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流されて帝国  作者: ギョラニスト
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159話


 出発してすぐ私が寝込んでいる間に陛下達と行われた会議の内容だったりの説明がなされた。


 陛下は本気でこのまま王都陥落の責任を取る形で隠居する予定でいたらしい。


 けれど自国民に顔を知られていない殿下が今跡を継ぐには無理があると言う最もな理由で、ハイドン村への遷都を終えるまでは続けましょうとなったらしい。


 その間殿下を表舞台に出しまくり、例の噂を消しつつ国民に顔を覚えてもらおうと言う作戦のようだけど、そんなに上手くいくのかしら?その間にマルゴロード辺りに制圧されていそう。


 その時私は何も知りませんで通るかしら?そろそろ本気で身の振り方を考えなければならないのでは?その際私の噂もかき消す手段も考えなければ。


 ただ、この馬車旅は私と殿下に変化をもたらした。


「なぁ、ナディア。足元寒くないか?」


「ええ。多分扉から冷気が入って来るのでしょう」


 まったりと流れる時間。

 

 すると殿下は荷物から魔道具を取り出し、水の入った皮袋に装着した


「新しい魔道具ですか?」


「あぁ。ショーンは不便な事を伝えるとそれに合った魔道具を作らせたら天才かもしれん」


 すごい。殿下がベタ褒めするなんて…


「よし!できた。ナディア、コレを足元に置いてみろ」


 ベッド下には殿下が陣取っているので足を下ろして座る訳にもいかず、ベッドの上で膝を抱えて座っていたので足の甲に皮袋を置いた。


 じんわりと段々暖かくなってくる


「殿下…暖かいです」


「だろ?中の水だけを温める魔道具だ。中々温度調節が難しいと言っていたが、やっと完成したと出発前に持ってきたんだ」


 嬉しそうに話す殿下は、自分の分も組み立て足元に置き寛ぐ。


 全く緊張感の無い馬車の中、気になったので聞いてみる事にした


「ディラン殿下、聖女はやはりドレナバルでもあまり出現しないのですよね?」


 難しい政治の話よりは聖女の話の方が身近だわ


「そうだな。こんなに大量の聖女が急に現れるなんてドレナバルはおろかこの大陸内では聞いた事もない。」


「ディラン隊だけではなく、マルゴロードやマッサーラにも出現したのですかね?」


「耳には入ってこないだけで、そう考えるのが普通だろうな」


「それだと聖女の価値が下がりますよね?」


「ん〜どうだろう。急に聖女の力を得たと言ってもそれが継続するモノなのかにもよる。急に得たら急に失われる事も考えられるだろ」


 なるほど…一時的なモノなら大量に出現しようが、失われようがどっちでもいいわよね。


「万が一失われなかったら…」


「怪我人をいくらでも治せる聖女がどの国にも大量にいたら、戦は終わらない。ある意味一番恐ろしい事態だ」


ゴクリ。いつまでも終わらない戦…考えるまでもなく地獄のようで背中に嫌な汗が流れる。


「まぁ力が出現した者としない者、大量に出現する所もあれば、シャナルのように1人しか出現しない所、違いも分からなければ理由もわからない。今は情報を集めつつ静観するしかないだろう」


 そうよね。出来る事なんて何もない。


 アイラさんとヒューズ君、その他の一部の兵士にあって、私や殿下、コニーさんやエアリー、グレタに無くて………


「殿下、アイラさんとヒューズ君以外の聖女の力を持っている人ってどのくらいいるのですか?」


「今ここにいる兵士の中ではアイラとヒューズ、見習いの3人がずば抜けて聖女の力を持っているが、他にも擦り傷を治す程度ならお前の侍女や、コニー、他の兵士にも結構いると聞いたが」


「…アイラさんとヒューズ君はテオドール村にいた時物凄く顔色悪くなりましたよね?」


「そうなのか?」


「はい。あと、見習い3人もそこそこ顔色が悪くて」


「…」

「…」


 殿下と見つめ合う事数十秒


「馬車を止めろ!!」


 殿下が叫んですぐ、停止するや否や馬車から飛び降りた。


 コッソリ窓から覗くと殿下を始めリシャールさんや、ショーンさんらがワラワラと集まって来て話し込んでいる。


 思いつきで口にしてしまったけれど、中々の大事になったらどうしましょう。


 あ、ラッサ大尉もいらしてたのね。可哀想に…あんなに窶れてしまって。


 誰が迎えの隊を引き連れてくるのかしら?と思ってはいたけれど、やっぱりラッサ大尉だったのね。


 と思っていたら1人こちらに向かってくる。あれはノアさんだったかしら?


コンコン


「ナディア様、ちょっと降りてきてもらえますか〜」


 セラさんと双子のノアさん。顔は一緒なのに大柄で性格も大分違うようね。


「はい。今行きます」


 いそいそと外套を羽織り扉を開けると


「ちょっと話し聞きたいって殿下達が言ってるもんで」


 差し出された手を取り馬車から降りると、物凄く寒い!


 雪は少し積もっている程度なのに、鼻が凍りそう。吸い込んだ息で胸が痛い。今すぐ死にそうと思っていたら


「あ、ちょっと待って」 


 ホワッと暖かくなった。


「セラからの手紙で聞いてる。これで寒さも大丈夫か?」


なんていい人!セラさんもナイス手紙だわ


「ありがとうございます」


 心の底からお礼を言うと


「ハハハ。残念だけど、殿下って言う婚約者がいるんだから俺に惚れちゃダメだぜ」


 バチンと音がしそうなウィンクをして歩き出したノアさん。


…ナニコノヒト

 セラさんのご兄弟じゃなかったら、グレタ直伝の技を披露する所だったわ。




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