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流されて帝国  作者: ギョラニスト
153/205

152話


「ち、違います!違いますからね!?別にディラン殿下を殺害しようとか考えていた訳ではないですから!」


「う、うん。そうだよね!ナディアちゃんなら殺したりするより、行方不明になったりしそうだよね」


 頷き笑いながらリシャールさんが言っているけれど、今正にこっそり出発しようとしていた私は心臓が痛い。


 しかも私を庇っているようで全然庇ってないわよね?


 あぁ…リシャールさんの後ろに控えている人達の目…もしかして私の悪評に殺人者が加わるかもしれない。もしくは謝っている人に対して燭台を振りかざす女とか思っていそう。


 これ以上の悪評は勘弁してほしい。


「何をバカな事を。ナディアが行方不明なんて…あ。…ゴホン、いやナディアは燭台をどこに片付けるか考えていた所に俺が来ただけだ」


 殿下、今過去を思い出しましたね?しかも全く動揺が隠せていない。


 後ろの兵士達の目が益々胡乱な眼差しになっているじゃない。その証拠に兵士達は剣に手をかけている。でもそれに気づいた殿下は


「俺が燭台ごときにやられるとでも?」


ハッとして兵士達は手を離した。


今の殿下なら燭台にやられてしまいそうだけど、もちろん言わないですけど


「それよりリシャール、何の用だ?まだナディアとの話し合いの途中なんだが」


「あ、そうそう。迎えがあと3日位で到着する予定だったんだけど、ちょっと足止めくらって、もうちょっと時間かかるみたい。さっき鳥が手紙運んできたって」


 え?迎えに来てもらえるの?てっきり自力でハイドン村へ行くか、またぷっぷちゃんにお願いするのかと思っていたわ。


 ぷっぷちゃんずっと寝ているけど


「そうか。良かったな、ナディア。お前の侍女やら護衛も来るんじゃないか?」


「まあ!」


 早く会いたい!エアリーやグレタ、アイラさんにコニーさん。みんな来てくれるのかしら?


 俄然楽しみになってきた!


 でもそれまではここにいなければならないのよね…別にフォールダー領が嫌いとかではなく、皆んなもいなくて淋しいのかも。温泉も無さそうだし。


「なら、話し合いの続きをさせろ」


「お話し中申し訳ありませんが、ナディア様にお会いしたいとシエナ様とプリシラ様が…」


 リシャールさんの後ろに控えていた兵士やメイドの間から2人が顔を覗かせた。


 ええぇ…今日はもう疲れきっているからお引き取り願いたい。もちろん顔には出さないけれど何か言い訳を…


「ナディア様!ちょっとお話しがあって!ナディア様もワンピースに着替えていると言う事はまだまだお元気でしょ」


 元気にプリシラ様が部屋の中に入ってきた。何故この国の人達は部屋の主人の返答を待たずに入ってくるの?


 チラッと殿下を見ると殿下は既に私を見ていた。ビックリして目を見開くとコクリとうなづいた。殿下やっと意思疎通できましたね!


「よし。ならばナディアの淹れた茶を飲みながら話しをしよう。他の者達は部屋から出てくれ」


キィーーー 殿下のバカ!!何一つ私の思いを汲んでくれない上に私にお茶を淹れさせようとは!


この恨みはらさでおくべきか…


 やけくそで淹れたお茶をテーブルに置き静かに微妙なお茶会もどきが始まった。


 一応メイド達が気を利かしお茶菓子を置いていってくれたのが救いかもしれない


「で?ナディアに話とは何だ?俺の新しい婚約者の話なら…」


「その話はもうよいのです。先程も今も見せつけられましたから」


「見せつけるとは何だ」


「目と目で会話をしていたではないですか」


 殿下とプリシラ様の不毛な会話をよそにシエナ様は黙ってお茶を飲んでいる。


 私も参加する気はないのでお茶を飲みスコーンに手をつけた。美味しい…そう言えば空腹だった事を思い出し、いっそ軽食にしてもらえば良かったかもと思いながら次のお菓子に手を伸ばす


「ナディア様は殿下と仲がよろしいのですね」


「んぐっ。………その様に見えましたか?」


「ええ。言いたい事を言い合えるのは、心が通じ合っている証拠ですわ」


 何一つ通じ合っていませんよ…


「…そんな事はないですけれど…シエナ様のご婚約者様はどのような方なのですか?」


 ちょっと話を逸らしてみた。


 こんなに疲れているとおかしな事を口走りそうだから、相手に喋らせるのが一番。


「どんな…そうですね。無口な方、でしょうか」


「そうなのですね」


 どうしましょう会話が終わってしまった。再びお菓子を食べても良いかしら?手を伸ばしフィナンシェを口にするとシエナ様がおもむろに


「ナディア様は自分にだけ無口な殿方をどう思います?」


「自分にだけと言うのであれば、嫌われているのかしらと思いますけど…」


 …ハッ!もしかしてやってしまった。みるみる内に萎れてしまったシエナ様を見るに、今のお話しはシエナ様ご自身の事よね?


 フィナンシェの糖分が身体中巡り、頭までたどり着いた時私の口が爆発した


「ただですねシエナ様の場合、美しすぎて何を喋ったら良いかわからないとか恥ずかし過ぎて言葉が出ないとか緊張で口の中がパサパサで上手く喋れないとかじゃないですか!?」


 一気に喋ってしまったけれど、どうかしら?


 シエナ様が嫌われているのではなく、お相手に問題があるのでは?と言う意味を詰め込んで申し上げたのですけど!


「えっと…ありがとうございます。でもそうではなく…」


 シエナ様は少し困ったように笑いそう言った。


 美少女っぷりが原因ではないと?





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