たし。
お互い様でこの人も私の顔は知らないのでしょう。そんな顔もわからない私の大切な侍女を守ってくれた人なのよ!
「おい!小僧!何を…」
私を止めようと肩を掴かんだ瞬間その兵士が吹っ飛ばされ、天幕にたたきつけられた。天幕だから怪我はしないわよね?
「触るな」
殿下は一言で周りを黙らせフレデリックに近寄り縄を解く。
「私の婚約者の侍女を守ってくれたそうだな。礼を言う」
ポカンとした顔のフレデリックさんは一瞬、間をおいて
「ハッ!有難きお言葉!」
立ち上がり敬礼をした。
周りを見回すと兵士2人は未だポカンとした顔をしていて、床に転がった兵士は驚きの表情で殿下を見上げていた。
「私からもお礼を。エアリーとグレタを無事ここまで連れてきて下さり、本当にありがとうございました」
3人は明らかに顔を硬らせた。
先程私の事を小僧呼ばわりなさったあなた、顔を忘れなくってよ
私達は天幕を出てエアリー達と合流する。
「よう!フレデリック。お疲れ〜」
元気にアイラさんが挨拶すると
「てめぇ…お前がいたせいで尋問の内容がおかしくなったんだぞ」
「えーなんで?アタシちゃんとその後ろの兵士に説明したよ」
後ろからトボトボついてきた3人を見るとサッと目を逸らした。
殿下は少し眉を顰め
「とりあえずセラの所まで行く」
そう言ってキャシーに私を乗せ自分も乗った。
「お前らは走ってついて来い。フレデリックは馬車の中に」
あら?大丈夫かしら?と思っていたら案の定馬車に乗り込んだフレデリックさんの
「はぐれ魔法使い!何でここに⁈」
と言う先程と同じ様な会話が繰り広げられていた。
教会内も相変わらずバタついていてセラさんを見つけた殿下は近寄り話をしている。
バタン
走って追いかけてきた兵士は汗だくで息を切らし今到着したらしい。
「お、お待たせ、して申し訳ありません」
殿下ったら3人に走ってついて来いと言っておいてキャシーを全力で走らせるんだもの。
それでも可哀想とは思わないけれど。
殿下とセラさんがこちらに来たけれどセラさんすっごい冷たい目で3人をみている。
「今殿下から聞いた話は本当?この女性兵士は待機させて、男性兵士だけ取り調べたって聞いたケド」
「は、はい。女性兵士の方は問題ないと判断し、待機を命じました」
「その待機場所に誰もつけなかったの?」
「は?いえ。誰かがついていたと思います」
「誰か?直接見たり命令してない?ふぅん」
3人は顔を青ざめさせた。
「この人誰か知ってる?名前ちゃんと聞いた?」
「い、いえ。侍女殿2人と仲良く話をしていた様なので特には…」
「アイラ・マイルセンって聞いた事ない?」
3人はバッと顔を上げアイラさんを見る。
和かに笑いながら手をヒラヒラさせているアイラを凝視した後
「ヒッ」
悲鳴の様な声を上げた。
「知ってるみたいだね。ほんっとうに良かったよ。アイラ・マイルセンが味方で。万が一敵でここに忍び込みに来たのなら殿下いなかったから全滅してたかもよ?」
え?アイラさん凄い人なの?
一拍置いて更にセラさんは続ける。
「しかも3人待機場所にはちょっとしかいなかったらしい。そうだよね?アイラ・マイルセン」
「ハッ。兵士達が殿下が帰って来て塀がどうのと噂をしておりました。
それを聞き付けたグレタ殿が知らせに来てくれ、そこにはナディア様がいるはずだと3人でその場から離れました。お咎めは受け入れます」
そんな!アイラさんがお咎めを受けるの⁈
エアリーとグレタも同じ表情をしていた。
「あ、あの!私共がお願いしたのです。アイラさんに!私共では、た、手綱を引けないのです。だからお咎めは私共が受けます」
エアリーが涙目で訴える。
「でしたら主である私がお咎めを受けましょう。アイラさんには御恩を感じておりましたので」
私も訴えてみる。
「うわっ!ナディア様までヤメテ。アイラ・マイルセンを咎めたりしないから!お願いです。頭上げて上げてください」
本当に?頭を上げ殿下を見ると頷きが返ってきた。