200話
一体どうしたものやら…
私達は王宮の敷地内を出たものの、王都フーネリアの片隅で悩んでいる。
ローラン兄様や聖女アイリスが何故ここにいるのか問いただしたい。
でもね…
「内輪揉め?」
「修羅場?」
「あの、どっかの王子はいなくていいの?」
そう。私達の周りに人集りが出来てみんなが行く末をみているの。
「ディラン殿下いくら何でもここはマズイですよね」
「あぁ。ただ…」
2人して青龍様を見上げる。
どこかの宿なり食事処なり空き家なりに潜んで静かに話し合いがしたいのに青龍様の大きさがそれを許さない。
王都とは言え青龍様が通れる道がそもそも少なくて、さっさとこのフーネリアから立ち去りたいのにままならないのだ。
そして沢山の野次馬が私達の周りにいる。
「ノア、抜けれそうな道はあるか?」
「青龍様が通れる道は大通り一択だよ。もうとっとと進んだ方がいいって」
とっとと進む事には私も賛成だけれど、100歩譲ってローラン兄様はいい。でも聖女アイリスが一緒なのはおかしいでしょう?
じっとりとアイリスを見つめると
「アタシ行く所ないんですぅ。なのでよろしくお願いしますね」
全く意に介さずニコニコとアイリスが言う。
「仕方ない。とりあえずフーネリアから出よう」
えー連れていくの?と言う言葉を飲み込み大通りまで戻り、出立のパレードの様に両脇に沢山の人集りの中進んで行く。
きっとこの野次馬の中にはマッサーラの人や他国のスパイ的な人だっているのでしょう。私だって自国に他国の怪しい王族がお忍びで来ていたら見に行ってしまうもの。
暗殺の恐れがあるかも知れないとキョロキョロ警戒しながら歩く。まぁ青龍様がいらっしゃるから派手にドカンなんて事はないでしょうけど…
あら?あれは…
「で、殿下、あそこにいらっしゃるのは…」
周りに悟られないように唇もあまり動かさず小声で話しかける。
「あぁ。ウィンディアの他にフレデリック、あっちの物陰にはコニーとエアリーもいるぞ」
まぁ!コニーさんにエアリーも!?と言う事はウィンディアさんが応援を連れて来てくれたと言う事?
今すぐ駆け寄り抱きつきたいけれど、私達と仲間だと今バレてしまう訳にはいかない。とりあえず知らないフリをして歩くけれど俄かに希望が湧いて来た。
歩いてドレナバルまで行かずに済むのね!
あら?青龍様って空から飛んでいらしたわよね?
「せ、青龍様、もしかして私達を乗せて空を飛ぶなんて事は…」
ジロリと見下ろし
「出来ない事ある訳なかろう」
「ならば…!」
実はもう歩きたくない。走ったり逃げたりしたのでかなり疲れている。
「我の背中はぷっぷだけのものだ。お主らなど乗せる訳なかろう」
やっぱり…でもこのまま歩いてドレナバルまでなんて気が遠くなる。ウィンディアさんが連れて来た応援に馬車は含まれているのを信じてとにかく静々とフーネリアを抜ける事だけ考えてひたすら歩く。
『せめて今日中にフーネリアは出たいな』とは殿下のお言葉だけど、王都だけあって中々広い。
それでも日が傾く頃には野次馬も大分減り、街並みも家の間隔が広くなって来た様に思う。
「そろそろ一休みしたい所だが…青龍様は、こう…小さくなったりなんかは…」
珍しく殿下が言葉を選んで青龍様に話しかけた。まぁ女神様の使徒で神様に準ずる凄い方だから当然と言えば当然ね。
「できるぞ」
「えっ?」
今できると言った?
「我に出来ぬ事はない」
「なら何故…」
やらないのよ!?と言う言葉は飲み込んだ。だって凄い方だし
「誰もそうしてくれとは言わなかったからな」
何よ!青龍様小さくなってくれたらこんな見せ物みたいに歩かないで済んだのに。乗り合い馬車に乗れたかもしれないではないの!
久しぶりにイラッとしてしまったのは疲れているからだわ。
「まぁどうしてもと言うのであればなってやろう」
言うなりシュルルルと小さくなり私の頭の上に乗った。
え?
「ちょ、ちょっと青龍様!?」
「なんじゃ」
「何故私の頭の上に…」
「ぷっぷの近くにいたいのだから当たり前であろう。お前の首に負担がかからない様重さも感じない筈だが」
そうね。重さは全く感じないわ。ってそうゆう事ではなくて…何とか私の頭の上から降りてもらおうとしたら
「ぷっぷっぷ」
と鳴きながらぷっぷちゃんが抱っこ状態から抜け出し私の肩に、いつもの定位置に登り2人して
「グルルルル」
「ぷっぷぷっ」
会話までし始めた。
待って待って待って!
私の身体で寛ぐのもイチャつくのも辞めてほしい!誰か助けてくれないかしら?とバッと周りを見回したらみんな私から距離を取り顔を引き攣らせている。これが所謂ドン引き?酷い!
そんな中、唯一殿下が
「青龍様、それだと私の婚約者が、その…愉快な感じになってしまうので宜しかったら私の身体に…」
まぁ、殿下!私を庇って…しかも自分の事を俺ではなく私と称して青龍様に敬意まで示して。感動したわ!見直したわ!愉快は余計だけど
「我の番を他の男の肩になぞ乗せる訳なかろう」
「私の婚約者の頭に他の男が乗っているのも不愉快ですが」
あら?どちらも譲らず睨み合いまでいかない、一歩手前の不穏な空気になってしまった?
「あの、でしたら青龍様は殿下の頭に、ぷっぷ様はナディア様の肩に乗り、殿下とナディア様がくっついて歩けばよろしいのでは?」
コーデリアさんがにこやかに言った
「ほう」
「ぷ」
「ちょっとコーデリアさん何を言っているのです!?普通に青龍様が歩いてそこにぷっぷちゃんが乗れば良いではないですか!」
「え?だってWデートの様じゃないですか。憧れの的じゃないの」
どこに憧れが!?そんな事になったら愉快さが増すだけでしょう!?