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流されて帝国  作者: ギョラニスト
199/205

199話


「違う!追い出したりしない!」


「ナディア!一緒にシャナルに帰ろう!」


「おい!いい加減にしろ!」


 嫌々近寄ったら殿下とマーシャル殿下が何やら言い争いをしている。どうも私の今後の話しらしい。


 何故私のいない所で勝手に…しなくていい大事な話は私の前でするくせに。


 途中からしか聞いていないけれど、あまり人とコミュニケーションを取れないで過ごしていたディラン殿下は完全に負けている


「ナディア、お前だってシャナルで暮らしたいだろう?」


 先に口を開いたのはマーシャル殿下


「いいえ。暮らしたくありません。と言うか何故私のいない所で私の処遇を決めようと?あと、呼び捨てはおやめください」


「あ、ゴメン。でもナディア…嬢が再びシャナルに戻ってもう一度婚約を結び直せば…」


「バカな事仰らないで下さい。何故私がシャナルに戻るなんて話になっているのですか?」


「当たり前じゃないか!ドレナバルの皇太子の元に嫁に行った筈のナディアが、こんな北の大地で罪人になってるなんて!」


 この花畑王子はいきなり地雷を踏み潰した。


「ドレナバルの皇太子?」

「…その婚約者?」


 どよめきが細波のように周りに広がっていく。


 何て事を大声で…


「今の話は本当か?」


 いつの間にか再び近くにいたマッサーラの陛下とオーナー将軍。ピリピリとした空気を纏っているわ。


「一体何をしにこの国へ?」


 警戒心満載でオーナー将軍が尋ねてきた。


 殿下と目が合ったけれどお互い良い言い訳が見つからない。


 と言うかぷっぷちゃんに飛ばされました。と言った方が良いのかしら?答えに詰まっていると


「この宮殿に来る為に犯罪者になりすましたと言う事か?」


「「まさか!」」


 殿下と声を合わせて否定したけれど、半分当たっている。ただ誰がスパイなのか確認をしたかっただけなんて言い訳通用しないわよね?


「敵国の本拠地まで来てどのような申し訳が立つと?」


 ジリジリと兵士を伴い近寄ってくる。


 どうしましょう…答えに窮しているとディラン殿下が


「ナディアが言っていたんだ…」


 殿下!?私のせいになさるおつもり!?


「ぷっぷがここ、フーネリアに来たがっている気がすると。褒められた事ではないが、犯罪者になってここまできた」


 何て正々堂々と大嘘を…


 そんな言い分に納得できる訳がない。いくら何でもぷっぷちゃんを引き合いに出すなんて…


 沈黙が痛くて背中に嫌な汗が流れてきた


「きっとぷっぷはここに来れば番に会えるとわかっていたに違いない」


 ドシン 


 青龍様の尻尾が振り下ろされた。キャーぷっぷちゃんを巻き込むから怒ってしまったじゃない!


 ドシンドシンドシン 


 尻尾はさらに振り下ろされ


「それは本当か?」


 ……怒ってない?青龍様に戸惑いが見える


「あ、あぁ…本当だ。なぁナディア」


 ヒィ!こちらに話しを振らないで!


「あ、あの…直接言われた訳ではないのですが、なんとなぁくですけど、ぷっぷちゃんがそう思ってるのではないかなぁと思いまして…」


 濁しに濁して答えてみる。


「そ、そうか…言葉は通じなくともお前達にはその様な絆があるのだな…」


 ドシンドシンドシン 


 待って。この尻尾の振りは怒っているのではなく、照れている?青龍様が?よくみると青龍様の目元が赤い様な気もする。


 マッサーラの陛下やオーナー将軍は青龍様が話しに加わった事で私達への疑念を口にする事ができなくなった。


 これはチャンスではなくて?殿下と目を合わせて頷き合う


「当初の目的は達成されたので我々はこれで失礼しよう」


「ええ、ディラン殿下」


 差し出された手を取り歩き出す。色々と聞きたい事も知りたい事も全部後回しにしてさっさとここを立ち去るのが一番だわ。


「ま、待ってくれ、ナディア!まだ話しは終わってはいない!」


 マーシャル殿下しつこい!私達は早くこから逃げたいの!


「シャナルを去る時に、もう話しは終わったではないですか。例えドレナバルを追い出される事があったとしてもシャナルに戻る気はございません」


「追い出したりしない!」


 ディラン殿下はちょっと黙っていてほしい。


 それよりマーシャル殿下にちゃんと言えたわ。シャナルを出た時点でマーシャル殿下と私にはもう一切繋がりはない。遠い親戚ではあるけれど


「そうか!アイリスがいるからか?わかったアイリスは元の所に戻すぞ!」


 はい?何を最低な事を…


 バコッ 


 ありえない音がマーシャル殿下からしたと思ったら


「最っ底な男ね。アンタなんかこっちからゴメンよ」


「なっ、な、にを」


 頬を押さえ地面に倒れ込むマーシャル殿下と肩で息をするアイリス。


 いや流石にマズイでしょう。一国の王子殴ってしまっては


「な、な、何するんだ!ぼ、僕は…」 


「うるさい!王子だからって何言ってもいいと思ってんの!?人の事何だと思ってんのよ!」


「ぷーぷぷっぷ」


!?ぷっぷちゃん!?ここで鳴いたら…


 グルルルル


 青龍様!?


「そうか…ぷっぷもこの男が悪いと思っておるのだな。よし!そんな輩がいる国は我が滅ぼしてやろう」


何ですって!?


「青龍様っ!違います!」


 イヤー!咄嗟に口から出てしまった


「何だ?どうゆう事だ?」


「あ、あの男は腹が立つけれどもっ!殴ってしまいたいと思っても!ぷっぷちゃんは国を滅ぼす事は望んでいません!」


「…何故わかる」


 青龍様の空気が変わった


「そ、それが乙女心なのですっ!」


「お、乙女…心…?」


 ヒィィ…私!頑張るのよ!


「はい。乙女心です。国ごと滅ぼすなんてぷっぷちゃんの乙女心に反する行為です」


「そう…なのか?ぷっぷ」


「ぷ」


 なんて返したの?ぷっぷちゃん…お願い!シャナルには私の家族もいるのよ


「そうか。あい、わかった。我もまだまだだな。ナディアよ、感謝する」


 う、上手く誤魔化せた?青龍様はもうシャナルを滅ぼさない?


 マーシャル殿下は地面でアウアウ何か言いかけているけれど、無視して歩きだした。一刻も早くここを立ち去らなければ、誰がどんなバカな言葉を吐くかわからない。


 今なら青龍様の国を滅ぼしてやろう宣言が功をなして誰も私達を責める事も止める事もできない。


 私達の後ろに青龍様がいるからなのか、人々が道を空けてくれる。走り出したいのを我慢して一歩ずつ進むとコーデリアさんコンラッドさん親子が、多分どこかに潜んでいるノアさんもついてきてるはず。


 長いような短いような道のりを歩き続け王宮の正門を潜る時、流石に緊張したけれど無事通る事ができた。


 振り返らず油断せず無言で更に進み、途中から私達は一気に走り出し王都の片隅にやってきた。


 ゼーゼーゼー息が苦しい。


「大丈夫か?抱えれば良かったか?」


「ゼーゼー…大丈夫、です。皆んなは?」


「あぁ、後ろから着いて…」


 殿下?何故黙ってしまったの?殿下の目線の先を追うと


「ローラン兄様!?聖女アイリス!?」




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