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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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165話


 誰もが口を開けたり閉めたりして、何も言えずにいると


「は……………い。有り難く拝命いたします。職位に恥じぬよう精進して参り…」


「堅苦しい挨拶はいらん。正式な場でもなく本来なら剣を肩に置くと言う作法もできんしな。ディラン、本来はお前の直接の部下であったが、それは今後も変わらんから。儂はもう行く。後は頼んだぞ」


 言うだけ言って陛下は王妃様を伴い去ろうとすると


「陛下のお手は借りません。私はオリビアと部屋に戻ります」


「ま、待て。話そう、ちゃんと話し合って…」


 夫婦喧嘩かしら?2人は言い合いながら部屋を出てしまった。ラッサ大尉…いえ、ラッサ将軍はそのまま座り込んで呆然としていると


「ラッサ将軍、おめでとうございます。衣装や勲章はなるべく早く準備しますので」


 1人冷静沈着なセルゲイさんがお祝いを述べると殿下はセラさんに向かい


「なぁ、なんで陛下はあんなに機嫌が悪かったんだ?喧嘩でもしたのか?」


「あぁ、アレね…ディラン達が炊き出しに来る前、始まってすぐは陛下も王妃様も手伝ってたんだよ。そしたら王妃様が男2人組に絡まれてさ」


 ギョっとした。いくら魔力が多目の王族だからと言って、あのように人が多くいる場で働く陛下と王妃様はさぞかし衆目を集め、更に絡まれるだなんて


「危うく連れ去られそうになった時、そこに通りがかりのラッサ大…ゴホン、将軍がお玉とフライ返しであっという間に倒したんだよ」


 カ、カッコいい…想像しただけで素敵な展開だわ


「しかもその2人はアリアステの手の者じゃないかってマークされてた人物で。それを知った陛下は王妃様を安全な場所に連れ出したんだけど、王妃様、実は知っててわざと絡まれに行ったのに何故邪魔をしたんだって怒り出しちゃって」


 王妃様って実は行動派?自ら囮みたいな真似されるなんて


「あ〜…母上がそんな事を…ありえそうだ…で、その2人は今どこに?」


「とりあえず牢とかもないから、蓋をした大鍋の中に入れてあるよ」


「鍋が牢の代わりなの!?」


 思わず口を挟んでしまったら


「そうか、ナディアは知らないかもだけど、ラッサ隊は昔からあちこち移動することが多かったから、とりあえずとっ捕まえた人物を鍋に入れて運んでたんだ」


 え〜…まさかそのお鍋でうっかり茹でてしまったなんて事ないわよね?更にそのお鍋でご飯作ったり…途端に今までのラッサ隊のご飯がすごく嫌な物になってしまった


「ナディア大丈夫だ。ラッサ隊は沢山の鍋を持ち歩いているから、中には結構ボロくなったヤツがあってそうゆう鍋に入れて運ぶんだ」


 鍋の使い方としてどうかと思うけれど少し安心した。するとそれまで愕然としたまま床に座っていたラッサ将軍が


「あの〜、将軍って事はラッサ隊はどうなるんでしょう」


「う〜ん。俺も今それを考えていたんだが、ラッサ隊は基本料理に携わる人が多いが…まぁ、とりあえずそのままのメンバーでドレナバル国軍第一隊にするか」


「料理人が!?」


「仕方なかろう。メンバーを入れ替えたらラッサ隊でなくなる。お前だって急に見知らぬ凄腕が部下になったらやりづらいだろ」


「いや、そうですけど…ドレナバル第一隊が料理人の集まりっていうのは…ウチの隊が他の隊に勝るのは料理の腕と逃げ足だけですよ。他の隊が納得するとはとても…」


 しないでしょうね。しかもいらない軋轢が生まれそう


「まぁそうだろうけど、考えてもみろ。俺のお抱えの隊だ。あまり知られていないし、実力だってそうだ。言わなければ分からん!」


言い切るの!?


「勘弁して下さいよ、殿下。今からでも陛下に言って取り消しにしてもらった方が…」


「だったら最初から引き受けなければ良かっただろ」


「言えるわけないじゃないですか!あの場で断るなんて!」


「諦めろ。今陛下の頭には母上しかいないんだから行くだけ無駄だ」


 ラッサ将軍の訴えに殿下は聞く耳も持たず、とりあえず解散となった。


 秘密会議でも何でもない痴話喧嘩とラッサ将軍の愚痴…秘密どころか会議ですら無い。


 チラッとセルゲイさんを見るとニッコリ笑って


「いつもの事ですから」


ホントこの国大丈夫なのかしら?


 翌朝エアリーとグレタは朝からバタバタと働いていた。


 コニーさんは鼻歌交じりで上機嫌に私の髪に櫛を通しながら、こんな髪型もいいわねぇとか言っている。


 昨日に引き続きガルバルの民族衣装になり、髪の毛を頭のてっぺんで結ぶ。ちょっとコニーさん風な髪型で違いは後毛を多目に出しアイロンで巻く位。


「メイクはどれどれ…」


 言いながらコニーさんは誰が纏めたのか『ガルバル風オシャレとメイク』の紙を捲っている。


「よし!理解したわ。ナディアちゃんまかせてね」


 そう言ってテキパキとメイクをしてくれた


「これは…」


 本当にガルバル風メイクなのかしら?昨日エアリーが施してくれたメイクよりかなり濃いめで誰だかわからない。アイラインが太すぎる。


 仕上げに布を前頭部で止め


「さぁできたわ。これで誰だかわからないわよ」


 変装だったのですね…


「ありがとうございます」


 本日これから中央本部前で陛下の演説と共に私達が紹介される。昨日のは前哨戦みたいなもので使者として本当のお披露目は今日だ。


 立ち上がると私のお付きの者として、エアリーとグレタが私の後ろから着いてくる事になっているけれど


「グレタ、本当にその格好で?」


「当然です。昨日もこの格好だったじゃないですか」


 そうね。そうなんだけれど、老婆よ?


「本当、完璧な老婆よね〜。私も今度やってもらおうかしら?みんな私と目が合っただけで、すぐどっか行っちゃうからちょっとだけ寂しいのよ」


 コニーさんは顔に手を添え悩まし気に言うけれど、老婆とは目も合わせないと思うけど…



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