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流されて帝国  作者: ギョラニスト
201/205

201話


 私達はひたすら歩き続けた。何故なら肩にぷっぷちゃんを乗せた私と、頭に青龍様を乗せた殿下だけ辻馬車の乗車拒否をされたから。差別ってよろしくないわよね。


 いよいよ日も暮れてしまい、フーネリアの出入り口である大門が閉まっている事にも気づき、仕方ないので夜明けの開門までノアさんが見つけてくれた空き家で休憩する事にした。


 もう足がパンパンで限界だったので助かったわ。


 空き家に入ってしばらくするとノックと共にウィンディアさんがみんなを連れてきてくれた。


「エアリー!コニーさん!」


 私達はガシっと抱き合う。


「ナディア様!」


「ナディアちゃん!何もやらかしてない?」


「…大丈夫ですわ」


 コニーさん第一声がそれなの?


 それでも私は抱きしめあった後サックリとあの後何が起こったか説明をした。ドレナバルがどうなっているのか聞こうとした時、殿下から集合がかかってしまい仕方ないので皆んなの輪に加わる。


 ウィンディアさんが連れてきたのはエアリー、コニーさん、フレデリックさん、ショーンさんの4人。私達5人とローラン兄様、聖女アイリスと合わせて12人の大所帯になった。


「身体を休める前に確認したいんだが、聖女アイリスは何故ここにいるんだ?」


 殿下、もっともだわ。100歩譲ってローラン兄様はわかる。でも聖女アイリスは…


「えー、だって王子殴っちゃって一緒にはいられないじゃないですか。だったら同じ国出身のよしみで」


 同じ国出身のよしみとかどの口がいうのかしら?


「それはいずれシャナルに帰るつもりと言う事か?」


「もちろん。え?ダメですか?」


「俺はシャナルの人間ではないから何とも言えないが…ナディア、どうなんだ?」


「…どうでしょう。聖女であったならまだしも王族に手を上げたとなると投獄はまぬがれないかなぁと…」


 何となく濁してみたけれど、あの殴り音は平手ではなく間違いなく拳。平民ともなると投獄どころか処刑は免れないけれど、シャナルを出た私が言うのもおかしな話だし…


「え〜、そんな…一体どうしたら…」


「なればいいじゃん聖女に」


 兄様?


「これ、これ。この石を砕いて煎じたやつを飲んだ後、日の光を浴びると一定期間聖女になれるんだ」


 何ですって?それって…思わず殿下の方を見ると目が合った。頷き合い私は口を開いた


「ローラン兄様?そんな怪しい話と物を一体どこで?」


 そもそも誰よ。最初に石を砕いて煎じて飲んだのは


「ハハハ、怪しいって何だよ。ドレナバルの王都、って今は旧王都か…に入ってすぐに声かけられてさ。この石を運んでくれたら一儲けできるよっいわれて。見て!」


 鞄の奥から小袋を取り出し口を開けてみせた。


 キラキラキラキラ 


 中にはぎっしりの金貨


「いやぁ運が良かったよ。運ぶだけの仕事の前金でこんなに貰えるんだ。後半分は渡した後に貰える筈だったんだけど…」


 ただの石運んで、袋一杯の金貨貰えるのがおかしいってどうして思わないのかしら?何かとんでもない悪事に兄様は足を踏み入れているわよね。むしろ運悪くない?


 そして、その石が大量に聖女が発生した事に関係してるわよね?


「あのね兄様…そんな胡散臭い話信じる方がどうかしているわ。そもそも何故そんなにお金が必要なのですか?マイヤーズ家はそんなに貧乏ではないですよね?」


「えーナディアが出戻ってきた時シャナルには居づらいかなと思って。だったら僕も公爵家継がないし2人で旅人になるのもいいなぁって。ナディア小さい頃冒険家になりたいって言ってたし」


 …私の為?やってる事メチャクチャじゃない。領地と爵位もらってどこかの領主にだってなれるのに…嫌だ、泣きそう。


 でも、だからこそダメよ!このままじゃ兄様は碌でもない人生になってしまう。同時多発聖女の原因となる物を、あろう事か他国に運ぶだなんて


「あのね、兄様…」


ドンドンドン 


 ノック音と同時に扉が開かれ、入り口付近に座っていたフレデリックさんが吹き飛んだ。


 瞬時にノアさんが立ち上がり入り口へ、コニーさんは私の前に立ち塞がりエアリーは私に覆い被さる。


 一体誰!?何事!?今私が兄様を真人間にしようとしていたのに!!そしてフレデリックさんは無事!?


「こんな敵国で我が国の皇太子殿下とお会いするとは驚きですな」


 エアリーの隙間から覗くと見知らぬ人だけど、話振りからドレナバルのお偉いさんかしら?


「フン。元老院筆頭のグランゼン侯爵が敵国に来賓としている方が驚きだけどな。あと、後ろにいるエルザラン、いつの間に元老院と仲良しになったんだ?」


 殿下の声を遮る様に


「お、お祖父様ー!!」


 叫びながらショーンさんが前へ飛び出そうとした所殿下に止められた。


「ショーンその話しは後だ。エルザラン答えろ」


 殿下の冷たい声にシンと静まり返った部屋の中、まずエアリーが、そしてコンラッドさんやグランゼン侯爵が膝をつき震え出した。


 多分久しぶりにダダ漏れてしまったのね。


「殿下、お久しぶりでございます。まずはその魔力抑えてください。説明はしますから」


 元老院の人を抱えながら髭の長い老人が言った。


 あれが大魔法使いエルザラン師…ただならぬ空気の中、私に覆い被さり震えているエアリーを抱え、少しでも殿下から遠ざけようと部屋の隅に移動する。


 あら殿下から離れてしまったけれど青龍様大丈夫だったかしら?と思い出すと同時に殿下の頭に乗っていた青龍様が私の頭に移動してきた。


「やれやれ…とんでもない魔力の量じゃ。ぷっぷ大丈夫だったか?具合悪くなってないか?」


「ぷ」


 本当に勘弁してほしい。人の頭の上で何をイチャイチャと…


 結局元老院の人やエルザラン師始めお付きの人やら護衛の人までこの空き家に入り込み、部屋の中が一気に人で溢れ返った。外にも待機している人がいるらしく、羨ましい程人材がいるのがわかる。


 殿下、グランゼン侯爵、エルザラン師、そして私の4人が床に座り他の人達は壁際に立っている。


 私も立ちたい。何だったら別室でエアリーとコニーさんとお喋りしながら待っていたい。


 私必要ないわよね?と目と顔に念を込め殿下を見つめたらコクリと頷いた。


 あ〜も〜全然通じていない。


 誰かお前はよそ者だから出て行けとかと言ってくれないかしら?



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