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流されて帝国  作者: ギョラニスト
142/205

141話


 あっ!思い出したわ。


 セラさんと同じ顔。そう言えば双子とか言っていたわ。大分大柄で目つきが悪いけれど、顔はほぼセラさん。あ、髪型もかなり違うわね。


「…セルゲイのおっさんは中にいるんだけど」


 言うや否やノアさんの手のひらに光が集まりだした


「待て。俺だ」


 殿下はそう言うなり手のひらから魔道具を落とし、元の姿に戻った


「ディ…ラン?」


「そうだ…」


「…んな訳ねぇな。ディランならこんな魔道具いらねーからな!」


 ノアさんは言うなり魔法で私達を後ろ手に縛り上げ、膝をつかされた。


「ウギャ」


 衝撃で握っていた魔道具を落としてしまうと


「ん?何でメイド?本物?それとも変装?」


「あ、変装…です」


 …この人怖い。顔はセラさんなのに雰囲気はまるで違う


「あんまり脅かすな。俺の婚約者だ」


「フン。随分お粗末な賊だな。殿下の婚約者は伯爵位以上のおウチのお嬢様だけなの知らないの?」


 ヒドイ!こう見えても公爵令嬢よ!今はメイド服だからわからないでしょうけど、滲み出る気品とかわからないのかしら!?なんてとても言えない。


 殿下と私を無理矢理立たせ扉番をしている兵士に誰ソレを連れてきて連行しろとか指示している。


 どうしたら良いのか、殿下を信じてもらえないとなるともう手立てがない。また牢に逆戻り…


 今度こそダメかもしれない


「いいのか?俺にこんな事して。バラすぞ」


殿下がボソッと呟いた


「は?何バラすのさ。あのなぁディランに顔が似てるからって騙せると思ってんの?この細い首、肩、脚、もう首から下ぜ〜んぶ偽物だろ」


 殿下の身体をツンツンしながらノアさんが言った。


「11才だったよな?最後のおねしょは」


え?

殿下は不敵に笑った


「バッ、バカな事言うな!そん、そんな年でおねしょする訳ねーだろ!!」


 明らかに動揺しているわ。


「13才の時雑貨屋の娘と初めてのデートで…ムゴッ」


「わーー!!」


 ノアさんは殿下の口を塞ぎ何やら震えている。それでもしばらくしてから


「…本当に…ディランなのか?」


「ムガッ、ムググ」


「あ、悪い」


ノアさんが殿下の口から手を外すと


「そうだと言っている。他にも喋っていいか?王宮の厨房で働いていたナタリーと…」


 殿下が喋っている途中で後ろ手に縛り上げられた感覚がふと無くなった。


「やぁディラン、こんなに早く会えると思わなかったよ。長旅大変だっただろ?」


 ノアさんはにこやかに言いながら殿下の服の汚れを払っていく。


「やっと認めたか」


「やだなぁ。ちょっとカマかけただけだ。そう言えばセラは?あ、アイツは居残りだよな。基本的に」


 うんうん言いながら急に態度を改めたノアさん。恐ろしいくらいの変わり身だわ。


 でもこれで無事陛下にお会いできる。安堵の息を吐くと


「ディラン、こっちだ」


 と殿下の肩をポンポンし部屋の中に案内し始めたノアさん。慌てて後に続こうと足を踏み出したら


「メイドはここまでだ。ここから先は…」


 肩をポンと押され扉の外に出された瞬間腕をつかまれ


「ノア、さっきも言っただろ。コイツは俺の婚約者だ。ナディア、こっちへ」


「「「えっ!?」」」


殿下に肩を引かれ先に進もうとすると


「ディラン、いくら婚約破棄されまくったからって平民はダメだろ」


はい!?


「何を言ってる。ナディアはれっきとしたシャナルの公爵令嬢だ」


「嘘だろ…」


何この失礼な人は!


「初めまして。シャナル国から参りましたクロード・ド・マイヤーズの娘、ナディア・ド・マイヤーズと申します。以後お見知りおきを」


最上級の礼をした。メイド服でだけど。


「あ〜………大変失礼いたしました!!そう言えば新しい婚約者がどうのって誰かが言っていたような?俺はノアと申します」


 3人でビッと敬礼してきた。フン、何を今更と言いたい所だけれど、とにかく早く陛下にお会いしたい気持ちでグッと我慢した。


 それにしても何故こうも貴族令嬢に見られないのか…今度誰かにきいてみよう。


 シャナリシャナリと殿下に続く。


 部屋に入るとセルゲイさんと私が変装するはずだったオリビアさんがいた。


 そうでした。このような面立ちでしたわねとじっくり見つめていたら突然駆け寄ってきて


「ナディア様!?何故このような所まで!?」


「す、すみません!」


思わず謝ってしまう勢いで詰め寄られる


「一体どうやって…いえ!それよりメイドの格好までされて…」


 いえ、メイドはまだマシで、つい先程までずーっと軍服でしたと言ったらどのような顔されるのきしら?なんて思っていたら奥の扉が開き陛下と王妃様が現れた。


 あぁやっとお会いでき…


「てめぇ…一体今までどこにいたんだ!クソジジイ!!!」


 クソジジイ!?

唖然としていると


「クソジジイとは何だ!久しぶりに会ったと言うのにもっと他に言う事あるじゃろ!?クソガキが!」


えええ!?陛下が応戦!?


「さ、ナディア様。お疲れでしょう?どうぞこちらへ」


 オリビアさんがグイグイ押してきてこの場から離れようとする。


「え?ちょっと待って…」


 私はこの場にいない方が良いという事かしら?お話ししたい事も沢山あるのだけど…


「ナディア様、この親子喧嘩に巻き込まれたら面倒くさいですよ」


 ボソッとオリビアさんが言った。


 面倒くさいって…どうしようかと思っていたら王妃様と目が合った。とたん王妃様は手をヒラヒラと振っている。オリビアさんといってらっしゃいと言う事かしら?


 仕方ないのでおずおずとオリビアさんの後に続いた



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