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流されて帝国  作者: ギョラニスト
141/205

140話


 リシャールさんの叫びが遠ざかると同時に、廊下を走る人も減ってきた。


「あの…今、リシャールさんを追って説明してもらった方が良いのではないでしょうか?」


「俺も一瞬そう思ったが、あの様子だとここに飛び込んできたは良いけど、信じてもらえずって感じじゃなかったか?」


 確かに…殿下同様リシャールさんも顔を知られていないものね。


 だけどこの先どうやって陛下の部屋へ向かうのかしら?陛下がいるとすればこの上の階。建物に入る時、3階建てなのは確認したのだから最上階にいる筈だけれど、問題があるとすれば階段にも扉前にも兵士がいる事


「ナディア…」


 …何かしら?私の顔を見てフイと顔をそらした


「…何でもない。よし。そろそろ出るぞ。走れるか?」


 ものすごく気になる間だけれど今は早く陛下にお会いして、ショーンさんとヒューズ君を助けなければ。後できいてみましょう。


「はい。」


 これが軍靴だと多分まだ足腰がプルプルしていたけれど、今はメイド服にパンプス。ヒールも殆ど無いから、軽いし楽なのでまだ走れてよ。


 殿下は注意深く辺りを見回しそっと扉を出るので私も後に続く。殿下はどうするのかしら?


 すると殿下がポケットから何か出して私の手に握らせた。


「これは…幻覚を見せる魔道具?」


 ハイドン村でショーンさんに手渡された物とよく似ている。殿下は驚いた顔で


「よく知ってたな。そうだ、これを握り祈る事で相手には違う人物やモノ、動物に見えるようになるんだ。ただし使えるのは一回限り。」


 ゴクリ。思わずツバを飲み込む。


「しかも身体を密着させる必要がある。ただ俺がおぶって行くにしても、階段から扉前まで魔力が保つかどうか…」


「み、密着…おぶるのですか?手を繋ぐとかは?」


「手を繋ぐ位離れているとナディアの半分程幻覚からはみ出してしまう」


 はみ出す…半分幻覚で見せている誰かで、半分私…怖すぎる。


 でも担がれたりお姫様抱っこされたりしているけれど、あの時より少〜しだけふっくらしている。さらにぷっぷちゃんをお腹に巻き付けているから更に重いと思われてしまうかも…


ハッ!


「殿下。私もう一つ持ってます」


 ポケットに手を入れハイドン村を出る時、ショーンさんから渡された石を出すと


「でかした!これなら何とかなりそうだ」


 良かった…ドレナバルに来てから全く良い所を見せれなかったから、これで少しは役に立つって思われたかしら?


ジリジリと階段に近づき殿下は


「よし。ここで祈るんだ!俺はセルゲイになる。お前はオリビアになるんだ」


 だ、誰でしたっけ!?オリビアさんて!


 一瞬にして殿下はドレナバルの首都に到着した時出迎えてくれたセルゲイさんになった。


 オリビアさん…オリビアさん…出迎えてくれたり、ほんの少し挨拶した後…温室でマデリーン嬢にからまれた時来てくれたわ…髪を引っつめた、ちょっと厳し目な顔で…その後王妃様に会って…ほんの一瞬王妃様の顔を思い浮かべてしまった


「なっ!?何故母上なんだ!」


 しまったわ。やり直しはできないかしら?


「全く…一度かかったら魔道具を手放すまで変えられない。仕方ないからこのまま行くぞ」


 小声で怒鳴ると言う高難度な技を披露しながら殿下は言った。仕方ないじゃない。顔がすぐに思い出せる程オリビアさんとは会っていないのだから。とは言えず


「すみません」


 とりあえず謝っておいた。後で必ず文句を言おう。


 私達は背筋を伸ばし静々と階段を登る。階段の先には2人の兵士が見え、私達を認めるとビッっと背筋を伸ばし


「王妃様、セルゲイ様いつ階下に?」


 …チラリと殿下を見上げる。


 私、言い訳なんて用意してませんよ?


「王妃様が何か召し上がりたいと仰ったので食堂へ。多分交代の時間だったのでしょう。先程は誰もいなかったから」


 シレッと嘘をつく殿下。しかもこれで王妃様食いしん坊認定になるのでは?


「失礼しました。階下で不審者が出たと報告がありましたのでどうぞお気をつけて」


「あぁ、わかった」


 そう言って殿下は階段を登り始めた。


 ドキドキドキドキ…自分の所作はちゃんとできていたかしら?全く自信が持てないでいると


「なぁ、セルゲイ様と王妃様ってやっぱり…」


「シッ!まだ聞こえるかもだぞ」


 聞こえててよ。


 先程の階段に立っていた者達が小声で話しているけれど、吹き抜け気味の階段は音が響く。


 どうしましょう。私達のせいでセルゲイさんはともかく王妃様に不倫疑惑が浮上したら…しかも食いしん坊まで。


「気にするな。ドレナバルの国民は昔から色々と噂話が大好きだ。そして貴族連中はその噂話に悪口を織り交ぜ広げる」


 妙に納得だわ。シャナルでも社交界での噂話は大抵良い話なんてなかった。


 今もシャナルで私は色々と言われているのでしょう。でもきっとここドレナバルでの噂話に比べたら可愛いらしいモノよね。


 そんな事を考えていたら一際豪華な扉と2人の兵士が目に入った。


 ここを乗り越えたらいよいよ陛下にお会いできる。手のひらに汗ビッショリだわ



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