表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流されて帝国  作者: ギョラニスト
175/205

175話


 結局ぷっぷちゃんを崇め奉る事はしないまでも、可能性をうっすら前面に出しつつ匂わせて行くと言う微妙な案になった。


 何なのよ…今までと大差ない上に殿下の私への評価が落ちただけじゃないの。


 その後ホールにいた人達は王宮に近い貴族街に貴族を、少し離れた場所に造られた家に市井の人とそれぞれ仮住まいとして振り分けられる事となった。


「ナディア様、新しいこのお部屋前より大分広いですね」


 つ〜ん 


 声を掛けてきたグレタがアレ?っと言う顔をしている。続けてアイラさんが


「ナディア?」


つ〜ん 


「ナディアちゃん?」


「ナディア様?」


 私は怒っているのよ。皆んなして私の事見捨てたくせに。フンだ!


「ナディア〜…その、悪かったよ」


「まさか冗談を間に受けて直談判するとは思わなくて…ゴメンね。ナディアちゃん」


 アイラさんとコニーさんがそれぞれ謝ってきた。…え、冗談だったの?


「ナディア様申し訳ございません。私が変な事言い出したばかりに…」


 エアリーもペコリと頭を下げると、狼狽えたグレタが私の代弁をする。


「え?え?冗談だったのですか?」


「当たり前でしょう。ナディアちゃんのお気に入りなのよ、ぷっぷちゃん。多分殿下よりも」


ゴホッ…コニーさん、何て事を…殿下の事だって嫌いとかではないのよ。ちょっと気がきかないとかは思っているけれど


「そんでその殿下のあのセリフも冗談返しだね。真に受けない方がいいよ」


 アイラさん?殿下の「そんな酷いことを」も冗談だったの?


「ナ、ナディア様〜申し訳ございませんでした。つい心の中の言葉が出ちゃっただけなのです。ごめんなさい」


 どうしようかしら?悪意があった訳でないのはわかっている。わかっているけれど…


「もし、殿下がお許しになったら温泉に何回でもお連れしますから」


「もういいわ。皆んなもう私を騙したりしないでね」


 ワッと周りが笑顔になった。


 やっぱり上に立つ人間は許してあげる広い心が必要よね。別に温泉に惹かれた訳じゃないのよ。


 私は翌日からいつも通り書類の検算をしていると


「ナディア様、その…お客様が」


 お客様?一体誰が私を訪ねてくるのかしら?


「ナディア様!私、今日も誤字脱字を見つけに参りましたわ」


 バーンと執務室として使っている扉が開かれマデリーン様が入ってきた。


「マ、マデリーン様?」


「さあ!本日も頑張りましょう」


 そう言ってマデリーン様は私の執務机の横にある作業机の上をテキパキと片付け始め、自分のスペースを確保した。


「もう狭いお部屋にお母様と2人ではないのだから、お手伝いなさらなくても…」


 公爵家の奥方と令嬢は優先的に王宮(仮)の近い場所を当てがわれるのよね?広いわよね?各自部屋があるはずよね?お母様と顔を合わせないようにするのも難しくないわよね?


「母は相変わらず帰らない父と兄を待ち続け、私の部屋にやってきて恨み辛みを吐き出すのです。私達貴族女性は〜父親や夫がいないと立場も無く、生きて行く事も出来ないと〜」


 それはシャナルでも似たようなものだったわ。父親や夫の庇護下でしか生きて行くのは難しい。


 でもそれを身振り手振りでオペラのように歌うマデリーン様は様子がおかしい。


「マデリーン様、少し落ち着いて…そうだわ。ソファに座ってお話し…」


「いいえ、ナディア様お気遣いは結構。私決めましたの。」


何を?


「昨日ナディア様と一緒にお手伝いをしましたでしょう?あの後物凄く達成感が込み上げてきて…これだ!と閃いたのです!」


だから何が?


「私、職業夫人になります!!」


「マデリーン様が?」


「ええ。私の仕事ぶりはナディア様もご存知でしょう?私は母のようにはなりませんわ!職業夫人になり自分だけで生きていきますの」


 瞳をキラキラさせ夢を語るマデリーン様。でも誤字脱字探しだけで生きて行くのは厳しいと思うのよ。


 私の知る限りドレナバルで職業夫人として生きている人は下級貴族や市井には少しいると聞いた事がある。


 ましてや公爵令嬢ともなれば他の貴族達から色々と言われるでしょうし、マデリーン様がそれに耐えられるとも思えない。


「マデリーン様の言いたい事はわかりますけれど、公爵令嬢が職業夫人になるのはドレナバルではよくあるのですか?」


「無いですわ。ですから私がその第一号になりますわね」


 顎を上げ得意気に語るマデリーン様。周りをこっそり見回すと皆んな小さく首を振っている。


「えっと…例えば自分の家でたまに仕事をするとかでもよいのではないですか?職業夫人は大変じゃないかと…」


「ナディア様!ナディア様は皇太子殿下の婚約者、いずれ皇后になりますのよ?私を後押ししないでどうするのです!?」


 ええ〜!?私の後押しを始めからアテにするのはどうかと思うのだけど


「私、ナディア様を見ていて思ったのです。ナディア様に皇后が務まるのなら、私は何でもできるのではないかと」


「はい?いきなり失礼じゃないですか?」


 何故いきなり貶められなければならないの?


「…ごめんなさい。言い方を間違えたわ。ナディア様は見知らぬ地で誰も知る人がいない中、病気したり怪我したり行方不明になったりしても一生懸命頑張っていらっしゃるから私も何か、と言いたかったの」


 申し訳無さそうに言っているけれど、内容は全然謝ってないわよね?もしかしてドレナバル流の意地悪なのかしら?


 最近ドレナバル人を疑う事が多い気がする…


 知らず知らずに疲れが溜まっているに違いないわ。早く温泉に行かないと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