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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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19話

別行動になったエアリーとグレタのお話です。


「私達あの後殿下に言われた通り防護魔法をかけて馬車で待機していたのです」


グレタが言った。




あの後防護魔法を自分にかけた2人は馬車で待っていると馬車がいきなり動き出したそうだ。


誰が動かしているのかわからないから、下手に馬車から出る事も出来ずひたすら待っていると馬車は急停止し外で剣のぶつかる音がし始めた。


「ここにいて大丈夫ですかね?」


グレタがエアリーに囁く。


「今はいるしかないわ。誰と誰が戦っているのか暗くてわからないもの」


エアリーは馬車にかかっているカーテンの隙間を覗きながら言う。


しばらくすると扉をノックする音がしたが2人共怖くて返事ができない。


「私です。ラッサです」


「「ラッサ大尉!」」


慌てて扉を開けるとラッサ大尉が顔をのぞかせ


「あぁ、お2人共無事で良かった。お怪我等されていませんか?」


「大丈夫です。それよりナディア様は⁈」


エアリーが尋ねると


「ナディア様は殿下が一緒だから大丈夫だろう。それより遅くなってすまなかった」


「いいえ。私共は大丈夫ですから。ラッサ大尉もお怪我等されていませんか?」


「いや私は大丈夫だが、そちらの侍女殿の方が…」


エアリーが振り返るとグレタは蹲って震えていた


「グレタ!大丈夫⁈」


「だ、大丈夫です。ただ、安心したらふ、震えが…」


「無理もない。安心なさってください。今我が隊の者達がこちらに向かっております」


「ラッサ隊の方もご無事で?」


「大分散り散りにはなっていますが、大丈夫。私はヤワな鍛え方なんてしませんので」


 ラッサ大尉のほんの少し黒い微笑みを見てエアリーもやっと肩の力を抜く事ができた。


 馬車を降りると縄でグルグル巻きのフォリッチの制服を着た者達が至る所で転がっていた。


 ラッサ大尉を先頭に兵士4人とエアリー、グレタその後ろにラッサ隊の兵士が御者台に乗って棺桶馬車をひいていた。


 しばらく歩いていると別の兵士が1人駆け寄ってきて、

何やら真剣な顔で話す様子に2人は再び不安な気持ちになってくる。


暫くして2人の元にラッサ大尉がやって来た


「すみませんお待たせして。王宮からの別部隊ともう少しで合流できそうなのですが、ちょっと問題が発生して」


「問題…ですか?」


エアリーが問いかけると


「ええ。どうやら別部隊内部でいざこざがあった様でして。合流した後万が一があるといけませんので、この馬車で暫く待っていてもらえませんか?」


「わかりました。グレタ行きましょう」


「ええ」


馬車に戻ると丁度馬が外されている時だった。

馬車は当分は動かさないと言う事だろう。


2人は馬車に乗り込むと


「念の為兵士を1人残していきます。何かあればこのフレデリックに。フレデリック2人を頼んだぞ」


前半は2人に、後半はフレデリックに言った。


「拝命しましたフレデリックです。よろしくお願いします。」


真面目そうな若い青年だ。


「フレデリックさん、よろしくお願い致します。ラッサ大尉もお気をつけて」


鍵をしっかりとかけ寝台に腰掛けると


「ナディア様ご無事ですかね」


グレタが心配気に問いかける


「殿下も一緒だとおっしゃっていたから…」


「でも殿下、ナディア様の事何もご存じないですよ」


「…本当だわ。急に心配になってきたわね」


 心配ではあっても何もできない事に2人共もどかしさを感じる。


 どのくらいの時間が過ぎたのか、日は傾き始め夜の気配が漂う頃御者台の窓が開けられた


「どこからか喧騒が聞こえています。馬を繋ぐため少し席を外しますので鍵の確認をもう一度お願いします」


そう言ってフレデリックはいなくなってしまった。


鍵の確認も既に3回はしている。


何もできずただじっとしている時間がとても長く感じられた。


ドンッと馬車が揺れる程の爆発音がした。


2人は自分に防護魔法をかけ、座りながらお互いを抱きしめ合う。


「おい!その馬車明け渡せ!乗っているのはディラン殿下の新しい婚約者じゃないのか?」


「違いますよ。ご婚約様はここにはいません」


「なら誰が乗ってるんだ?殿下…は無いな。いたら俺たち一発で気絶だ。おい。開けて見せてみろ」


「お断りします。ラッサ大尉に馬車に誰も近づけない様言われているので」


「なら力ずくだな。おい!やるぞ」


エアリーとグレタは震え上がった。

声の様子から1人対複数なのが伺える。


ぶつかる剣の音が激しさを増した時


「なぁにしてるのさ!仲間同士で何斬り合ってんだよ」


女性の声?一瞬剣の音が止まった。


「げ、アイラ」


「なんだ。フレデリックじゃん。何?こいつら敵?」


「わからん!でも加勢しろ」


「あぁ?後で白猫の尻尾亭で奢りね!っと」


再び剣のぶつかる音と今度は「ウガッ」とか「やめてくれ」とか人の叫び声がした後静寂が訪れた。


コンコンコン。


ノックの音が響きエアリーとグレタは抱きしめ合い固まっていると


「僕です。フレデリックです」


エアリーはガクガクする足を奮い立たせ扉の鍵をあけると


!!


「フ、フレデリックさん!ち、ち、血が」


「あぁ。ちょっと掠っただけです。おでこって傷の割に出血が多いだけなので心配いりません」


エアリーがあわあわしていると、後ろからグレタがやってきて


「ちょ、ちょっと失礼します」


とおでこに手を当てるとみるみる傷がふさがる。


「おぉ、癒しの魔法の使い手でしたか。ありがとうございます」


「軽症ならです。酷いと治せません」


「へぇ。癒しの使い手はコニーしか会った事ないよ」


ヒョイと赤毛の女性が顔を出した。


「あ、あのっ」


 見知らぬ人の登場に今度はグレタがあわあわしているとエアリーが


「助けて頂きありがとうございました」


2人でペコリと頭を下げる。


「別にいいよ礼とか。それより色々おかしな事になってそうだよ。どうすんの?フレデリック」


「それはこっちが聞きたいよ。


ラッサ大尉も後から来る大隊がおかしいって言ってたけど、なんでドレナバルの制服着たヤツが襲ってくるんだよ。お前あの大隊にいたんだろう?」


「私だっていきなり呼び出しが来て、行ってみたらいつもと全然違う隊にぶち込まれた挙句コニーとも別々にされたんだから」


「で、その隊から抜け出してきたのか?」


「失礼な。同じ隊内なのに全然知らない顔がいてさ、仲良くなろうと膝カックンしたブチ切れられて魔法ぶっ放してきたから…」


「…きたから?」


「…やり返して出てきた」


「またかよ⁈」


「アタシ悪くないし」


「はいはいはい。まぁアイラだからって事でまたかで済むよ。隊に早い所戻った方がいいって」


「いや、あの大隊自体、変だった」


「…どんな風に…ってラッサ大尉もそう言ってたな。ここはひとまず馬を繋いで準備だけしとこう」


フレデリックは基本アイラの言う事は全く信用していない。


「アタシも行くよ」


「いや、アイラは2人の側にいて。馬が怯えるから」


「何だと!って行っちゃったか」


フレデリックとアイラの怒涛のやり取りを呆然と見ていた2人に


「アタシアイラって言うの。よろしく」


と言ってニカッと笑った。



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