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流されて帝国  作者: ギョラニスト
167/205

166話


 ざわざわざわざわ 


 中央本部3階にいても騒めきが聞こえてくる。


 そろそろかしら?と思っていたらノック音と同時にノアさんが扉を開けた


「おは…ぅわーー」


バァン 


 コニーさんの魔法で弾き飛ばされたノアさんは


「朝っぱらから何すんだ!コニー!!」


「それはこちらのセリフよ?レディの部屋に確認も取らず開けるなんて。そう思いますわよ…ねぇ殿下?」


いつからいたのか、ノアさんの後ろに控えていた殿下は


「あ、あぁ…全くだ。ノア、気をつけろよ」


目を逸らしながら答えた。


 どの口が言っているのか問いただしたいけれど、やめておいた。


 ノアさんの脇腹が焼け焦げた隊服は、次はお前だと言うコニーさんの無言の抗議に違いない。


 私達は脇腹を焦がしたノアさんを先頭に静々と中央本部前へ進む。


 本部前はちょっとした広場になっていて手前に2メルトン程高い壇上らしき物が作られていた。急遽設えた所らしく、前面に簡単な柵があるだけで両脇に階段と簡素な造り。


 階段を上がりサッと見回すと前例に貴族らしき人達が、その後ろに等間隔で兵士が警備している。


 あの貴族の中には元老院側の者もいるかもしれない。更にその後ろには騒めく市民がひしめき合っていて、中にはマルゴロードやマッサーラの者が隠れているかもしれない。


 凄く落ち着かず、思わず身体に力が入った。


 このまま正体を明かし、暴動でも起きようものなら逃げ場がない気がしてブルリと体を震わせると


「大丈夫だ。身体を一定温に保つ魔道具の予備は俺の左ポケットにある。壊れたのだろ?」


 ニヤリと笑う殿下に身体中の力が抜けた。全く…この殿下はいつだって明後日の方向に考えが行っている。


「違います。魔道具が壊れた訳ではございません」


 力は抜けたけれど今度は怒りの様な物が湧いてきて、組んでいる腕をつねった。


「いっ!?何するんだ」


 小声で殿下が叫んだ所に陛下が現れ騒めきが大きくなった。


「陛下の御前である。静粛に」


 魔法で遠くまで声が届く様になっている様で落ち着いたセルゲイさんの声が響き渡った。


 陛下が壇上に上がると貴族の男性は片膝をつき右手を胸に当て頭を垂れる。女性はカーテシーをして市民達は一斉に胸に手を当ておじきした。


 私達もすかさず陛下に向かい貴族と同じ型をとると


「皆、よい。面をあげよ」


 皆立ち上がり陛下に向き直ると


「まずは此度、皆のものに多大な苦労をかけた。全て儂の不徳のいたす所、すまなかった」


 そう言って陛下が頭を下げた。途端騒めきが細波のようにどんどん広がっていく。まさか陛下が頭を下げるなんて…


「静粛に」


再びセルゲイさんの声がすると


「そしてガルバルからの使者としてここにいる2人、ここへ」


 いよいよだわ。


 ここで陛下は使者ではなく皇太子である殿下のお披露目を正式にする事になっている。静々と進むと


「この者らは使者ではなく、我が息子ディラン・ビィ・ドレナバル、そしてその婚約者ナディア・ド・マイヤーズ。訳あって今まであまり表に出る事は無かったが、この遷都を機に披露目する事にした」


 殿下は鬘と眼鏡を外し、私は前頭部に取り付けられた布を外し民衆に向かい正式な礼をすると騒めきが爆発した。


「頭と身体が弱い皇太子なんかいらねーよ」

「何で変装して忍び込む様なマネして」

「温かい食べ物がもっと欲しいよ!」

「婚約者は顔の仮面外せよ」

「披露目してないで早く家を寄越せ」

「こんな何も無い王都なんて聞いてないわ」


 市民から当然のように怒号が飛び交った。


 今私の悪口が含まれていたような…


「静粛に!」


 セルゲイさんの強い口調に再び静けさに包まれると


「皆の言いたい事はよくわかる。家は今貴族達が住んでいる東門を入った建物を全て魔力の少ない市民の仮住まいとする。不足分は今、早急に土地を振り分けているから、魔力のある者はそこに家を建てるが良い」


 そんなに適当なの!?

案の定


「何言ってんだ!王宮も無いじゃねーか」

「家なんてちょっと魔力ある位じゃ建てらんねぇよ」

「街にすらなってないのに!」

「我々貴族はどこに住むんだ」


 怒号に貴族達も加わりだした。段々と収集がつかなくなってきている。


「静粛に!!」


セルゲイさんの声も段々と大きくなってきた時


「新しい王都を皆で作るのだ。混乱は当然の事。しかし皆の協力があれば、或いは皆で意見を交わせば、より良い都ができると儂は信じておる。王宮の土台は既に作ってある。そこを中心にこの地に新しい都を皆で築きたい」


 一瞬で静寂に包まれた。


 凄い…陛下のカリスマ性とでも言えば良いのか、聴衆が陛下の言葉に耳を傾け始めた。


「新しい王宮はここより北西の地に定めた。セルゲイ」


 すかさずセルゲイさんは兵士に指示を出し、壇上の前に大きななめし皮を広げる。


 ここからでは何が書かれているのかわからないではないの。


 しばらくすると壇上の上がパッと光り皆んながそこに注目する。見上げると大きく地図が描かれており、その上に新王都構想案と書かれていた。


 大きく大体の王都が描かれ、各門の位置、現在地と王宮の場所など簡単に書き込まれていた。


 驚いたのは王都の中に畑エリアが設けられていた。しかもかなり広範囲に。


「まだ決定はしていないが、大体このように作ろうと思っておる」


 おぉ〜 


 感嘆の声があがる。


「そしてここから先は…ディラン、こちらへ」


「は?」

「え?」


殿下が呼び出される話しは聞いていない。すると陛下が歩み寄って来て


「このディランが後を引き継ぐ!儂は半年後を目処に引退する事にした。皆の者よろしく頼む」


はい!?



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