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流されて帝国  作者: ギョラニスト
186/205

186話


 あの時うっかり頷いた自分を殴りたい。


 あのナディアが2〜3日大人しくしていると何故思ったのか…


「で?攫われたのか?」


「あ〜…風呂入りに行った帰りにいなくなっちまったらしい。」


 ノアがヘラヘラしながら言う。


 ナディアが、俺達がここにいる事を知る人はほぼいない。となると自主的にいなくなったか、考えたくないが道に迷ったか、もしくはぷっぷが飛ばしたか…


「ウィンディア殿、頼みがあるんだが」


「何じゃ」


 町の外れにある魔道具工房にて無事頭の輪っかを外したウィンディアを呼ぶ。魔力を取り戻し若返ったウィンディアは面倒臭そうにこちらにやってきた。


「1人ならドレナバルまで帰れるか?」


「できなくは無いが高くつくよ」


「相変わらず強欲だな。わかった無事戻る事ができたら用意しよう」


 …正直、戻った所で金はないがリシャールが何とかするだろう。


「ハイドンに戻ってこの事をセラに伝えてくれ。後は…」


 ウィンディアにいくつか指示を出し見送った後、再び作戦会議を行う事になった。


「ナディア様ここに来ないって事は売られて頭来てどっか行ったんじゃないか?」


「普通婚約者に娼館に売られたりしたら逃げ出すわよね」


 コンラッド親子が非難をやめない


「すぐ助けに行くとは言ってあるんだが!」


 詳しく説明はしなかったが2回も言った!


 そもそもコンラッドだって一緒にナディアを売りに行った挙句ナチョスなんて変な名前までつけたじゃないか。おまけまでしやがって


 とりあえず俺とコンラッドはナディアを売りに行った人物として面が割れている。もう一度ノアに客として娼館に行きそれとなく探ってもらい、コーデリア殿は留守番。その間俺達はナディアが行ったと言う風呂の付近を探す事になった。


「こんな所に温泉が…」


 湯気がもうもうと立ち、晴れていても視界が悪い。ましてや夜ともなればこの辺は何も見えないだろう。


「どうどう!これ!どうしたんじゃ」


 男性がこちらに向かいながら、ほぼ馬に引きずられながら叫んでる。すかさずコンラッドが


「どうされました?」


「あいや〜、馬が暴れて…ってコラ!」


 コンラッドは男性と一緒に手綱をとり馬を大人しくさせようとするも、嫌がった馬は前足を高く掲げ2人を振り払い逃げて行った。


「あぁ〜」


「何てこった…いつもは大人しく入るのに」


 何だ?馬があんなに怯えるようなものがここにいるとは思えないんだが。


「何か怯えているように見えたので自分の家に戻ったんじゃないですか?」


 コンラッドが言うと


「ならいいけど、昨日からやけに家畜がソワソワしてるから2〜3日ほっつき歩いて帰ってこないかもな…あんたらありがとな。あぁ…母ちゃんにドヤされる」


 男性はそう言って戻って行った。家畜がソワソワ?コンラッドは眉間にシワを寄せ


「デカいの来るかもですね」


「デカいの?」


「地震ですよ地震。以前大陸を移動中にデカい地震に見舞われて、その時やっぱり家畜がやけにソワソワしていて。あと母上も」


 動物の勘と巫女の勘か?


「今朝コーデリア殿は特にソワソワしていなかった様に見えたけど」


 特に変わりは感じなかった。


「確かに母上はいつも通りだったな。となると…」


 コンラッドと目が合った。まさか魔物が出現したか?


 動物は敏感だ。俺とコンラッドは手分けして道の左右に別れ林に入り探す事になった。


 地震も魔物も敵にも賊にも会わせる訳にはいかない。頼む!どうか間に合ってくれ。


 ギャアギャアと鳥の群れが旋回している所を見かけた。あの下にナディアが?若干コントロールできる程の魔力で急いで駆けつけると地面が途切れ崖になっている所に出会した。


 木が邪魔で下は見えない。まさかここから落ちて…瞬間身体中の血が逆流するかの様な感覚に襲われた。


無我夢中で崖を駆け下り


「ナディアーー!」


 返事は無い。嘘だろ!?


「ナディアーーー」


 虚しく声がこだまするだけで返事はない。崖の周りを走り回っているとアレは…洞窟?中から泣き声らしきものが聞こえる


「ナディア!?」


「ヒック…ヒック…ディ、ラン殿下?」


 生きてた!若干ボロボロになっているが生きてる!


「ナディア!無事だったか!」


「ウッ…ヴェェェ」


 駆け寄ると大泣きして抱きついてきた。


 良かった…心臓が止まるかと思った。形あるナディアを抱きしめる


「本当に無事で良かった」


 怪我などしていないか少しナディアを引き剥がしてみると


「…何かあったのか?」


 再び血の気が引いた。


 ナディアの外套ははだけ、シャツのボタンは引きちぎられたかの様になっていて、中の下着が丸見えになっている。


「だ、大丈夫だ。大丈夫だから…」


 再び抱きしめながら言う。


 何て事に…一体誰がこんな事を


「…誰にやられたんだ?」


 静かな怒りが湧いてくる


「ウッウッ…ぷっ…ぷっぷちゃんがぁ」


 は?


「ぷっぷちゃんがシワシワのヨレヨレに…ウ〜」


 ボロボロと大粒の涙を流すナディア。ぷっぷに襲われた?いや、何か違う


 胸元からズルリと黒い何かを出してきた


「…ナディア、誰かに襲われたんじゃないのか?」


「ウ〜…ヒック…わからないです。朝気づいたらこんなになっていて…」


 …襲われてわからないなんて事はあるのか?


 俺達話しが噛み合ってなくないか?


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