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流されて帝国  作者: ギョラニスト
163/205

162話


 陛下達がテオドールを立った後、第二陣の物資がその2日後、私達は更に2日後に出発する事が決まると俄に慌しくなった。


そんな中殿下が部屋にやって来た


「ナディアすまん。茶を淹れてくれないか?」


 久しぶりに会った婚約者に最初に言うセリフがそれなの?ムッとしたので


「普通の?それともとびきり濃い目にお淹れしましょうか?」


「勿論とびきり濃い目で」


 え?嫌味で言ったのに


「分かりました」


 殿下は目元を揉みながら


「ハイドンなんだが、復興と遷都は順調に進んでいる」


「それは良かったですね」


 てっきり問題だらけかと思っていた。見切り発車もいい所でしたもの。


「ただ、問題もあってな」


…やっぱり問題あるんじゃない


「一般市民に混ざってマルゴロードの者とマッサーラの者が相当数いるらしい」


 問題しかないではないの!


「あと確証はないが、アリアステの者もいるらしい」


 もう敵だらけではないの!?


でもあのハイドン村の東門の状況では敵味方、一般市民を選別するなんて難しかった筈。

 

 仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。


 けれどもイライラして物凄く渋いお茶になってしまった。まあ、殿下はそちらの方をご所望よね。自分のだけ淹れ直そうかしら?


「それで先発隊で陛下を先に行かせて良かったのですか?私達と一緒の方が…」


 ハタと気がついて危険かも?と言う言葉を飲み込んでしまう。殿下は以前の様に魔法も剣も扱えない。私は言わずもがなだし


「そうゆう事だ。俺達と一緒にハイドンに入るのはリスクしかないから陛下達には先に行ってもらった。陛下も母上も魔力は豊富にあるし、母上に至っては防御力だけなら以前の俺と同じくらいある。周りも2人に集中して護衛できるしな」


 そうね。殿下の言う事は最もだわ。でもそれなら私達は行かなくても良い気がする。むしろ足手まといでしかない。


「それでは私達は行ったふりをしてここに滞在ですか?」


「それでは俺や婚約者のナディアの披露目ができないから行くには行く。が、安全と思われる所に入るまで変装する事になった」


「変装…ですか」


 一体何に?兵士では正直いつもと変わらない。一般市民を装うのかしら?


 今、混乱しているハイドンの中で安全でいられる変装なんてあるのかしら?


「カルバル国に嫁いだ一番上の姉の国の使者としてハイドンに入る。他国の者なら迂闊に手を出さないだろう。護衛も正々堂々付けられる」


「普通混乱している所に使者は送らないのでは?」


「うん。ちょっと苦しいが遷都祝いをと言う事にした。姉上にも了解を取ってある」


 そんな…引っ越し祝いじゃあるまいし


「カルバル国ってドレナバルから南にある独特の文化を持つ国ですよね?その様な国の使者なんて、とても務まらないですよ」


砂漠ばかりの国と聞いた事がある。30年前の情報だけど。


 一夫多妻制の国だったと記憶していたけれど、変装して沢山の女性を連れてハイドンに行くと言う事かしら?


 でも少なくとも呪いの件があったとは言え、大国ドレナバルの姫が嫁ぐなんて…


「最近はだいぶ文化革命が進んでな」


「文化革命?」


「あぁ。姉上が嫁いでから一夫多妻制も無くしたんだ。」


 凄いわ。愛は法律や文化まで変えるのね!一夫多妻制の様な文化を変えるのは容易では無い筈。きっと2人には様々な困難を切り抜けたに違いないわ


「ある日留学に来ていたガルバル国の皇太子が一目惚れしてな。押して押して押しまくって」


「それでお姉様はガルバル国に嫁がれたのですね」


「いや、振ってたな。正に振って振って振りまくりだな」


 振って振って振りまくり…一度でいいから言ってみたい


「それでも皇太子は諦めなかったと言う事ですね!」


 なんてロマンチック。ロマンス小説のよう!


「いや、戦法を変えたんだ」


 戦法?ロマンス小説は?


「魔法の相性がすごく良い事を知っていた皇太子は、姉にガルバルに来て一緒に国を再生しようと持ちかけたんだ」


「相性?再生?」


 ロマンスからどんどん遠くなる


「皇太子は水、姉は土と本来なら相容れない魔法なんだが、砂漠の国にとって二つが合わさった泥は豊かな土壌の助けになる。姉は元々俺が表に出れなかったら裏で操ってドレナバルの女帝になろうと目論んでいるくらいだから、多分嬉しかったと思う。一夫多妻制をやめさせる事と引き換えに結婚を承諾したんだ」


 ………私のロマンスを返してほしい。


 しかも考えようによってはガルバルの皇太子の策略に引っかかっているのでは?そう聞くと


「そうか?姉上は今でも張り切って辣腕奮っていて満足そうだぞ?」


 私が考えすぎていて気づかなかっただけで、ドレナバル人って案外チョロい人種かもしれないとふと思ってしまった。


「何はともあれ、そんな訳で変装して行くから。グレタ、全てはお前にかかっている。頼んだぞ」


「はい殿下!お任せ下さい」


 やけに張り切ったグレタの返事が、部屋の中に響き渡った。



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