189話
不本意ついでにもう一つ言わせてもらえば何故か私達は馬車に揺られている。
もちろん鉄格子付きで私は以外手や足腰紐つきで。私はきっともうすぐ生まれる頃だと既婚者兵士が言ったので手だけ繋がれている。
何故揺られているかと言うと、あの我慢に我慢を重ねた後
「何故先程はナディア嬢だと嘘をついた?」
何て言い訳をすれば辻褄が合うかしら?
「心配だったのよね?ナチョスちゃんが。双子の片方が娼館に売られ、そこを逃げ出す程の所に連れ戻されない為の嘘だったのよね?」
コーデリアさん!上手く誤魔化してくれた!
私は首が千切れる程縦に振り肯定する。
「ふん…嘘くさいがまぁ良いだろう。これから将軍様が直々に取り調べてくれるだろうから」
嘘!正義感の塊のオーナー!?その場で処刑されてしまう!焦っているとそこに
「どうだ?ナチョスはいたか?」
スラリと、でも程よく筋肉のある男性が入り込んできた。
カッコいい…ステキ
「かっ、閣下!このような所までお越しいただかなくても我々がちゃんと連行しますよ。」
「気にするな。このまま陛下の元に連れて行き手土産にしよう」
え?閣下?陛下?黙って見上げていると
「ナチョス嬢が見つからない今、人身売買及び転売についてはこやつらに聞くしかないから。陛下は沢山の客人の前で寛大な沙汰を下すか、はたまたその場で首を落とすか…私はとしてはいますぐ首を落としたいんだが」
イヤーー!娼館のオーナー将軍じゃなくて!?裁判とかないの!?おかしくない!?正義感の塊ってこうゆう事!?
密かにパニックになっていると
「男2人と聞いていたが、この女達は何だ?」
「ハッ!同室におりましたので仲間の可能性を考え連行しようとしていた所です!」
「ふむ…年寄りと妊婦か…」
「そこの妊婦はこの男の嫁でナチョス嬢の双子の姉妹だそうです」
「双子?」
チラリと、でも何か探るように私を見るオーナー将軍。怖い…
「まぁいい。連れて行け」
そんな一言で私達はマッサーラの王都フーネリアに連行される事になった。よりによってマッサーラの王都…私の命はここまでかもしれない。
最後に家族には会いたかったなぁと黄昏ていたら
「殿下、何だかんだ上手くフーネリア行けそうですね。もしかしてコレも作戦ですか?」
はい?小声で殿下に話すコンラッドさんに割り込んだ
「作戦?どうゆう事ですか?」
全く理解も納得もできない!
「いや、フーネリアに行きたいのは事実だがまさかこんな形だとは全く想定外だ」
想定外!?
「シーッ!殿下声でかいですって」
コンラッドさんが窘めると同時に
「お前らやかましいぞっ!」
馬車の外から怒鳴り声が響いた。少しの間沈黙してから
「一体どうなっているのですか?逃げ出す算段とかついているのですよね?」
すがるように、と言うより正に縋り付き殿下に聞くと
「算段は…特にない」
気が遠くなってきた…
「さっさとドレナバルに帰るのではなかったのですか?」
「そりゃ最初は戻るつもりだったが、お前も聞いただろ?各国の要人がフーネリアに集まってきていると」
「ええ、まぁ…はい」
言ってはいたけれど、まさか誰かが来ているのかチェックしたいのかしら?
「この国は元々他国とそんなに交流はないんだ。あるのは敵か属国、もしくは無関係な国。それが何故今各国の要人が続々となんて何かウラしかないだろ?聖獣が現れたとも言っているみたいだし」
そうだけど、そうなのだけれど今はドレナバルに一度帰ってからの方が色々と良い気がするのよ。
「各国の要人の中にアリアステとシャナルの王族だぞ。今までマッサーラと話した事もないような国だ。どうせマッサーラにいるのならば、ついでに探るしかないだろ」
殿下の言いたい事は分かる。私だってシャナルの王族は誰が来ているのか気になるもの。
…あら?もしこのままフーネリアに到着したとして、マッサーラの陛下が死刑を言い渡したら私はシャナルの王族の前で殺される?
…絶っ対に嫌だわ。
シャナルの王族なら私の顔を知っている。ただでさえ可哀想な公爵令嬢みたいな感じでシャナルを出たのに、嫁に行って僅か3ヶ月で立派な妊婦になり、全く別の国で処刑されていたなんて噂がたつなんて。
冗談ではない!
こんな死に方間違いなく私は神の御許で安らかに眠れない!むしろ化けて出る事間違いなしよ。
「殿下!探りたい気持ちはよぅくわかります!ですが、マッサーラの陛下がその場で処刑を言い渡したら私達に逃げ場はないですよ?客人として沢山の人達が見ている中一体どうなさるおつもりですか?」
こんな事に付き合っていられない。私は1人でだって逃げ出す気持ちになってきた。
「まぁ何とかなるだろう」
何を悠長な!
「逃げましょう殿下。魔封じもされていないのだから、逃げるなら今です!」
「ナディア、お前気にならないのか?シャナルの王族」
「気になります。でもそれとこれでは話は別です。私は私はを知る母国の人の前で殺されるなんて真っ平ごめんです。私は1人でも逃げます!」
どう?殿下。私だって言う時は言うのです
「え?お前が1人で?いや…それはちょっと…」
何故か殿下が俯き肩を震わせ始めた。ふとコンラッドさん達を見ると2人も同じような反応…笑っている?
「ちょ、何故笑うのですか?」
何この人達!私の事バカにしているのではなくて!?
「い、いや…何て言うか、迷子になってこんな状況作り出した本人が…ふ、再び迷子の道に自ら進もうとするなん…て」
堪えきれずにと言わんばかりの爆笑する声が3人から響きだした
「ふざけんな!楽しそうにくっちゃべってんじゃねぇぞ」
再びの怒鳴り声に皆一斉に黙るけれど、3人は相変わらず肩を震わせている。
信じられない…この状況で笑うなんて!しかも全て私のせいなの!?
「確かに迷子にさえならなければこんな事態にはならなかったけれど、そもそもぷっぷちゃんが死にそうだったのだから仕方ないじゃないですか?バレてしまったらもっと事は深刻だったはずです。私はそれを防いだ功労者じゃないですか!?」
ブ、ブフフ…また3人して笑いを堪えて。
腹が立つ!!!