203話
スミマセン。キリが良かったのでちょっと短いです。
それにしてもペイル山脈がそんな凄い所だったなんて…子供の頃よく麓で家族ピクニックをしたりしたのに。
そしてあの大きな宝石…陛下やマティーニ王妃が私がシャナルを出ても大丈夫な様に持たせてくれたのかもと思うと目頭が熱くなる。何かあったら換金しようとしてごめんなさい。
私が感謝の気持ちでシャナルに思いを馳せていると
「青龍様、そのシャナルの秘密はいつ頃から漏れていたのかわかりますか?同時多発聖女はそのせいですよね?」
殿下が尋ねた
「いつ頃からかは知らんが女神石はシャナルから出たと見て間違いないだろう。他の禁足地は我々が守っているのだから。そこの者、そなたは何か知っているのではないか?」
何ですって?他の禁足地は使徒様達が守っていて、何故秘密とは言えペイル山脈は特に誰が守るでもなくシャナル王家に任されているの?それって何かダメじゃないかしら?
「わ、私は何も…ただ、シャナルから禁足地の石が流通していると」
焦りながらグランゼン侯爵が答えた。
「誰が言ったんだ?」
殿下が畳み掛けると
「…噂があったのだ」
それまで黙っていたエルザラン師が口を開いた。
「噂?」
「シャナルに聖女が現れ、その聖女は幼い頃からではなく成人してから力が発現したと。シャナルで以前出現した聖女もそうだった」
「そうなのか?」
殿下がいきなり話しを振ってきた。知らない。そんな話しは初耳だわ。皇太子妃教育でも習っていない。無言で首を振ると
「シャナルはその辺無頓着だから…ただ他の国はそうは思わない。何か秘密がありそうだと探りを入れた国があってな。それがマルゴロードだ」
ゴクリ…いきなりきな臭い話になったわ
「あの国は大きい割に聖女が現れたのはシャナルと一緒で2度しかない。何かあるのではと探りを入れている最中、シャナルの皇太子の婚約者だった女性が婚約解消しドレナバルに輿入れすると言う話しが大陸中を駆け巡った」
私!?ここで私が出てくるの!?
「知ってたか?」
殿下の質問に首が千切れそうな位振る。私の婚約解消とドレナバル行きが大陸中を駆け巡るなんて…
「絶対何か裏があると踏んだのだろう。マルゴロードは観光客を装いシャナルに潜入したところ、シャナルで出現した聖女は2人共親のどちらかが外国人である事が判明してな」
全員の視線が聖女アイリスに注がれた
「あ、えっと…その、父が、がっ外国人で、す。エリオルトルと言う小さな国の出身です」
エリオルトル…聞いた事ないわ
「東方にある小さな国だ。魔力よりは聖力持ちが多い。その事を突き止めたマルゴロードは魔力や聖力を持つ者を大量にシャナルに送ったのだよ」
なっ、何ですって!?シャナルは大丈夫なの?
兄様を見ると
「そう言えばナディアがドレナバルに行く前、急に観光客が増えたって言ってたような?」
「私がシャナルを出る前ですか?」
「そうそう。ナディアが腑抜けてた頃。僕はシャナルにいなかったけど、母上が手紙でそんな事言ってたような?あんまり覚えてないけど」
ちゃんと覚えててよ!でもドレナバルに行く前そんなに大量の観光客が押しかけたら、いくら腑抜けていてもわかりそうなものなのに
「安心せい。入り口までは行けただろうが、中には入れなかったと聞いている。魔力や聖力の強い者は具合悪くなるのだよ。シャナルに入ると。かく言う私もシャナルに近寄る事もできなかった」
え?それって女神様が何かしたのかしら?侵略されない様にとか?
「は?それでは俺…私はシャナルに行く事はできないのか?」
「殿下は行く途中で具合悪くなるでしょうな」
「それではどうやってナディアの両親に会いに行けばいいんだ?挨拶だってあるだろう?」
「諦めて下さい。それよりシャナルです。マルゴロードは次に魔力をあまり持たない者を送ったところ、上手く順応し探らせる事に成功し、ペイル山脈が女神石の出所だと突き止めた」
サックリ殿下の話しを終わらせたエルザラン師の話は続く
「そして、どうやらシャナルの中にペイル山脈の麓に案内した者がいたようで短期間で大量の女神石が運び出されたのが事の始まりだ。たまたまマッサーラは今回の様な決起集会の様な催しをしただけで、今や女神石は大陸中に拡散している」
なんて事…一体誰が案内したのかしら?王家は知っている筈だから外すとして、それでも王宮の裏に麓はあるのだから平民は無闇に立ち入れない。貴族かしら?
ただ単純に知らずに、どうぞどうぞと運び出した可能性だって無きにしも非ず…
「悪意を持ち女神石と知って渡したとは考えたくはないが、それよりこの事態が今後この大陸に何を及ぼすのか…」
ゾッとした。
いつか殿下が言っていた。戦っても戦っても聖女が回復してしまう。
永遠に終わらない戦…それが現実味を帯びてきた