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流されて帝国  作者: ギョラニスト
162/205

161話


 無事?テオドール村に着いたら殿下の言った通り、殿下達は正に走り回る様な忙しさな様で全く会えなかった。


 そして私は村長さんのご自宅の一室を借り静養と言う名の監禁状態に陥っている。


「ねぇエアリー、もう丸3日もベッドから出ていないのよ。もうそろそろ…」


「ダメです。ナディア様はすぐに治してもらったとは言え大怪我なさったのです。一歩たりとも動いてはなりません」


 ずっとこの調子だ。食事もベッドでいただき、湯浴みやトイレ以外ベッドに監禁。これでは折角馬車の中で行った筋トレも台無しだわ。


 馬車の中での噂に関しても一切その様な事にはなっていない事も説明したけれど


「その噂は返って持ってこいじゃない?フォールダー領で殿下に他の令嬢を勧めた人がいたって聞いたわよ?」


 コニーさんは冷たい眼差しで言う


「ええ。まぁ」


 プリシラ様がエレノア様をお勧めしてたわね。コニーさんは更に顔をズイっと寄せて


「いい?ナディアちゃん、皇室は女の戦いの場なのよ。馬車で殿下を押し倒す位の事しなきゃ!のほほんとしてちゃダメなのよ」


 どこに馬車内で殿方を押し倒す公爵令嬢がいるのか。そもそも皇室自体が危ういのに。


 そう、私達がこのテオドール村に到着すると同時にセラさんの伝言を預かった早馬と行き合った。


 詳しくは聞いてないけど、リシャールさんとラッサ大尉、ノアさん始め数十名の聖女の力を持たない兵士がそのままハイドンに向かって行った。


 あちらでも問題が起こっている様で皆大変そう。私だけここで静養しているのは気が引ける。何よりこの忙しい中働かない婚約者と言われるのは避けたい。


「では、私達は食器の片付けの後買い出しにいきますので、ナディア様は絶対ベッドから出ないで下さいね。グレタ、よろしく頼みましたよ」


「ええ、任せて。気をつけて」


 そう言ってエアリーはコニーさんを伴い部屋から出て行った。アイラさんは殿下達に付いて回っていて不在。


「ねぇグレタ」


「ダメです」


 まだ何も言っていないわよね?


 グレタはこちらに目もくれずチクチクチクチクと縫い物をしている。


「何を作っているの?」


「ナディア様行方不明防止衣料です」


はい?


「それは一体…」


「ナディア様が急にいなくなってしまったと聞いた時、全身の血が逆流し鳥肌が立ちました」


 グレタは手を止めこちらを向いた。


「ハイドン村で襲われた時もそうでしたが…その後頭痛めまい吐き気に咳鼻水喉の痛み、動悸息切れ悪寒に腹痛顔に吹き出物…あんな思いは二度としたくないです」


 泣きそうな顔で私を見つめるグレタ…それは風邪の症状ではないの?


「ナディア様がわざとではないのは分かっています。ですので、コレさえ身に着けていれば必ず見つけ出せる衣料を作っているのです」


バーンと見せたモノ、それは…


「下着かしら?」


「ええ。下着を脱ぐなんて入浴時くらいですよね?ですから下着を脱いで30分経過したら居場所がわかる様、光を発する魔力を込めて作っています」


 グレタは得意気に指を3本立てて言った


「さ、30分?」


 それではゆっくり温泉で寛げないではないの。


「はい。30分で入浴を終えれば問題ないです。」


「も、もう少し延ばしてくれないかしら?30分ではゆっくり入浴なんてできないわ」


「何を仰っているのです。この下着を身に着けていれば暴漢に襲われても30分逃げ切れば誰かが助けに飛ぶ事もできるのです!」


 30分も裸で逃げろと!?入浴よりそっちの方が難しいわ


「待って待って!両方とも無理よ!入浴はもっとゆっくりしたいし、暴漢に襲われたらもっと早く助けに来て欲しいわ」


「ふぅ〜…ナディア様、あまりわがまま仰っらないで下さい。これでも色々と譲歩して30分なのです」


 どこがわがままなの!?


 いいわ。そんな下着なんか絶対身につけないわ。ゆっくり入浴できて、尚且つ暴漢に襲われないよう最善を尽してみせるわ。


 その後も私には何の情報ももたらされないまま時が過ぎて行く。もうハイドン村に向かってもいい頃なのに


 たまに王妃様とお茶を飲む為、村長の家の貴賓室に行く以外部屋からは出ずゆったりと過ごしている。


 さすがにベッドからは出してもらえたけれどね。何もしないのも気が引けるので得意な刺繍をしたりして過ごす。心穏やかなせいか上々の出来だわ。

 

 そしてぷっぷちゃんはまだ目覚めない。


「冬眠じゃない?」


 アイラさんがぷっぷちゃんを突っつきながら言った。


 そう言えばそうよね。トカゲは冬眠するじゃない。良かった、瞬間移動で疲れ果ててしまったのかと思ったわ。


 そもそもぷっぷちゃんが瞬間移動させたと言うのも憶測だし。


 私ったら過保護になっているのかもしれないわ


「どうする?暖炉の側に桶を置いて起こそうか?」


 ぷっぷちゃんが寝ていると確かに退屈だけれど、それは何だか自然の摂理に反しているようで気が引ける。


「ううん。寝かせておいてあげて。ぷっぷちゃんトカゲなのだから冬眠は当然の事よ」


「…トカゲに羽は生えないんじゃ」


「トカゲです。新種の」


「ふぅん。まぁいっか。そうだ、明日からアタシは陛下や王妃様と先にハイドンに向かう事になった。殿下はしんがりを務めると言っていたからナディアも最終組だと思うよ」


「…日程が決まったのですね」


 良かった。もう永遠にこの部屋から出してもらえないのかと思った。


「アイラさんは護衛として陛下に?」


すごいわ。大出世ではないの!


「いや、聖女として」


え?


「陛下のお腹の調子の為の付き添い」


 アイラさんいつの間にジョブチェンジしたのかしら?



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