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流されて帝国  作者: ギョラニスト
206/206

206話


 あの後、歌声が気になって話し合いにはならなかった。物凄く微妙な顔で殿下は戻り、コーデリアさんは窓の外を見て黄昏れている。


 もう歌声の事は考えるのはよそう。でないとアリアステ様の顔がぷっぷちゃん風になってしまう。


「ぷしゅん」


 ?何かしら?今の鳴き声。可愛い


「ぷっぷ?なんだ?今のはくしゃみか?」


 え?


「ぷっぷちゃん風邪引いたの?」


 急いで駆け寄ると鼻水まで出ている。ハンカチで拭いてあげると


「ぷ〜ん」


 と鳴きながら私にしがみついてきた。大丈夫かしら?こんなに甘えてきたのは初めてだわ


「大丈夫?具合悪い?ドレナバルに帰りたいの?お腹が空いたの?」


 顔色は…元が黒いからわからない。熱は…平温なんて知らないし…よくわからないけれど、とりあえず服の中に入れようとしたら


「まてナディア。その仕事は我がする」


「え?青龍様服をお召しになっていない…」


「肌と肌が一番温かいだろう」


 え〜…龍って温かいのかしら?仕方なくぷっぷちゃんを引き渡そうとしたら


「ぷっぷ〜ぷ、ぷぷ」


 凄い!ぷっぷちゃんがニ語文を話した!


「な、なんだと?」


 え?何?


「そんな事言わないでも…」


 青龍様は明らかに肩を落とし部屋の隅で座り込んでしまった。


 え?よくわからないけれど、喧嘩をした?


 エアリーやコニーさんもどうして良いのかわからない様で困った顔をしている。


 仕方ないので予定通りぷっぷちゃんを服の中に入れ青龍様の横に座り込んだ。


「何故ここに来る」


「ぷ、ぷっぷちゃんもしかして青龍様の側にいたいかなぁ、なんて」


 ジロリとこちらを見た後


「ぷっぷの言っている事もわからないのに?」


 うわぁ…青龍様いじけてる…


「わ、わかりませんけれど…何となく?」


 フンと青龍様は鼻を鳴らしたあと


「ぷっぷはお前と一緒がいいから離れてくれと…我の肌は硬いそうだ」


 うん。ぷっぷちゃんはきっと間違えていないわね。青龍様硬そうだもの。


 ただ使徒様にそうですねとは言えない


「青龍様は大きくなったり小さくなったりできますよね?その…肌を柔らかくなんて…」


 ピクリと青龍様のしっぽが動いた


「柔らかく?…こんな感じか?」


 ぷよんと青龍様の鱗が波打った


「せせせ青龍様!?うっ、鱗が」


「うるさい、騒ぐな。お主が言ったのであろう。鱗を柔らかくしろと」


 言ってない。鱗を柔らかくしろとは言ってない。言ってないけど…どんな感触かしら?


「あのぅ、青龍様?もしよろしかったらちょ〜っと触らしてもらってもよろしいですか?」


 一応お伺いをたてて、頷くいたのを確認したあとそっと人差し指で触れた。


 ぽよん…う、鱗なのにぽよん…


「ふぉぉぉ…何か、凄く良い感じです!ぷっぷちゃん!見て、出て、触って!」


「ぷ」


 服の隙間から顔の前半分を出しぷっぷちゃんは目を輝かせた。


 急いで前ボタンを外すと恐る恐る前足でピトリと触りぷ〜っと鳴きながら青龍様に抱きついた。


「な、なんだ、ぷっぷはこの感触が好きなのか?」


 途端目尻を下げしっぽをブンブン振る青龍様。使徒としての威厳はカケラもないけれどとても嬉しそう


「なるほどねぇ…ぷっぷちゃん柔らかい感触が好きならナディアちゃんに懐くの納得だわ」


「ですね。ナディア様柔らかいですもんね」


 そんな筈はない。確かにドレナバルに来てすぐは柔らかかったかもしれない。


 でも今は違うのよ?スクワットや重い軍靴て鍛えられた下半身、逃げたりして走り回って上半身だって鍛えられたのよ?そう言うと


「う〜ん…ナディアちゃんこれは何かしら?」


 ワシっと私のお腹を掴んできたコニーさん。


「ちょ、やめてください。コニーさん!くすぐったいです!」


「ナディア様、くすぐったがっている時点で鍛わってないですね」


 酷い。私は精一杯頑張っているのに 


 コンコンコン 


 誰かしら?こんな時間に誰か来るなんて


「どうぞ」


「ナディア〜〜!」


 バーンと扉を開け兄様が入ってこようとし、コニーさんに有無も言わさず殴られ、エアリーが入り口を塞ぐ形で仁王立ちになっていた。


「ここは男子禁制ですよ」


 部屋の入り口で頬を押さえ、女の子座りの涙目のローラン兄様はプルプル震えながら


「ひ、酷い…い、妹に会いに来ただけなに…こんな暴力、尋問でもされなかった!」


 乙女の様になっている兄様に


「女子部屋にいきなり入ろうとするからでしょう?ところで兄様何の用なの?」


「あ〜ナディアからも話しが聞きたいって。グランゼン侯爵?さんが」


 えー…私もされるのかしら?尋問。


 行きたくないけれど、ここでゴネたらやましい事があるからとか言われそうだわ。仕方なく立ち上がるとコニーさんが


「私も行くわ。野郎ばかりの部屋にナディアちゃんだけ行かせるなんて危険だから」


「では、私も。私はナディア様と合流してずっと側にいたから」


 コーデリア様も立候補してくれた。良かったわ。グランゼン侯爵と同じ部屋にいるだけで気が滅入りそうだけど、2人が一緒なら心強いわ。


 私達は階段を降り部屋に入ろうとしたら


「だからどうしてナディアの取り調べなんかするんだ!?」


「取り調べではございません!お話しを聞かせていただくだけと何度も言っているではないですか!」


 また言い合いをしている。殿下とグランゼン侯爵は大抵いつも喧嘩腰で、本当に手を組む気があるのかしら?と思わざるを得ない。そしてこの言い合いの果て


「グゥ…」


「あ、」


 バタン


「コニーさん、コーデリアさん終わった様ですよ」


 こうして殿下がダダ漏らして終わりを迎える。


 毎日行事のようなものなので、この言い合いが聞こえたら私以外みんな扉から離れる事になっている。扉を開けてもらい中に入るなり


「終わりましたか?」


 このセリフもいつもの事になりつつある。


「あぁ。スマン、またやってしまった…」


 いつもの事なのに殿下が落ち込むのには理由がある。


 殿下はここ二日、時間がある時はエルザラン師にダダ漏れしないよう特訓を受けているのだ。私には全く関係ないので気にしていないけれど


「取り調べがあると聞いて参りました」


「と、取り調べでは、なく…話しを、聞かせて…ほしいと…」


 今にも死にそうな顔色でグランゼン侯爵が言う。


 ちなみに侯爵の周りには大量の兵士が倒れていて、隊服を着用していても貴族令嬢。跨ぐ訳にはいかないので避けて歩くのも一苦労なのよね。


 奥の部屋に誘導され、私達3人の他グランゼン侯爵、殿下、エルザラン師、その奥のキッチンでフレデリックさんがせっせとパンを焼いている。


良い香りだわ…お疲れ様です



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