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流されて帝国  作者: ギョラニスト
161/205

160話


 ノアさんの言葉を無視して、殿下達の輪に近寄る


「アイラとヒューズはまだか?」


「あの2人先頭にいるようでもう少し時間がかかります。見習い3人はここに」


 殿下とラッサ大尉が会話してると例の3人が連れてこられ


「あの、俺達は…その…」

「あれ以来隊則破ってませんし…」

「こんな所に置いていかないで下さい!」


 完全に怯えている。でもあの人達のせいでフレデリックさんはあらぬ疑いをかけられたのだから、あまり同情はできない。


「いや、ちょっと聞きたい事があるだけだ。そこで待っててくれ。あ、ナディア様」


 ラッサ大尉が私に気付き走り寄ってきた。


「こちらに殿下とおかけになって下さい」


 そう言って半ば引きずるように殿下の横に用意された椅子に腰掛ける。一応風除けに周りに布を張っただけの簡易休憩所の様な所。


「大丈夫ですか?」


 ラッサ大尉に真顔で尋ねられた


「え、ええ。ありがとうございます」


 私の具合の為だとしてもちょっと大袈裟なような気がする


「ノアは腕は立つのですが、ちょっと性格に問題があるものですから…」


 なるほど…それならあの発言も納得だわ。


 程なくしてアイラさんとヒューズ君がやってくる。それぞれがテオドール村での行動範囲の説明をし一通り終わると


「ふむ…やはり顔色と聖女の力は比例している様だな。で、外にいた者の方が顔色が悪くなったと…」


 殿下は考え込みながら呟いた。


「それでしたらテオドール村の農民の方が圧倒的に外にいたはずです。テオドール村にいた者だけに現れた現象だったら…」


 今殿下隊の人達はほとんどハイドン村を都にするためハイドン村に集結している。


 テオドール村には以前からいる村民と、数名の兵士が療養目的で残っているだけだ。


 その村民が皆聖女化していたら…もしかしたら何らかの方法でそんな事ができる人がいたとして、その人がテオドール村ごと…殿下の『終わらない戦』と言う言葉を思い出し心底恐ろしいと思った。


「よし。どうせハイドンに行く途中にテオドールがあるのだから、とりあえずテオドールに行き先変更だ。ラッサ、後は頼んだ」


 そう言って殿下は馬車に向かった。慌てて殿下の後をついていくと、殿下が足を止め手を差し出した。エスコート!?


「あ、ありがとうございます」


 殿下の手を取ると


「いや。俺が今まで気遣いが足りなかっただけだ」


 す、すごい…これはフォールダーで私がキレた効果なのかしら?殿下の口から気遣いなんて…


 あの時は物凄く腹が立ったけれど、怒って良かったのかもしれない。これならこの先も殿下と仲良くやっていけるかも。


 密かに感動と安堵に包まれていると


「これからはナディアにも適切に対処するよう努力する」


 適切な対処に努力…前言撤回。

 やっぱり殿下だったわ。


 そこからはスピードを上げテオドール村をひたすら目指した。


 目指したと言っても私と殿下は寒さの為、ほぼ棺桶馬車に籠りダラダラと過ごしただけだったのだが


「本当に、お熱い事よね」


「王妃様?何の事でしょう?」


 明日にはテオドール村に着くであろう森の中。少し開けた場所で大きな天幕を張った中で2人きりで食後のお茶をいただいている。


「ふふふ。いいのよ、どうせ結婚するのだから孫が先だって」


「はい?」


 一体何を言いだすのか。


「あの…」


「ディランとずっと馬車で2人でしょう?とても仲が良くて噂になっているそうよ」


 また噂!?しかも仲良し!?


 馬車の中でする事もないから、たまに筋トレをする以外はしりとりをしているけれど…それは仲良し?ロマンス小説で描かれている男女とは全然違うのですが。


「王妃様それは誤解です。ディラン殿下と私は寒さの為馬車に籠っているだけで、せいぜいしりとりをする位なのです」


筋トレは言わない。だって…ねぇ 


「ほほほほ。ナディアは照れ屋なのね。私は嬉しいのですよ。あのディランが誰かと一緒にいるだけで。溢れ出る魔力はあの子を孤独に置くしかなかったのですから」


 …それを言われると罪悪感に似た気持ちが湧いてくる。ただ単純に私に魔力がないから側にいられると言うだけなのに


「今のディランなら他の誰とでも一緒にいられるのに、ずっとあなたといる事を望んでいるからでしょう」


「寒さです!寒いので、棺お…寝台馬車に乗るしかないのです。あの馬車内暖かいですし」


 全くもって不本意だわと思っていたら


「寝台馬車の御者係が馬車内で『フッフッフッ』とか『クゥ〜〜』とか『ハァハァ』といった呻き声や激しい息遣いが聞こえると言いふらしていたわよ」


 ブボッ!何ですって!?それは筋トレの時つい出てしまうリズム取りの息継ぎだったり腹筋99回目の呻き声!何て事でしょう。


 その後お茶を終えるまで一生懸命いい訳の様に筋トレをしているからとか言ってみたけれど、王妃様はほほほほと笑うだけで全然取り合ってくれなかった。


 馬車から降りる時の周りの生温い視線はそうゆう事でしたのね。


 私のふしだらが決定してしまう…殿下と婚約解消したら嫁ぎ先がもうないなんて。


 いいえ!まだ手はあるはず。とりあえずテオドール村に到着したら何とか誤解を解かなければ。


 それにはエアリーやグレタの協力してもらわないと!アイラさんやコニーさんはきっと面白ろがって更に噂が酷くなるに違いないわ。


 私は決心を固めテオドール村に到着するまでふて寝する事にした


「何だ寝てるのか?」


 打ち合わせを終えた殿下が馬車に乗り込むなりそう言った。


「ええ。もうテオドール村に到着するまで筋トレはいたしません」


「具合でも悪いのか?」


「いえ。そうゆう訳ではないですが」


 心労が重なってと言っても良いけれど、更なる病弱説は回避したい。


 そしてきっと殿下に言っても『別にいいんじゃないか』とか言いそう。乙女心なんて欠けらもわかりそうにないし


「ふうん。まぁゆっくり休め。俺はこっちの隅っこでスクワットしてるから」


 そう言ってよりにもよって御者台の近くで


「フッフッ」


 と言いながら始めてしまった。


「ダメです殿下!やめて下さい!」


 咄嗟に縋り付き叫んだ


「は?」


「今ここではダメです。テ、テオドール村に着いたらゆっくりたっぷりなさって下さい」


「え?何故だ?俺は今やりたいんだ。テオドール村に着いたら忙しくなるだろ」


「で、でも…」


 どうしましょう。良いいい訳が見つからない


「あの〜俺耳栓するんで大丈夫ですよ」


 御者台から声がした。


 ちがーう!もうやめて。違いますから!




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