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流されて帝国  作者: ギョラニスト
18/205

17話

私達は急ぎ足で次のポイントに向かう。


 特に会話はないけれど、何となく殿下の機嫌が先程よりマシな気がする。


気のせいかもしれないけれど。


 しばらくすると城壁?が途切れていた。途切れると言うより途中から城壁の高さが私の背丈位になっている。


 しかも大分村から離れている気がするけどいいのかしら?


「少し離れて待っててくれ」


急ぎ足で殿下から離れる。

どの様な魔法かは知らないけれど巻き込まれるのは嫌だわ。


殿下は片膝を着き両手を地面に置いた。


ゴッゴゴゴ


凄い!

私の背丈位の塀が盛り上がり壁になっていく。


ものの数分で既に出来ている城壁と同じ高さになり、そのまま奥へ奥へと伸びていく。


あっと言う間に出来上がった城壁に触ってみると固い。

あんなにぐんぐん伸びるからてっきり柔らかいのかと思いきや…


 殿下って本当に凄い人なのだと初めて実感した。


 今まで殿下の魔法を感じたのは風で私の体を浮かせたり、髪を乾かすだけでこんな大掛かりな事ができるとは思わなかった。


「何している。次行くぞ」


「は、はい」


 急ぎ足で殿下の元に辿り着いたけれど…殿下息が荒い?

暗くてよくわからないけれど顔色も良くない気がする。


「あの、具合悪いのですか?」


「いや、急激に大量の魔力を使ったから少し疲れただけだ。じきに治る」


本当に?


もしここで倒れるなんて事になったら私1人ではどうにもならない。

担げないし。


キャシーでもいれば…


ハッ!キャシーは村の外に置き去りだわ!



キャシーだけじゃない。


 エアリーとグレタはどうなっているのだろう。無事でいるだろうか?


ラッサ隊長は?


エランさん、ブルーノさん、ヒューズ、みんなはどうしているのだろう


急に不安が込み上げてきた。


 王宮を出てから走ったり逃げたり担がれたりでバタバタしていて戦の実感などまるでなかった。


実情も何も知らなかったし分からなかった


だけど、焼け落ちたハイドン村。


 死体こそ目にしていないけれど、幾つもの新しいお墓らしきものがあった。


 間違いなく誰かが亡くなっている。

そしてこれからも…



込み上げてきた不安は急速膨らんで心が押し潰されそうになってきた。


…ダメだ!


そんな事考えてはダメだ!


 ここにはちょっと具合の悪い殿下と私しかいない。


私がしっかりしないと。



ーー「いいか。ナディア。生きているとどうにもならない時もある。そんな時は両足で大地をしっかり踏み締め、下っ腹に力を入れ歩いてみろ。何とかなるから」ーー


そう言ったのは父だ。


 何の時にそう言われたのか忘れてしまったけれど。


大きく息を吸い大地をしっかり踏み締める。


下っ腹に力をいれ歩いてみる


「何鼻息荒く歩いているんだ?何か怒っているのか?」


はい?


「ガニ股で歩いているぞ。軍服だからか?」


⁈⁈


 し、下っ腹に力を入れ歩くとガニ股になるの?

しかも鼻息荒いって


貴族子女としてあるまじき事態。


私は下っ腹の力を抜いて歩いた。

大地は踏み締めたけど



次のポイントに着いた時水音がした。


 テアドール村の北側の橋が落とされたと言っていた。

そこの川かしら?


「お〜い。少し離れてろよ」


大分疲れているらしい。

殿下の言葉遣いがかなりおかしい


「はい」


先程と同じ様に土が盛り上がっていく。


あら?

途中で止まった?


わずがな差かも知れないけれど城壁の高さがズレている。


「ディラン殿下大丈夫ですか?」


「問題ない」


何だかとても辛そうに見える。


「何ディラン、魔力使いすぎ?」


ビクッとして振り返るとフードを被った男の人がいた


「リシャール…」


この人、後から来た大隊の中で指で何かを伝えていた人だ。


殿下は魔法使いだからと言っていたけどこの人がリシャール?


「久しぶり〜。元気…は無さそうだな。しかも酷いナリだ。パッと見た目盗賊だな」


ケラケラ笑っているけれど、男の人なの⁈


 殿下のお世話をしたと聞いていたからてっきり女性なのだと…


「リシャール…てめぇ一体今までどこで何をしていたんだ。しかもやっと見つけたと思ったら敵もごちゃ混ぜの大隊の中で」


「うーん。旅?あちこちの温泉入りに行ってたんだよ。そしたら急に兵士に拉致されてさ。あの隊に放り込まれたんだよ。


逃げようかとも思ったんだけどディランに何かあったのか心配したんだよ。これでも」


あちこちの温泉⁈


 そ、それはまさか温泉巡り⁈こんな所で同士に巡り合うなんて!


「所でディラン、この目をギラギラさせてるのはどこの隊の子?」


しまった!

つい温泉愛が溢れてしまったわ。


 殿下の魔力ダダ漏れと一緒になる所だった。



「お初にお目にかかります。この度ディラン殿下と婚約致しましたナディア・ド・マイヤーズにございます」


 カーテシーはできないので膝を曲げ挨拶をする。

殿下の育ての親ならばキチンと挨拶をしないと


「えっ⁈兵士じゃなくて貴族令嬢?」


失礼な。


「あぁ。シャナルの公爵令嬢だ。これでも」


これでも⁈


「へぇシャナル出身なんだ。あれ?もしかして魔力無い?」


 何故わかるの?私から魔力が無い気配でも漂っているの?

魔力ないのがダダ漏れ?


「あぁ。全くない」


殿下が答えた。


言っていいの?

先程はセラだけと言っていたのに。


 ちなみにこの会話中私はずっと作り笑い。

貴族令嬢たるもの殿方の会話に入り込むのはよろしくないから。


でもね、入り込みたい


「ふぅん。随分と風変わりな令嬢だな」


だって黙っていると言われ放題な気がするのよね。


「まぁ…そうだな」


ちょっと殿下?

そこは婚約者として否定する所ではなくて?


「まぁ人の好みはそれぞれだからな。とやかくは言わないよ」


もう色々言ってましてよ!


「そんな事よりコレ作るんでしょ」


少しズレている城壁を指差す。


酷すぎるわ。


 言いたい放題言ってそんな事よりで終わりになってしまった。

殿下は否定しないし。


 1人プリプリしていたらドドドッと何かがこちらに走ってくる音が聞こえてきた。


敵⁈


3人同時に振り返るとものすごい勢いでキャシーが走って来て殿下とリシャールさんに激突した。


「ウグッ!」


「グエッ」


「キャシー!」


良かった!

生きていたのね。本当に良かった。


鼻息荒いキャシーの首に抱きつく。


「くそっ。キャシーいつの間に」


「キャシー何するのさ!僕飼い主じゃないか」


2人共地面転がり悪態をついているけれど、知りません!

私の味方はキャシーだけだ。


キャシーは鼻先を私の胸元に擦り付けながらブヒヒンと鳴いた



「それにしてもキャシーはリシャールさんのう…ゴホン。リシャールさんが飼い主なのですね」


「そうそう。ディランだったらあの山の森辺りに潜むだろうなと思ってキャシーに行ってもらったんだよ」


キャシーったらなんて賢いんでしょう。


「ま、違ったら仕方ないと思っていたけど、ディラン本当にいたからビックリして笑いそうになったよ」


そこは笑う所?



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