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流されて帝国  作者: ギョラニスト
157/205

156話

変な所で切っちゃってスミマセン。途中からディラン視点です。


 サッパリ意味がわからないまま、とりあえず帰りましょうとなった。


 私の服はボロボロだし、とにかく血の気が足りなくてフラフラする。


 ヒューズ君も呆然として、ショーンさん曰く使い物にならない!との事。ちなみに聖女の力(仮)では血の気は補えないらしい。


 私は護衛に抱えられ、ヒューズ君はヨチヨチと歩いて馬車へ戻った。わらわらと出迎えがいる中私が抱えられ馬車から降りると、出迎えの者達が騒然となって駆け寄ってきて


「誰か殿下に連絡を!あと、医師の手配も!」


「ナディア様…お気を確かに!」


 皆んなうるさいわ。少し静かにして…と思った所で私の意識が途切れた。


    ーーーーーーーーーーーーー


「何だって?」


 思わず聞き返した。俺達を迎えに来る筈の隊が途中足止めを食らっていて、その詳細をフレデリックが1人早馬で持って来た直後だった。


「ナディア様が視察からお戻りになられたのですが、着衣はボロボロで意識も無いそうです!」


「フレデリック!お前も付いて来い」


「はい!」


 クソっ…唯の視察で一体何があったんだ?ショーンとヒューズは何をしていたんだ!走りながら兵士に説明を求めると


「ナディア様は視察途中秘湯の足湯に浸かっていた所、高波に攫われ岩場の海に落ちたそうです」


 !!岩場!?この真冬の海に落ちただと!?


 この辺りの海は潮も早く、整備された港の外海は荒れている。ナディアは無事なのか!?


 邸の入り口で抱えられたナディアが運ばれている途中に出会し思わず声を荒げた


「ナディア!!」


 まるで眠っている様なナディアの顔色が紙の様に白く、血の気が引く。


「殿下!ナディア様に命に別状はございません。ただ、大分出血をなさっていて…」


「真冬の海の岩場に落ちて命に別状ないだと!?」


 ショーンの説明に思わず怒鳴り返し、護衛騎士からナディアを奪うように抱えると…温かい?顔色は悪いけれど、まるで眠っているかの様な穏やかな顔


「怪我はないのか?」


「怪我は…なさいました。ですが、ヒューズが…その…」


 何だ?歯切れの悪い。


「今ここでは…とりあえずナディア様の部屋に。事情はその時にお話しします」


 小走りでナディアの部屋へ行き寝室のベッドに降ろす。メイド達がバタバタと身体を清める魔法をかけ、ナディアに魔力が無い事がバレない様到着した医師を叩き返してから隣の居間に移りソファに腰掛けた。


 人払いをして残ったのはショーン、ヒューズ、フレデリックと俺の4人


「で、どのくらい怪我をしたんだ?パッと見た目大怪我には見えなかったが」


 ナディアの無事な姿を見て、大分落ち着いてきたので声を落として聞く


「ナディア様を海から引き上げた時、正直助かるとは思えませんでした。傷だらけでしたが、特に左半身は酷いあり様で…」


「ちょっと待て。ナディアの事だよな?俺が抱えた時服は確かにボロボロだったが、誰かがヒールで治せる程度じゃなかったのか?」


「とりあえず俺の持っていた魔道具とヒューズがヒールをかけた所…その、よくわからないのですが…」


 何だ?先程もヒューズの話になった時も歯切れが悪かったが何を言いたいんだ?


