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流されて帝国  作者: ギョラニスト
152/205

151話


 あぁ腹が立つ


 ボスボスボス 


 クッションに八つ当たりした所で、この怒りが収まらないのをわかっていても殴らずにはいられない。


 あの後、勿論違うと訴えようとしたけれど、みんなして『まぁまぁまぁ』と言うだけで生温かい目をやめない。


 挙句の果て奥の方にいたはずの陛下と王妃様までやって来て


「ディラン…立派になったのね。誰かと一緒にいたいと思うようになるなんて…」


 目頭を押さえた王妃様の肩を抱いた陛下が


「孫の顔が見れるかもしれんな」


 と呟くと周りから拍手喝采が沸き起こって、白目になりそうになった。


 この状況で、言っていた意味が全く違いますとはとても言えなかった。


 殿下は殿下で怒りを爆発させ


「アホかー!誰のせいでこんな話しになったと思ってるんだ!大体お前らがナディアに…」


 とプリシラ嬢に向かって叫んだら


「ハァ…殿下がそこまでナディア様を思っているなんて…負けましたわ」


何に?


「そこまで想い合っているなら、このプリシラ・ビィ・フォールダーお2人を応援いたしますわ!」


 やめてちょうだい!私は婚約解消したのよ。たった今!


 その後部屋までどうやって戻ってきたのか、気づけば部屋にいてクッションを殴っていた。



 ベルを鳴らしやってきたメイド達にドレスを脱ぐのを手伝ってもらい、化粧を落としバスタブに入る。


 ほ〜〜〜〜やっと息ができた気がする


 ………やってしまった。怒りに任せて婚約解消してしまった。


 呼吸と共に自分が何をしたか思い出し、温まっているはずなのに血の気が引いてくる。


 けれど、言ってしまったものは仕方ない。


 ここを出て行く準備をしなくては。迅速かつこっそりと。


 最後の陛下やその他の人達は、勘違いして痴話喧嘩だと思っていたようだから、引き留められる可能性がある。


 あんな風に殿下に文句を言った手前合わせる顔もない。


 婚約延長の締結を結んだ時、約束したのは私の命を守ると言う事。


 全面的に私を守るなんて言ってなかったのよね。それなのに私は殿下に普通の婚約者を求めてしまった。


 でもね、人として普通庇うわよね。やっぱり許せないわ。


 風呂から上がり髪を乾かしてもらった後メイド達には下がってもらった。


 急いでクローゼットへ行き、シエナ様のワンピースに着替える。


 シエナ様、ごめんなさい。後で必ずお返しします!


 そして鞄を探す


 あった!少し古い鞄を見つけ引っ張りだし、急いで他の着替えなどを詰めていく。


 何はともあれエアリーやグレタの元へ行き、私の荷物を受け取ろう。


 シャナルで受け取った宝石を換金したら…


 その後は?シャナルに帰る?そのまま温泉巡る?


 ううん、やめましょう。


 今考えるのはそこじゃない。


 とりあえず荷造りだわ。鞄を引きずり居間に戻り金目の物を探す。


 フォールダー辺境伯ごめんなさい。後で必ずお返しします。今の私にはお金も金目の物もないのです。


 暖炉の上にある燭台を鞄に詰めてみる。ちょっとはみ出しているけれど押し込んだら入るかしら?それとも武器のように携帯しようかしら?


 ぷっぷちゃんはワンピースだからお腹に巻けないからやっぱり鞄の中に入れるとして、燭台はやっぱり腰に携帯して…


 悩んでいるとノックの音がした。こんな時間に誰かしら?


 ここで泥棒しているのがバレたら大変だわ。寝たふりをして返事をしないか、急いで鞄を隠すか…


「ナディア、俺だ」


扉が開き殿下が入ってきた


「殿下!返事があってから入って下さい!」


「あ、悪い」


 全く相変わらずデリカシーのない…って殿下!?殿下の視線が鞄に向いている


「あのっ、これは…」


「どこかに行くのか?」


「…その…もうここにはいられないかなぁとか思ってですね、それで…」


 どうしましょう。ここで謝ってしまおうかしら?でも腹が立ったのも本当だし、しかも泥棒までしているし!


「ナディア!悪かった!」


 え?


 殿下が胸に手を当てて頭を下げた


「や、やめて!頭を上げて下さい!」


 何故ここで殿下が謝るの!?お茶を飲んで魔力取り戻したいから?それにしたって皇太子は軽々しく頭を下げてはいけない。


「晩餐会でナディアが仲間外れにされていたり、ナディアの目の前で、他の婚約者をあてがわれそうになった時も俺は…俺には判断が出来なかったんだ」


 …どうゆう事?

 殿下は頭を上げないまま


「初めてだったんだ。晩餐会」


!?!?晩餐会が…初めて?


「前にも話した通り、俺はリシャールに育てられ、魔力が抑えられる様になってからは戦場ばかり行っていて、晩餐会も夜会も舞踏会にも行った事なくて…」


 …嘘


「冗談だったりしたらと思って何も言えなかった…」


 そんな…殿下の事も考えず、私は皆んなの前であんな風に…殿下はそのまま膝をつき


「許してくれとは言えないが、次同じ様な事があったなら2度と繰り返えさない。だからもう一度…」


「そんな!私の方こそ…」


 私は駆け寄り殿下にやめてと言おうとした瞬間


コンコン 

ガチャ


「やぁ!ここにディ…ラン?」


 リシャールさんがノックと同時に扉を開け現れた。


 後ろに兵士とメイドを引連れて。


「ナ、ナディアちゃん…」


「リシャールさん?あの、ノックの後、返事があってから扉を開けてくださいませんか」


「え?あぁ。うん。そうだね。…ごめん…あの…」


 何かしら?私達は今とても大事な話しをしているから後にして欲しいのだけど…何故か皆んな私の手元を見ているのかしら?


「も、もう、許してやってくれないか?ディランもそんなに一生懸命謝っているし、暴力は良くないよ!ディラン死んじゃうから!」


 ハッ!私の手には逆さにした燭台。


 私達はもしかしたら跪き私に許しを請う殿下と、その殿下を燭台で殺害しようとしている私


…に見えてる?




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