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流されて帝国  作者: ギョラニスト
190/205

190話


 こうなったら本当に1人で逃げ出してしまおうかしら?でもどうやって?そして1人でドレナバルに帰れる気もしない。


しかも誰が来ているのか気になる。


 シャナルの陛下達なのか、まさかマーシャル殿下なんて事は…


 くぅ…今こそぷっぷちゃんに飛ばしてもらいたいのにぷっぷちゃんは相変わらず夢の中。


 夜になったら馬車を止め仮眠くらい取るわよね。チャンスがあるとすればそこしかない。


 要所要所で休憩が入る以外、ずっと馬を替えながら走り続けている。食事はパンを一つ手渡されるだけでスープすらない。


 辺りが暗くなった頃漸く馬車は完全に止まり、回りがざわつきだした。野営の準備かしら?


「お前ら、馬車から一旦降りろ!」


 私達は兵士に促され馬車を降りる。護送馬車以外に荷馬車が一台、兵士は全員で10人程かしら?やはり野営の準備をしているようだわ。


 殿下やコンラッドさんはトイレ行ってくると言って兵士に連れていかれた。


「そんな逃げる気満々でいると、トイレにも行かせてもらえなくなりますよ」


 ギョっとして振り返ると、コーデリアさんが澄ました顔でそう言った。何故わかったの?


「そんな鋭い目をしていてはいけません。今にも何かしでかしそうな緊張感がみなぎってます」


 何て事。逃げる気が溢れていたらしい。


「コホン。そんな気は全く…」


「フフフ、気持ちは分かるけれどここはやめた方がが良いわよ。魔物はあまりいないけれど、普通に獣はいるのだから」


 そうよね。寒いからと言って全ての獣が冬眠する訳ではないものね。これは益々1人で逃げてはいけない。多分私は真っ先に死んでしまう。


 やはり殿下にもう一度一緒に逃げる事を提案した方がいいかしら?と言うより一緒に逃げてほしい。


 娼館の姉さんが殿方にお願いする時は、胸元や太ももをチラリと見せると聞いてもらえるとか何とか言っていたわ。


 胸元にはぷっぷちゃんがいるから、スカートを太ももまで捲り上げれば良いのかしら?そんな策略を練っている間に私達は再び牢屋馬車に戻された。


「なぁナディア、本当に逃げたいか?」


「…もちろん」


 今太ももを出したら聞いてくれるかしら?


「ノアから娼館行った後フーネリアに行ってくると連絡があったんだが」


 いつその様な連絡を!?と言うか連絡を取り合えるなら今すぐ助けを呼べばいいのに。


「フーネリアで誰が来ているかを見てから助けてもらうって手もあると思わないか?」


 殿下は多分どうしても誰が来ているのか確認したいのね。そして私は今すぐ逃げ出したい。


 これは折衝案かしら?


「それって絶対ではないですよね?ノアさんが途中で捕まって私達同様牢に入れられる可能性だってあるし、私達の方が先に着いてって可能性だって…」


「そしたら俺がぶっ放して逃げればいい」


 そう言って両手の平を私に見せてきた。手首から先が腫れている様な?え?


「ディラン殿下、まさか魔力が?」


「まだ安定していないが、何故かマッサーラに来てから身体に溜まっていく感覚が増しているんだ。」


 ニヤリと殿下は言うけれど、あの陛下の演説と私達の紹介をされた時の惨劇が思い出された。


 客人が集まっている他国でアレが発動したら即刻で戦が始まってしまう。他国の要人に何かあったらその国も敵にまわって…


 いくらドレナバル人が魔力を持っていたとしても大陸中が敵になったら勝ち目なんかない。


「コントロールできないんですよね?」


「強い味方がいるじゃないか」


「はい?」


 誰の事?コンラッドさん?


「コントロールしきれない程溢れたらぷっぷに吸わせればいい」


「そんな事にぷっぷちゃんを使わないでください!」


 ぷっぷちゃんはいつも嫌がっていたじゃない!ただでさえ弱って眠り続けているぷっぷちゃんに!


「でもナディア、お前だって気になるだろ?誰が来ているのか。それにノアには捕まってフーネリアに向かっていると連絡してしまった」


 !?始めから私の意見なんて聞く気なかったと言う事!?


「一体いつその様な連絡を!?」


「休憩してトイレに行った時だな。コンラッドが兵士を引きつけている間に、鳥に手紙を託した」


 何をシレっと!


 私達はとりあえずフーネリアに向かう事となった。決して殿下に言いくるめられた訳ではない。


 仕方なく、どうしようもなく行く事にしたのよ。


 ただ、ほんの少しだけ誰が来ているのか気になってはいるのも本当だ。


 陛下やマティーニ王妃であったら、あの餞別の宝石は何なのか…まぁ会って話しができるとも思っていないけれど、せめて私は元気だと家族に伝言してもらえれば…


 夜明けと共に再び馬車は走り出し日が暮れる前にフーネリアの留置所に場所は移された。


本当に良かったのかしら?見間違いでなければこの留置所の四角に魔封じがなされている。


「殿下?本当に大丈夫ですよね?ノアさんはいついらっしゃるのでしょう」


「ん〜夜明けまでには嗅ぎつけるだろう。捕まってなければ」


「連絡は取れているのですよね?ノアさんは何て?」


「あれから鳥が来てないからな…」


 ダラリとくつろぐ殿下。何故こんな所で後ろ手を縛られているのにあくびまでしているのか…


「あのですね、私は…」


 ガチャ 


 誰か来た!口をつぐみ扉を見ると娼館のオーナー将軍。


「喜べ。明日朝一番に裁判が行われ、昼過ぎには判決が出るそうだ。陛下直々に沙汰を下されるらしい。お前らの様なチンケな詐欺師にもきちんと裁判が行われるマッサーラを讃えながら眠るといい」


 そんな捨て台詞を吐いてオーナー将軍は去って行った。


 そんな…見せしめの様な裁判が公平に行われるとは思えない。私は母国の人の前で無様な死に方をするの?絶望感に打ちひしがれながら殿下を見ると、極悪な笑顔で扉を見ていた。


 …周りを見るとニコニコしたコーデリアさんと、殿下に負けないくらいの笑顔でコンラッドさんも。


 頭がおかしくなったのかしら?それともヤケクソ?




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