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流されて帝国  作者: ギョラニスト
187/206

187話


 土に埋もれ息苦しさで目が覚めた。


 いつの間にか眠っていたようだわ。それにしてもとても苦しい…


 土をかけ過ぎた?そのおかげなのか身体は温かい。けど息苦しさがどんどん増していく。


パツン 


 あら?急に楽になった…ぷっぷちゃんはどうしたかしら?ぷっぷちゃんも一緒に苦しかった筈よね。寝ぼけながら土を掻き分け胸元に手をやると……


「ぷっぷちゃん?」


 いつもの感触ではない。ぽっちゃりした身体も短い手足も


「ぷっぷちゃん!?」


 土を掻き分け起き上がるとはだけてボタンの飛び散った服が目に入った。


 外套のボタンはキッチリ閉めた覚えがある。中の服も第ニボタンまで外しぷっぷちゃんが息をし易いようにした筈なのに全て外れ私の肌着まで丸見えなのにぷっぷちゃんがいない。


 まさか、あんなに具合悪そうなぷっぷちゃんがどこに行ってしまうとは考えられない。


 胸元に目をやると黒い…何かしら?私の肌着と服の間にそれはあった。ズルリ 先を摘み引っ張ってみたら…


「あぁ、まさか…」


 ぷっぷちゃんくらいの大きさの黒い布から更にはみ出したソレは見間違う筈もない、紛れもなくぷっぷちゃんの足の形をしている。


 嘘でしょう!?昨晩苦しんでいたぷっぷちゃん、一晩経過し…爆発したの?萎んだの!?何故!?どうして!?


 最初はよく分からなかったけれど、最近では意思疎通も図れるようになってきたのに。てっきり卵を産むため苦しんでいたと思っていたのに、まさか破裂してしまうなんて…


「ウッ…ウゥッ」


 涙がボロボロと溢れだす。何故こんな事に


「…ディア」


「ウウウッ」


「ナディア!」


 この声は…太陽を背にしてシルエットしかわからないけれど


「ヒック…ヒック…ディ、ラン殿下?」


「ナディア!無事だったか!」


 間違いない。殿下だわ。


「ウッ…ヴェェェ」


 たまらずしがみついた。どうしましょう、ぷっぷちゃんが…と言う言葉は全て嗚咽に変わって言葉が出てこない。


 殿下は抱きしめた後何か言っていたけれど、私はそれどころではない。


 無理矢理私を引き剥がしマジマジと見た後ショックを受けた様に愕然としている。


「…何かあったのか?」


 殿下!気がついて。ぷっぷちゃんが…


「だ、大丈夫だ。大丈夫だから…」


 そう言って再び抱きしめてきた。


 何一つ大丈夫じゃないわ。ぷっぷちゃんが破裂して、もしくは萎んでしまったのに。


 その後も私と殿下は会話になっているのかいないのか、相変わらず察してくれない殿下は誰かに襲われたと思っているよう。


「とりあえずここを出て宿屋へ行こう。そこで落ち着いてゆっくり話をしよう」


 そう言われて頷いた。ぷっぷちゃんの亡骸をそっと胸元に抱くと殿下が自分の着ていた外套を私にかけてくれた


「あ〜…目のやり場に困るから。これ羽織っておけば暖かいし」


「…ありがとうございま、す?」


 自分の格好を改めて自覚し、再び心臓が止まりそうになった。


 あわわわわ…私ったら何という格好を!だから殿下は誰かに襲われたと思っていたのね


「違うのです!む、胸元に入れたぷっぷちゃんが破裂してこんな事になっているだけでっ」


「破裂?」


 すっかり泣き止んだ私は事の経緯を説明すると


「はぁ〜〜〜」


 殿下が特大なため息をついた。


 お、怒っているかしら?それはそうよね。迷子になった挙句、聖獣の卵を産むかもしれないぷっぷちゃんを破裂させてしまったのだもの…反省の意を込めて俯いていると


「まぁ、ぷっぷの事は仕方ない。あまり気にするな」


 頭を撫でながら殿下が言った。あら?


「怒っていないのですか?」


「何故怒る?お前の無事の方が大事だろ」


「ぷっぷちゃんは聖獣の卵を産むかもしれない存在ですよ?聖獣がいたら国は繁栄を約束されていて…」


「お前は俺が聖獣の力が無いと国を繁栄させる事ができないとでも思っているのか?」


「!!いえ、そんなつもりでは…」


 思っていたわ。殿下は悪い人ではないけれど、魔力も沢山あるけれど、政をすると言う意味では色々と足りないと思っていたし、殿下もそう感じていると思っていたわ。


 なんて失礼な考えをしていたのだろう


「俺は政に関しては経験も知識も足りない。が、俺の周りにはセラやラッサがいる。リシャールも馬車馬の様に働いてくれる。貴族社会に関してはナディア、お前が助けてくれるだろ」


 他力本願!今凄く見直したのに。しかも私の嫁が決定している!


「あのですね、殿下の…」


「ぷ」


!?


 洞穴の入り口付近から今確かにぷっぷちゃんの声が聞こえた。


 殿下と顔を見合わせ走る。入り口の外からこちらを見ているあの瞳…


「ぷっぷちゃ…ん?」


「ぷっぷ」


 これは………ぷっぷちゃんかしら?


「ぷ〜」


 ダッダッダッ 


 駆け寄ってくるぷっぷちゃんはなんだかとても大きくて…


 ビョンと飛んで私の元に


「ふがっ!?」


「ナディア!?」


 突進されそのまま後ろに吹き飛ばされた。


 …いた…くない?そっと目を開くと殿下が横にいて私の頭を抱えるように倒れこんでいた。


「殿下!?ディラン殿下!?」


「っつ…ぃってぇ…」


「だ、大丈夫ですか!?」


「あぁ、問題ない。が…」


 殿下が目を細め何かを見ている。私も殿下の目線の先をみると


「ぷぷっ」


 …ぷっぷちゃん、なのかしら?明らかに大きさが違う


「お前ぷっぷか?」


「ぷぷっ」


 殿下と会話するぷっぷちゃんをじっと見つめる。大きさもだけど何かが違う様な…


!!


「ぷっぷちゃん!羽がっ、増えた?」


「ぷぷっ」


「まて、ナディア、何かツノらしきモノが生えてるぞ」


 本当だわ。小さいけれど額からポコッと…


「あなた本当にぷっぷちゃんなの?」


 つぶらな目、鳴き声はぷっぷちゃんだけど…


「ぷっ!」


 言うなりぷっぷちゃんが私の肩に乗っかって尻尾を私の首に巻きつけていた。相変わらず重さは感じないけれど、間違いなくぷっぷちゃんだわ!


「ぷっぷちゃん…生きていたのね!」


 良かった。本当に良かった…ぷっぷちゃんを抱きしめて再び泣き始めると


「そろそろ戻ろう。皆心配している筈だから」


そうね。いつまでも泣いている場合ではない。


 私は立ち上がり殿下と洞穴を出た




すみません

来週お休みするかもです。

よろしくお願いしますm(_ _)m

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