「聖女の力、だったのではないですか?」


 それまで黙っていたフレデリックが口を開いた。


 聖女でもいたのか?するとショーンが頷き


「俺も文献でしか知らないですが、ヒューズが両手を翳した時、白く光り傷は内側から治って行った様にみえました。ヒールの治り方ではなかった」


「は?」


 ヒューズが聖女?俺は無言で立ち上がりヒューズのズボンに手をかけた。


「「殿下!?」」


「みせてみろ!」


「い、嫌だ!」


 いくら魔力がなくても新人兵士に負ける筈もなく、力ずくで中を覗き込むと


「あるではないか!!何でそんなバカな発想になるんだ!」


「いや、だから俺も言い淀んだんですよ!」


 ヒューズは膝を抱え泣きだした。…ほんの少し悪い事をしたと思った


「あのな、聖女は女がやるから聖女だろ。何故聖女の力だなんて。ヒールの能力が開花して強力なヒールとかだったんじゃないのか?その…ヒューズ、悪かった。中々立派なモノだったぞ」


 とりあえず謝って、おだてようと思い言ってみたらヒューズは声を上げて泣き出した。


「な、泣くな。その…悪かったから!今度美味いメシをラッサに作らせるから!」


 ラッサの名前を勝手に使ってしまったが、これで許してはもらえないだろうか?


「ラッサ…大尉のメシ?本当に?」


 ピタリと泣き止みチラッと俺を見るヒューズと目が合った


「約束しよう」


「よろしく…グスッ…お願いします」


 ホッと息をつくと、フレデリックが再び口を開いた


「多分聖女の力で間違いないですよ」


「は?男なのに?」


 何を言い出すんだ。またヒューズが泣いたらどうしてくれる


「はい。実は殿下の迎えが足止めを食らってるのもそれが原因です」


 この所ヤケに聖女と言う言葉を耳にするのは気のせいか?思わず眉を顰めた


「来る途中、中級魔物が出たのです。倒しはしたものの兵士の1/3が負傷してしまって…」


 何だと?初耳だぞ


「…死者は?」


「大丈夫です。1人も出ていません。重傷者は数名いたのですが、負傷していない者が治していったのですが、その内の1人の兵士が明らかにヒールではない治し方をしたのです」


「聖女の力か?」


「はい。男だったため先程の様な言い争いになり、止めに行ったアイラが面白ろがって私もできるかもなんて言い出して…アイラも聖女の力が使えてしまったのです」


「ア、アイラが…聖女?」


 何と言うか、鳥肌がたった。聖女から一番遠い人物のアイラが聖女とかおかしくないか?攻撃魔法に特化しているのに


「お気持ちはわかりますが、自分もこの目で見たのです。取れかかった腕を見事に復活させていくのを」


 真顔で話すフレデリック。


「フレデリック、その…お前も魔物と戦ったのか?もしやその時目や頭をやられたとか…」


「やられてません。実際この目で見たのです。あのアイラがゲラゲラ笑いながら他の負傷者を治療していく姿は地獄の使者の様で…」


 ブルリと震えフレデリックは言った。それは…さぞかし怖かっただろうな


「しかも2人だけではありませんでした。ラッサ大尉はとりあえずその場にいた全員に聖女の力を使える者がいないか確認した所、力の差こそありましたが、半数にも登ったのです」


 同時多発聖女ではなく、同時大量聖女だったか…


「それではその聖女もどき達もこちらに来るのだな?」


「はい。明日には到着できるかと」


「わかった。フレデリックとヒューズはもう下がっていいぞ。ゆっくり休んでくれ」


 2人が部屋を出てショーンと2人になる


「お前は商人として他国に行った時、大量の聖女を見聞きした事あるか?」


「ある訳ないじゃないですか。滅多にいないから聖女なんですよ。聖女がわらわらいたら、商人や医師は商売あがったりだし。俺だってヒューズの力を目の当たりににしていなければ、今の話しだって信じなかった」


 聖女は大抵10才くらいまでの少女が覚醒すると言う。ヒューズの様な男が、アイラの様に成人した女性がなど聞いた事はない。


 俺が知らなかっただけか?それとも他の力が作用したとか…そちらの方が納得できる。


 もしかしたらナディアやシエナの婚約者の前に現れた聖女も同じかもしれない。


「とりあえず明日ラッサ達が到着しない事には何とも言えんな。俺は見てもいないし」


「明日ラッサ大尉達が到着したら、先程のヒューズにした様な事して回らないで下さいよ。完璧なセクハラですから」


「ぐっ…わかっている」



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