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流されて帝国  作者: ギョラニスト
138/205

137話


ガチャン


「いきなり何するんですか!?」


 ショーンさんが叫び、ヒューズ君の必死の抵抗虚しく全員に手枷が嵌められた.


「オイラ達怪しくないんだって!しかもまだ城門前で入ってもいねぇのに!」


「あほぅ。城門前に隊服着た怪しいヤツだろ。怪しいヤツは全員ひっ捕えろって上から言われてるんだ」


 横暴過ぎる。そして上から言われると言う事はこの人達はやっぱり兵士なのかしら?


 ふと殿下を見ると自分の両手に嵌められた手枷を見て呆然としている。何をボーッっとしているの!?ここは殿下がガツンと言わなければならない場面でしょ!?


「コイツら全員こんな細っこくてよく兵士になり変わろうとしたもんだなぁ」


 一人の兵士が言った。細い?私の事かしら?


「普通侵入しようとするヤツは商人や旅芸人とかになり変わるよな。まぁいい。牢にぶち込んでちょこっと突けば何が目的かすぐ吐くだろ」


 え?ちょっと待って。このまま牢屋に入れられるの!?嘘でしょう?


 ショーンさんとヒューズくんが必死に抗議しているが、肝心の殿下は無言のまま。たかが魔力を失ったくらいでここまで腑抜けてしまうとは…


 兵士達は私達の腰を縄で括り手枷と繋げていく。これではまるで奴隷か罪人の様な扱いに涙が出そうになってくる。すると一人の年配兵士が殿下に向かって


「おいお前、のっぽのクセに痩せ過ぎじゃねぇの?あのチビっ子より細いとか…もっとちゃんとメシ食わねぇと」


 何ですって!?チビっ子とは私の事!?違うわ!私のお腹にはぷっぷちゃんが巻き付いているからであって、決して殿下より太っている訳ではないわ!


 声を大にして言いたい。けれどここでぷっぷちゃんを出したら更に怪しさが増してしまう。もどかしさと腹立たしさで唇を噛み締めている内、私達はそのまま連行されてしまった。


 城門の横の小さな扉を開けゾロゾロ中に入るとあまり人はおらず、更にその奥には灰色なお城?要塞?今まで見て来た中で一番無骨な建物が目に入った。


 もしかしてフォールダー辺境伯の住まいであるこのお城があるだけで城下町はないとか?まさかねぇ…


 すぐ脇道に入り城の裏側らしき所に到着してしまった。フォールダー辺境伯のお城凄く小さくないかしら?本当にここで合っているのか疑問さえ浮かんでくる。


「お前らはここで一晩明かして明日から尋問な」


 カビと饐えた匂いがする鉄格子の中に4人一纏めにして入れられた。


 他に捕らえられた人はいないようで、門番らしき人すらいない。


 多分私達は逃げる事もできない腰抜けだと思われているようで、手枷は嵌められたままだけど腰紐も外されてある意味牢屋の中でご自由にどうぞと言う事なのね。舐められすぎている


 それにしても信じられない。一体何がどうしてこんな事になっているのか…あんまりな流れに涙も出ない。


「殿下〜どうするんですか〜」


諦め口調でショーンさんが尋ねた。


「とりあえずここは臭いから出たいんだが」


 出たい理由が臭いからなんて、殿下の頭は本当に弱いのかもしれない。苛立ちと情けなさと諦めのごちゃ混ぜな感情でそんな事思っていたら


「殿下、どうします?」


「とりあえず出るか」


 うん?ヒューズ君と殿下のおかしな会話にショーンさんと顔を見合わせる


「ヒューズ、一人でできるか?」


「う〜…魔力封じが解けなくて…」


「このパターンの魔力封じは…」


 え?手枷外すの?外れるの?ここで手枷の外し方の講義?


「あっ!」


ガシャン 


 ヒューズ君の手枷が床に落ちると


「そうだ。よくやったな。ちゃんと覚えておけよ」


 殿下も満足そうに声を掛ける。


 偉いわ、ヒューズ君良くやったわね。と私も一瞬褒めそうになったけれど、そうじゃないわ!


「殿下!褒めてる場合ではありませんわ。こんな簡単に外れるのでしたら始めから何とかなったのではないのですか?」


 無性に腹が立ってきた。公爵令嬢だった私が何故こんな目に合っているのか…私が怒りにまかせそう言うと

「ここの城は中に入るのが大変なんだ。俺を信じてもらえないなら捕まった方が楽だろ」


 冗談じゃないわ。あんな連行のされ方をして矜持とか羞恥心とか何もないのかしら!?


「何を怒っているのか知らんが、ここの砦は昔から入るのも出るのも一筋縄ではいかない。それに、朗報もある」


「ヘーソウデスカ」


 こんな時に朗報?やさぐれた私の心からの声がうっかり出てしまったけれど、殿下は気にせず


「ほんの僅かだが、俺の魔力が戻ってきている様だ」


 殿下は手枷を嵌めたまま手のひらを開いたり閉じたりしている


「本当ですか!?」


「うおー!やった!!殿下の魔力戻ったら百人力だ!」


ショーンさんとヒューズ君が大喜びしているけれど


「殿下、本当ですの?いつ頃気付かれたのです?」


「ん?気づいたと言うより、この手枷は魔力を封じる魔道具が仕込まれているのだが、力ずくで外せないと言う事はそうゆう事だろ」


え?


「それだけですか?」


 もっと漲る何かがあるのかと思ってしまった


「それだけでも十分だろ。戻るのかどうかも怪しかったからな」


「そうですよ。ナディア様!殿下かなりのピンチだったんですよ!この先殿下の魔力が戻らなければ廃嫡まっしぐらで、俺は責任取らされて処刑される所だったんです!」


 ショーンさんが力説する。


 あら、そんなに大ごとでしたのね。てっきり何日か休んだら戻るのだと思っていたわ。


 廃嫡に処刑って…私も無関係ではないではないの。廃嫡された殿下と大陸を放浪する未来を想像してちょっと怖くなった。


 大陸中の温泉巡りをしたいと思っているけれど、決して彷徨い逃げながら温泉巡りをしたい訳ではない。正規ルートで安全安心に巡りたいのよ!


 その後ヒューズ君は全員の手枷を外し《魔封じの手枷》を外すを完全に会得した。


 さらに殿下がピンで牢を開け、私達は無事牢屋から出る事ができた。


 殿下って本当に皇太子なのかしら?普通の皇太子は牢をあっさり開けたりしないわよね。




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