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流されて帝国  作者: ギョラニスト
140/205

139話


「ちょっと!何なの!?このピラピラしたデザート?あたしが何も知らないと思ってバカにしてるんでしょ!?」


 物凄い勢いでさっきから怒鳴りまくり、手当たり次第物を投げつけるエレアナ様。


 いや、私が様付けをする筋合いは全く無いのだけれど、何となく付けてしまいたくなる美少女。紺色のタイトなドレスがとても良く似合っているわ。


 私は投げつけたであろう物を拾いつつ周りをこっそり見る。


 部屋を見る限りただの客人ではなく、相当身分の高い人ではないのかしら?それにあのクリーム色の肌はこの大陸にはほとんどいない。


 あら?エレアナ様の座っているテーブルの横にあるワゴン、あれはアルコールランプかしら?切りかけのオレンジとお酒の瓶…クレープシュゼットでも作ろうとしていた?


「こんなのデザートでも何でもないじゃない!!早くケーキとか持ってきてよ!よそ者だからって適当な物でもわからないと思ってるんじゃないの!?」


 凄い怒り様で可愛い顔が台無しだけれど、よそ者なの?いじめられているのかしら?


「これはクレープシュゼットの作りかけだろ…ですよ。怒鳴り散らしてコックや給仕を追い返したんじゃない…ですか?」


 すごい!殿下がクレープシュゼットを知っていたなんて!!思わず片付けていた手を止め振り返る。


「ク、クレー…プシュゼ?何?本当にデザートなの?」


 怒りのボルテージが少し下がった様なエレアナ様に、殿下は無言で頷きアルコールランプに火を点し小さなフライパンに砂糖とバターを大量に入れ出した。


 ま、まさか殿下が料理を!?そして横に置いてあったオレンジを半分に切り、握り潰し果汁をフライパンに入れる。


 …本当にクレープシュゼット?あんなに豪快な料理だったかしら?そこに焼いてあったクレープを入れ酒瓶からダバダバと振りかけると


「キャー!!」


「うおっ!」


 青い炎が豪快に立ち上がりエレアナ様の羽織っていたショールに燃え移った。


 エレアナ様は驚きの余り立ち上がりショールの炎を消そうと暴れだす。


 運悪く振り回した腕が殿下の酒瓶を持った手に当たり殿下の手から酒瓶が落ちていく。


 スローモーションでフライパンの上に 


 ガチャン 


 割れた酒瓶から溢れたお酒は炎を纏い辺りに飛び散り、テーブルクロスやカーペットに引火していく。


 とんでもない大惨事に動けないでいると、殿下が指先からチョロチョロと水を出しエレアナ様のドレスに一生懸命かけていた。


 いけない!慌てて近くの花瓶を手に取りエレアナ様にぶち撒けると、白い煙を上げドレスの火は消し止める事はできた。けれども部屋はあちこち飛び火した所から炎が上がり始めた


「ひ、ひ、人殺しーー!!誰かー!」


 ほんの少し髪先が焼けてしまったエレアナ様が叫ぶと同時に、殿下に手を引かれ部屋から飛び出る。


 部屋から叫び声が聞こえてくるけれど、叫べるって事はご無事なのよね?


 死ぬ気で殿下に着いて行き、バカみたいに長い廊下を走る。けれど階段を駆け上がる頃には限界がやってきて、階段に躓いてしまった。


「ウギッ!?」

「プギッ!?」

「スマン。ちょっと我慢しろ」


 お腹のぷっぷちゃんを庇った為、顔から激突する直前殿下が私を小脇に抱え階段を駆け上り始めた。


 階段を離れきらびやかな扉の部屋に入りようやく殿下は止まった。どうやら空いている客間のよう。


「ハァハァハァ…ここまで来れば大丈夫だろ」


 殿下に降ろしてもらいゼィゼィしながら扉の隙間を覗くと、走り回る人が徐々に増えてちっとも大丈夫とは思えないけれど息が苦しくて反論もできない。


「いたぞ!!」


 見つかった!?ビクリとすると離れた所から


「怪しい下男が二人いたぞ!」


怪しい下男…まさか


「チッ…あいつら捕まったか…」


 誰のせいだと思っているの!早くあの二人を救い出しに行かなければ!扉に手をかけるとその手を殿下に掴まれた。


「殿下?」


「今行くのは得策じゃない。先ずは陛下に先に会って助けた方がら…いや、陛下に会う事を優先しよう」


 今陛下に会って助けた方が楽だと言おうとしたのでは?冷たい視線を送ると


「何か腹立つ顔つきだな。今助けに行って俺達まで捕まったら、今度は厳重に監視され逃げる事も叶わないぞ。その上裁判も無く打首にでもなったっておかしくは無い」


「ドレナバルではそんな事が許されるのですか?そんな無法国家ではないでしょう?」


「一応法治国家だ。ただ、ここでは民族性なのか、領主のフォールダー辺境伯と相まって独特な法も存在している。」


「独特な法って…」


「シッ」


 殿下に口を押さえられた。廊下で走り回る人が増えてきて


「エレアナ様の部屋から火が上がったらしい!」

「早く水!水持ってこい!」

「いや魔法使いを呼んでこい!」

「急げ!」


 叫びながら階下に走って行く。最上階の人が減れば私達は陛下に会いやすくなるのに、部屋から出る事ができない。


 もどかしい思いで部屋の中で様子を見ていると


「ちょっとやめてよ!僕もうほとんど魔力残って無いんだって。早く陛下に会わせてよ!ノアでもいいからー!」


 リ、リシャールさん!!何故ここに!?


 あ、確か凄い魔法使いは飛べるんでしたわ。


 両脇を兵士にガッチリ掴まれ連行さながら連れて行かれるリシャールさん。


気の毒すぎる…



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