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流されて帝国  作者: ギョラニスト
169/205

168話


ムクリ


!生きてた!?


「アイラてめぇ…」


 殿下が突如起き上がりアイラさんを睨みつけた


「ディラン殿下!生きていたのですね!」


 声をかけると


「勝手に殺すな!!それよりアイラ!いきなり背後から蹴るなんて卑怯だぞ!」


 あぁ良かった。私はてっきりアイラさん達に殺されてしまったのかと思った。


「ああでもしなければ殿下の暴走なんて危なくて止めれないです!殿下の手首に魔封じの魔道具を付けたショーンとヒューズと私にご褒美を要求します」


 ホッとしたら腰が抜けている事に気がついた。


「アホか!誰が自分を蹴り倒すヤツに褒美をやらなきゃいけないんだ!」


 エアリーとグレタに肩を貸してもらい、生まれたての子鹿のように立ち上がると、周りの様子が先程と全然違う…


「何言ってるんですか殿下!市民の方見て下さいよ!」


 アイラさんが叫ぶ


 リシャールさんが地面に手をつき大きなシャボン玉のような膜で人々を覆っていた。中では顔を引き攣らせた貴族や市民が私達を見ている。


 これは、皆んな恐怖で怯えている?それはそうよね…あんな風に魔力が暴走するなんて私だって怖かったもの。


 チラッと殿下を見ると思いっきり顔を顰めた後伏せてしまった。


 殿下だってわざとやった訳ではない。私に避難しろと言ってくる位だもの。そう考えると殿下が気の毒になって、声を掛けようかとも思ったけれど一体何と言ったら良いのだろう…


「あーあー。静粛に!」


 セルゲイさん?


「ただ今のデモンストレーションはいかがでしたかな?」


…え?


「ご覧いただいたのがディラン殿下の魔力です。あの方がこれからのドレナバルを率いてどんな敵をも蹴散らすのです!そしてそれを支え、補うナディア様!ドレナバルの未来は栄光に満ちているのです!」


 何をそんなこじつけを…こんな戦場のような有り様を見ていた市民が簡単に騙される訳がない。


 案の定皆ヒソヒソと眉を顰め話しをして私達を見ている中リシャールさんが膜を閉じると


「宰相!適当な事言うな!」

「そうよ!あんな化け物じみた魔力見た事ないわ!」

「そもそも頭も身体も弱っちい皇太子があんな魔力ある訳ないだろ!」


 途端に皆んなの文句が私達に聞こえてきた。


 あぁどうしましょう…皆んなの恐怖が怒りに転じていて、このままでは暴動になりかねない。


「他にもっと皇太子に相応しいのがいるだろう!?」

「陛下はまともな人選もできないの!?」

「あんなヤツにこの国任せられるか!」


 騒めきと叫びが少しずつ段々と大きくなってきた頃セルゲイさんが静かに話し出した


「ゴホン。あ〜ここからは次期宰相を務めるセラ・パーカー殿にお願いしよう。頑張りたまえ」


 そう言ってポンとセラさんの肩を叩きバトンタッチしてしまった。


「は?」


更に固まってしまったセラさん


「逃げるな!宰相!!」

「おい!新宰相、何とか言え!」


 文句が罵声に変わった頃、ラッサ将軍が胸元から小瓶を取り出しセラさんに飲ませた。あの小瓶もしかして…


「あ、あの、ご、ご紹介、に預かりま、したセ、セラ・パー…」


 こんな状況でセラさん可哀想過ぎる。皆んな怒りまくってセラさんの声は届かない


「お呼びじゃねぇよ!」

「何言ってっか聞こえねぇ!」

「ズラずれてんぞ」


「ズラじゃねえよ!!!」


 叫んだのはセラさん。シンと水を打ったように静まり返り、セラさんがフーフーと肩で息をしている。


 こんなセラさん初めて見たわ。


「黙って聞いてりゃ言いたい事言いやがって!

今ズラって言ったの誰だ!お前か!?」


別の意味で皆んなが恐怖に打ちひしがれていると


「ヤバい。セラがキレた…」


ボソッと殿下が隣りで言った


「それともお前か!?」


 目の座ったセラさんは近くにいる人を問い詰めだした


「とりあえず、そこの2人は後で顔を出せよ?ディラン殿下の事だが、アイツの噂は俺が放置しただけで、実際は頭も身体も弱くない」


「だったらどうして…」

「今更そんな事言われても…」


 市民も貴族も先程の勢いはもうなく、皆んなボソボソと文句を言うに留めている。それだけ目の座ったセラさんからただならね気配を感じているのね


「理由はただ一つ。ディラン殿下には膨大な魔力を有し以前はコントロール出来なかった」


「じゃあさっきのもそうじゃ…」

「今もコントロール出来てないじゃないか?」


 先程とは違い文句が小声で言われている。


「先程のはあくまでデモンストレーション。ディラン殿下は今では完璧に魔力をコントロールし、操っておられます」


 セラさん真顔で嘘ついてる!!


 魔力を失う前の殿下は、ちょっとした感情の揺れでよく魔力をダダ漏らしていたわ。少しずつ戻ってきた今は更に不安定なのに


「それもこれも殿下の横におられるナディア様のおかげなのです!」


 セラさん!?


 騒めきが大きくなり、一斉に皆んなが私を見ているじゃないの!


「あんな化粧してる女のどこにそんな力があるんだ!」

「とんでもない悪女って聞いたわ!」

「ふしだらな女だって聞いた事があるぞ」


 少し収まっていた騒めきが爆発したかの様な大きさに転じた。先程の殿下の騒動の比ではない


「人を呪う魔女だって言うじゃないか!」

「魔獣を引き連れ練り歩いてるって言ってたぞ!」

「貴族かどうかも怪しいって話じゃない!」

「騒動を巻き起こす災いのような女なんだろ」


 キャー!もうやめて!私の評判が落ちる所まで落ちているじゃない!


「静粛にっ!ナディア様は正真正銘シャナル国の公爵令嬢である事に間違いありません。そして引き連れているのは魔獣ではなく、聖獣である可能性が高いのです!!」


 一瞬辺りが静寂に包まれた後、ウォー!!!と言う雄叫びが響き渡った。


 セラさんいくら騒動を収めたいからとは言え、ぷっぷちゃんが違ったらどうしてくれるの?


 私は立ったまま気を失った



今年もくだらない話にお付き合いくださりありがとうございました。

読んでくださっている方がいるだけで嬉しいです(^^)

来年の更新は1月10日を予定しています。

どうぞよろしくお願いします

皆さま良いお年を

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