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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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23話



 「と、そんな感じでこの村に辿り着いたのです」


エアリーが離れてからの経緯をナディアに説明する。


 アイラは手綱を引き、リシャールさんはキャシーに乗っている。


 私と殿下は馬車の中にお2人でどうぞと言われたが婚姻前なのに何を言いだすのか。


 結局この馬車は寝台馬車なので4人で横一列、縦一列とも言うかもしれないけれど座って説明を聞く。

狭い


「珍道中だな」


殿下が言った


「何て事言うんですか?エアリーもグレタも命掛けでここまで来てくれたのですよ!」


 私と一緒のか弱い2人が危険を冒してまでここに来てくれたのに!


 エアリーが説明をしている間グレタは綿帽子の紐をチクチク縫っていた。


その裁縫セットは一体どこに?と聞いた所、馬車の寝台の下に引き出しがありそこに一式入っていたそうだ。


そしてその横の引き出しには


「私の荷物!」


「はい。ドレスや嵩張る物は王宮に置いてきましたがコレは一応ナディア様がお持ちになった方がよろしいかと」


 おずおずとグレタは答える。


カバンを開け1番下に手を入れる。

ある!シャナル王国の国宝もどき。


2人はこのカバンに何が入っているか知らないのに、私がドレナバルへの旅の最中、肌身離さず持っていたのを見ていてくれたのね。


流石私の侍女。

なんて優秀なのでしょう。


「で?そのフレデリックと言う兵士は?」


殿下が尋ねると


「はい。この村の責任者を任されているセラさんの部下、と言う人の元に4人で連れて行かれたのですが、女性はいいやと言われ村の北にある陣で待機していたのです」


「誰だ。ソイツは。厳罰だな」


殿下がイラっとして言う


「何故ですの?」


「馬車を引いているアイラと言う者も兵士だろ。味方だったから良かったものの。女性兵士が侍女に変装だって十分有り得る話だ。全く」



エアリーとグレタの身体が揺れた。


「2人共大丈夫⁈」


「あ、悪い」


殿下が謝った。

また魔力ダダ漏れ?


「だ、大丈夫です。でもそろそろ…」


 一緒の馬車に乗り込みかれこれ1時間は経過している。


 殿下は魔力を抑えていてもエアリーとグレタにはそろそろ厳しいのかも。


なんて不便な


「もう次のポイントに到着するだろう。後少し我慢してくれ」


「「は、はい」」


 窓のカーテンから光が漏れだした。


夜が明ける


少し走った所で馬車は停止した。

全員で馬車から降り殿下とリシャールさんはそのまま中途半端な塀まで歩いて行った。


朝日が目に痛い


「ナディア、殿下といて身体とか何ともないのか?」


アイラさんが聞いてきた。


「ええ。まぁ」


「ナディアすげーな。御者台にいても殿下の魔力感じたよ。殿下には初めて会ったけどあれで抑えてるんだろ?やべえな」


興奮気味にアイラさんは言う。


「ソウデスネ」


 他に何と言えばいいのかわからない。

アイラさんにも魔力が無い事は内緒だろうか。


 殿下とリシャールさんは2人地面に手を付きあっと言う間に城壁を作り上げた。


少しヘロヘロになって戻ってきたリシャールさんは


「あ〜これで全部だよな。疲れた〜。この後教会まで戻ったら休ませて…って、あれ?」


リシャールさんがこっちをじっとみている


「あ、僕の事おっさん呼ばわりした…」


それまで黙っていたアイラさんが


「あっ!胡散臭いはぐれ魔法使い!」


え?知り合い?


「おっさん何でここにいるのさ」


「それはこっちのセリフだよ。国境には行かないって言ってたじゃないか」


「いや、怪し過ぎて乗せらんないよ」


エアリーとグレタは不思議そうな顔をして見ていた


「聞いてよディラン。僕大隊から抜け出して1人で国境に向かう間にこの馬車に会ったんだよ。


そしたら国境には行かないって言ってたくせに何でここに来てるんだよ」


「ラッサ大尉から誰も信用するなって言われてたんだ。怪し過ぎだろ。魔法使いが1人でふらふら歩いてるなんて」


突然始まった言い合いに誰も口を挟めずにいると


「リシャール…お前この間抜けな馬車見た瞬間思い出せよ」


ヒドイ!殿下のご・実・家が私のために用意した馬車を間抜けよばわりなんて。


私だって喜んで乗っていたのでは決してない!


「だって暗かったからわからないよ。それより酷いと思わないか?あんな何も無い所に置き去りなんて」


「俺がこいつらと一緒だったら間違いなく乗せないな。諦めろ」


「ええぇ?ディランまで酷い」


「ちょっと待って。何でアタシらより先に到着してるんだ?」


アイラさんが疑問を口にする。

それはそうよね。徒歩と馬車ですもの


「えー僕魔法使いだもの。飛んできたさ」


飛ぶ⁈


「で、では始めから飛べば良かったのでは?」


「ナディアちゃんダメだなぁ。それじゃあ余計に魔力使っちゃうでしょう?多分ディランに何かあったと思って魔力温存したかったんだよ。親心だよねー」

 

 アイラは少し罪の意識を感じた。


 今こんなにヘロヘロしているのは自分達があの時馬車に乗せなかったせいな気もしてきた。


「おっさん、悪かった。馬車のるか?」


アイラなりの誠意を見せたが


「おっさんおっさんって年寄り扱いしないでくれない?これでもまだ36才なんだけど」


年相応に見える。

何と言えばいいのか…


「リシャール。年相応だ。俺達から見たらおっさんだよ」



殿下がとどめを刺してしまったのでリシャールさんは傷ついて馬車に乗り込んでしまった。


傷つきやすい年頃なのかもしれない。


 結局戻る時は私と殿下がキャシーに乗って馬車にリシャールさん。


 御者台にアイラさん、エアリー、グレタが乗って帰る事になった。


狭そう。


 3人共多分もう殿下と一緒はキツそうだったから仕方ない。


 でもリシャールさんと一緒は大丈夫なのかしら?

リシャールさんだって殿下育てを任される位魔力強いのよね?そう殿下に聞いてみると


「リシャールは魔力をほぼ完璧に抑えられる。俺にはまだ出来んが、ソコだけは尊敬している」


育ててもらったのに尊敬出来るのがそれだけなんて…殿下冷たくないかしら?


それとも大好きの裏返し?




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