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流されて帝国  作者: ギョラニスト
22/205

21話


 途中助けてくれーとか乗せてくれーと言う声を掛けられたが、知らない顔だったので無視して通り過ぎた。


 至る所で小競り合いを見かけ、知り合いがいれば助けようかとも思うのだが、全く知らない顔の同じ制服同士が剣を交えているのは奇妙にも滑稽にも思えた。


およそ大隊として機能していないのが分かる。

こんな事は初めてだった。


 深夜に差し掛かる頃漸く小競り合いを見かけなくなり一行は馬を休ませる為そこで一晩過ごす事にした。


フレデリックは火を起こしとりあえず仮眠出来るよう準備を進めると


「アタシちょっとあそこに森っぽい所あるから行って木の実でも探してくるよ」


「日が昇ってからの方がいいだろ。まだ誰か潜んでいるかもしれないんだぞ。

だいたい今この場がどこいら辺かわかってるのか?」


「あ〜うるさい。だからって食糧も飲み水もないのはエアリーやグレタにはキツいだろ。アタシらとは違うんだから」


「ぐっ…」


 アイラの言う事はもっともだった。


自分達は普段から訓練をしサバイバル的な事もよくあるが、エアリーとグレタは違う。


軍隊と関わった事もない一般的なお嬢さんだ。


「じゃあ2人の事頼んだよ」


「お前さっき2人の事はアタシが守るって言ったばかり…!!」


 駆け出したアイラの後ろ姿しか見えなくなりフレデリックは危うく舌打ちしそうになった。


外に出ていたエアリーとグレタの手前我慢したけれど


「あの…私共の事はお気になさらずにお願いしますね」


恐る恐るエアリーが言うと


「いや、そんな訳にはいまいりません。ラッサ隊長の厳命ですから」


「で、でも勝手に着いてきた訳ですし…」


自分達が着いてきた事でフレデリックやアイラの負担が増えるのは申し訳ない。


「僕1人だったら間違いなくお断りして、近隣の町へお連れしてたでしょう。


でもアイラもああ言ってたし、何より言いたくはないですがアイラ中々強いのですよ。僕なんかより」


ヘラリとフレデリックが笑うとエアリーとグレタも安心して笑顔を浮かべた。


「あの、私達に出来る事あったら何でも言って下さい。足を引っ張らない様にしますので」


「はい。何かありましたらお願いする事もあるかと思います。無いに越した事はないのですが」


ハハハと笑いその場で和んでいると暫くしてアイラが帰ってきた。


「ハイよっ!」


 色とりどりの果物や木の実、そして最後に得体の知れない獲物をドサッと置いた


「なぁ。コレ何?」


「ガイマークの雛。羽毟って食べると美味いよー」


…鳥に見える。


が、嘴は無く代わりに大きな口元にギザギザとした歯が見える。

しかも薄い灰色に真っ赤な水玉模様。


「へー。僕はエンリョします」


「栄養価高いんだよ。エアリーとグレタは?」


「私もちょっと…」


エアリーが言うと


「え?わ、私、いただきます」


グレタは何となく断ったら悪い気がしてそう言ったが、心なしか顔色が悪い


「よっしゃ。この美味しさをいつか誰かと分かち合いたかったんだ」


そう言ってガイマークの毛を毟り出した


「グレタ大丈夫ですの?」


「わ、わからないけど何となくそう言ってしまったわ」


 ガイマークを食べる前に何か食べた方が体に良い気がして果物を齧っていると


「できた!ガイマークの串焼き風」


はいよっと渡されたソレはグレタの顔程もある大きさで油が滴っていた。


一瞬躊躇ったがエイっと齧りついてみる


「!!お、美味しい」


見た目程油っこくなく、驚く程ジューシーで口に入れるとホロリと解ける。少し塩を振っただけなのに、濃厚な味がする。


「「え」」


フレデリックとエアリーが信じがたい表情でいると


「でしょう。美味しいって言ってるのに誰も食べないんだよ」


無言で食べるグレタにエアリーも


「わ、私も食べてみようかしら?」


「うん。まだまだあるよ」


エアリーも口にした瞬間驚きの表情で


「本当だわ…なんて美味しいのかしら」


3人は無言で齧りついていると


「ぼ、僕も」


そう言って勝手に焚き火で焼いていたガイマークを一本手に取り齧り付く。


「うまっ」


結局フレデリックもガツガツ食べ出してあっという間に平らげてしまった


「あ〜食べたら眠くなってきた。あと頼んだよフレデリック」


そう言ってアイラはその場にゴロンと横になってしまった。


苦笑いでフレデリックは


「2人も馬車で休むといい。明日日の出と共に出発だから」


「ではお言葉に甘えます。おやすみなさい」


そう言って2人は馬車へ戻った。

数分後


「で、誰に貰ったんだ。果物と木の実」


「何だ。バレてたか」


「この辺にないだろ。両方とも」


「ラッサ大尉」


「会ったのか⁈」


「しっ!隊長と何とかって副隊長とコニーが一緒だった」


「何とかって誰だよ。しかし何でコニーが一緒なんだ?」


「隊長達は散り散りになったラッサ隊の人を探して国境に行く様言ってたらしいんだ。


そしたら複数の見知らぬ顔の隊服着た奴らがコニーを襲う所に丁度出くわして」


「げぇ!そいつら大丈夫だったのかよ⁈」


「隊長達が止めたらしいよ。コニーを」


「コニーそうゆうの絶対許さないからな。そいつらラッキーだったな」


「そう。ラッサ大尉も肝が冷えたって言ってたよ。危うく皆殺しになる所だったって」


「ひぃぃ。怖ぇよ。怒りのコニー。で?」


「で3人で残りの兵士探してた所にアタシと会えたって訳」


「何でこっちに連れて来ないんだよ」


「元々フレデリック探してたから、アタシ一緒なら大丈夫だろう。後で国境の村でって言ってた。んでエアリーとグレタにって食糧貰ったんだよ」


「そうか。じゃあ国境行きで正確だったな」


「後もう一つ伝言。ラッサ隊以外信用するなだって」


「…知り合いの兵士でもか?」


「多分」


「そうか」


「アタシ先に休むよ。1時間したら交代ね」


「ああ。おやすみ」


 ラッサ隊長がそう言うのであれば、そうゆう事なのだろう。


フレデリックは目を閉じて考える。


この先顔見知りが助けを求めてきても信用してはならない、助けないなんて事を自分に出来るだろうか?


もし士官学校の同期だったら、

もし前にいた部隊の人だったら…


 でも自分の任務はエアリーとグレタを守る事だ。

今は全力でその任務を全うするのみだ。

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