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流されて帝国  作者: ギョラニスト
202/205

202話


 殿下が口を開いた。


「で?どうゆう事だ?」


 いきなり会議が始まってしまった


「どう、とは?」


 このグランゼン侯爵と言う人全く感情の読めない面立ちをしている。つまらなそうで人を小馬鹿にしていると言うか….


「まずは何故2人がマッサーラにいるのか。何をしに来たのか」


「こちらが尋ねたいですよ。一国の皇太子が敵国で罪人になるなんて前代未聞ですからね」


 …この人話し合いをする気なんて欠片もないらしい。一体何をしにこの空き家にきたのかしら?


「私どもはこの空き家に殿下に会いに来たのではなく…」


 チラリとローラン兄様を見た。


 まさか…


「こんな敵国に皇太子がいるのが前代未聞と申しましたが、その皇太子の婚約者の実の兄が大陸法を破るなぞ言語道断。一体どう責任を取るおつもりですかな?」


 大陸法…以前シャナルの妃教育で習ったわ。この大陸に住む以上必ず守らなければならない法律。いくつかあるけれど一体何に抵触したのかしら?


「え?僕が大陸法違反?」


 背後に立っていた兄様が驚きの声を上げる。


「やれやれ…自覚もないとは。青龍様やオルストの巫女殿はお分かりですよね?」


 気まずそうにコーデリアさんが目を伏せて言った


「…石…」


 兄様が大金をもらって運んでいる石?


「ちょっと待て。お前らは始めからナディアの兄上を追ってここまできたのか?」


 殿下の言う事ももっともだわ。私達だってたった今知ったのに


「正確には石の運び屋だ。今、旧王都は色々な国の者が出入りしてほぼ無法地帯と化している。その中に密かに石を搾取し、わざわざ旧王都まで持って来てからマッサーラに運び入れている者がいると情報が入った。…殿下の婚約者殿の兄上はそうやってドレナバルに罪を着せようとしていたのでは?」


「まっ、待って待って!この石何!?」


 はぁ〜〜 


 エルザラン師を始めグランゼン侯爵やコーデリアさんからため息が出た。


「何も知らず運んだと?この石は女神アリアステ様の休息地に生ずる女神石。禁足地にある石だ」


 大陸法第四条『禁足地に立ち入るなかれ』。何故その石を兄様が!?


「ちっ、違う!入ってない!盗ってない!」


「禁足地の一つにシャナル国の後ろに聳える山々、ペイル山脈があるのにその言葉を信じろと?」


 !?え、そうなの?知らなかった…


「知らないよ!ペイル山脈が禁足地なんて!なぁナディア!」


 嫌〜!何故こで私にふるの!?


「初めて知りました…」


 これでは私が兄様を庇って嘘を吐いていると思われないかしら?


「ハッ。まぁ兄妹だからそう言うしかないでしょうな」


 もっと他に言い様はあったかもしれないけれど、今そんな言葉でてこない。知らないものは知らないのに…


 同時多発聖女の共犯者な雰囲気に包まれている中、それまで人の頭の上でイチャついてた青龍様が口を開いた


「その二人は知らんだろうな…」


「「青龍様!!」」


 私と兄様は縋り付く様な勢いで青龍様を見る


「青龍様、いくら番様の主人とは言えそれはちょっと…」


 薄ら笑いでグランゼン侯爵が言う。


「ぷっぷの主人ではない。ぷっぷが主人だ。」


 え?私が飼われているの?ってそうではなくて


「せ、青龍様!どちらが主人でも構わないのですが今は私と兄様の弁護を!」


「弁護するつもりもない。事実を述べたまでだ。シャナルの末裔にそんな気概がある訳なかろう」


「「え?青龍様…それはどうゆう…」」


 ウッカリ兄様と声を合わせてしまった。


「昔約束したんじゃよ。当時のシャナルの国王とアリアステ様が」


「アリアステ様と直に…ですか?」


 聖獣とではなくて?


「そう。その前に当時の聖獣がシャナルに降り立った時、何と居心地の良い所だと思ったそうだ。山や湖に囲まれ善良な人々と長閑な時間。願わくば100年はいたいと。だがそれ以上に変化を嫌う国民性は聖獣が居る事に抵抗を示した。他国から狙われるから何もしないで出て行って欲しいと懇願され、どうしたら良いのかアリアステ様に泣きついた時、近くにいた使徒全員で爆笑したものだ」


 何と言うか…当時の聖獣様ごめんなさい。


「それでアリアステ様はその国を見てみたいと言いだして聖獣と共にシャナルへ行ったんじゃよ。我らも後ろからついて行ってな」


 え?神様御一行でシャナルに?


「いやぁあの時のシャナルの王族の顔ときたら…絶望とはちと違うが、何故女神様までと泣いておったな。ただアリアステ様もいたくその場所を気に入って、あの山々に離宮を造って休憩地とする事と引き換えに、何者もシャナルに干渉できない様にするのはどうかと尋ねたんじゃ。すると不干渉もだけどペイル山脈で休憩している事を知られない様にしてくれるならばと。ある意味交渉上手だな、シャナルの王族は。そうしてペイル山脈にアリアステ様が休憩地としている事を誰も知らず今に至っておった」


「え?誰も知らなかったのですか?それ言ったらダメなヤツじゃ…しかも過去形」


 ハッ!しまった。ウッカリ思っていた事を口にしてしまった…


「ほらな。知らなければ幸せと言う事もあるのだよ。ナディアよ、アリアステ様が休憩地としていた場所はその地自体が特別神聖な地となるのじゃ。神聖な地に生えた草や実を口にすればたいていの病気も治るしそもそも病気にもあまりならん。そんな地から湧き出る水を口にしていたシャナルの国民はあまり病気などしなかったのではないか?」


 兄様と顔を見合わせた。確かにあまり病気らしい病気もせず生きてきたし、怪我をしてもすぐに治っていたかも…でもドレナバルに来てからも筋肉痛には悩まされたくらいで、まぁ熱出したりしたけど仮病だったりで大差無いような?


 納得いかない顔をしていたら


「ナディアはシャナルを出る時何か特別な物をもらったり、持ち出さなかったか?」


 貰う?持ち出す?…衣類や装飾品、雑貨、特別な物は…あっ!


「特別な物と言えば小麦と宝石を陛下からいただきました」


「それだな。シャナル産の小麦は貴重だし宝石は更に貴重だろう。宝石は身に着けたら魔除けにもなる筈だ。ただそれはシャナル王家にのみ伝わる話。石が出回っていると言う事、そこの者がペイル山脈が禁足地だと言う事を知っていた事、そのシャナルの秘密がどこからか漏れだのだろう」


 一体どこから…ふと兄様を見た。


「やめてくれ!僕を見るんじゃない。知らないって!!俺達仲良し家族だろ!?」


 本当に?我が兄なのに…いえ、ローラン兄様だからこそ…ってローラン兄様にそんな度胸はないわね。


「知ってます。ローラン兄様は知っていたらペイル山脈の麓で石を持ち出す人がいないか目を光らせていそうですものね」


「ナ、ナディア〜」


 ガバリと私に抱きつこうとして青龍様に尻尾で叩かれた。全然学ばないのは相変わらずなのね…兄様




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