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流されて帝国  作者: ギョラニスト
135/206

134話


 ショーンをラッサに任せた後一度執務室に戻り残っていた書類を片付けた。これを片付けたらナディアの所に行って、きちんと説明をしてからフォールダー辺境伯の所へ行き…



「…ラン!」


なんだ?うるさい


「ディランってば!」


ガバッと身体を起こすと心配気なセラと目が合った


「ちゃんとベッド行って寝なよ!こんな机に突っ伏してたら死んだかと思うじゃん」


寝てた?こんな所で?


「あのさぁ、ディラン今普通の状態じゃないんだからちょっとは気をつけてよ」


「スマン」


 …そうか。魔力がないと徹夜で動く事もできないのか。


 ノソリと椅子から立ち上がりベッドに向かう


「ちょっとちょっと!ベッド入る前に風呂入って!風呂!魔力無いんだから勝手に清潔に保たれないの!ナディア様毎日風呂入ってたでしょ?」


「……ハァ〜〜1日くらい風呂に入らないからと言って死ぬ訳じゃあるまいし。俺はもう寝る」


 面倒くさい。本っ気で面倒くさい


 まだ何か言いたそうなセラを部屋からつまみ出し、寝巻きに着替えとっととベッドに潜り込む。


 魔力が無い事がこんなに不便とは…筋力がなければ動く事もしんどく、体力も無くなり正に生きているだけで精一杯だ。それなのに沢山着込むだの風呂に入るだのやらなければならない事も盛りだくさんだ。やってられん!


 そのままふて寝したのは体力の無さか、疲れなのか目覚めたら既に日は昇っていた。まさかこんなに眠るとは…


 ただ昨日より体調は大分マシになった気がする。ベッドから降り着替えを済ましてから部屋を出た。


 建物を出る時見張りの兵士に『散歩に行ってくる』と言い残し向かったのは厩。兵士はアタフタしていたが気にせず進んだ


「おいコラ。今日は付き合ってもらうぞ。キャシー」


ブルルルル


 キャシーは一瞥した後素直に鼻を寄せてきた。いつもこうだったら可愛いのに


「ひとっ走り頼むぞ」


 ひとしきり走り少し高台にでる。久しぶりの日差しと冷えた空気、眼下に映る出来立ての首都ハイドン。


 そして震える内腿と上がる息。よもや乗馬もままならないとは…


 段々と腹が立ってきた。これでは魔力が無ければ何もできないと言っている様なものではないか。


 心を落ち着かせるため高台へ行ったいうのに、怒りながら帰り、誰もいない開けた所で走り込みから始める。新人兵士と同じ事を自分に課す事にした。


 戻るかどうかわからない魔力をアテにするよりこちらの方がよっぽどマシな気がした。


「ディラ〜ン。こんな所で何してるのさ!」


「あ?見ればわかるだろ。鍛錬している」


「ふざけんな!書類ほっぽり出して」


あ、忘れていた


「それよりラッサ大尉探してたよ。そんで出歩くな!兵士達が何事かとザワつくから」


 クソッ!全く鍛錬までままならないとは…無言で歩き出すと


「へぇ、ディランってイラッとした後は無言になるんだ」


「どうゆう意味だ?」


「だって今までだったらこの時点で僕は気を失ってるし。何か新鮮」


そうか、溢れ出ないから…


「何でニヤついてるのさ?」


「いや、別に」


悪い事だけ、と言う訳でもないらしい。



「あ、殿下。お探ししました」


 中央本部に戻り執務室へ向かう途中ラッサに声をかけられた


「あぁスマン。で?何か用か?」


「準備が整いましたので明朝出発できます。殿下は馬車をご利用でよろしいですね?」


「あぁ。頼む」


 一日乗馬して鍛錬したからと言って行軍について行けないのは自分が一番わかっている。うっかり乗馬してヘバったりしたら兵士達の士気に関わる。


 ここは大人しくしているのがベストだが、さて理由はどうしたものか…


「そこは殿下が溜め込んだ書類を馬車の中で片付ける為でよいのでは?」


「…俺がいつも書類を溜め込んでると思われないか?」


「いつも溜め込んでますよ。その点兵士全員がセラ殿の味方です」


「チッ」


「不貞腐れてないでとっとと準備して下さい。あ、ナディア様の方は明日にでも例の砦にショーンと一緒に行ける様手筈は整えてあります。他の兵士達には漏れない様細心の注意を払っていますので、殿下はナディア様の所へ行くのをお控え下さい」


そうか…そうなるか。


 俺が行く事で兵士達が何事かとナディアに張り付いては全て台無しになる。仕方ないか


 それからは明日からの行軍に備え準備を急いだ。魔力が無くなった事がバレない様、今までと変わりない風を装う。体力面やら防寒やらで荷物が多少増えるが仕方ない。


「それじゃディラン、書類は馬車に積込んであるから。それと西門にはリシャールが待機して開けてくれる手筈になってる。あと、あっち着いたらノアにとっとと帰ってこいって言っといて。気をつけろよ」


「あぁわかった。そっちは陛下達がいつ戻ってきても良いように部屋を整えといてくれ」


 夜明け前、まだ薄暗い中セラと最後の業務連絡を済ます。


 今回俺と一緒に行くのは少数精鋭の一個小隊。足手纏いはいらないと言わんばかりのメンバーで行く事にした。ラッサは俺にピッタリくっつきつつ陣頭指揮も取ると言うハードさだがラッサなら平気だろう。


「行軍開始!」


 先頭の掛け声と共に出発しハイドン村を出た所で魔力も加わりスピードを上げる頃か?と思っていた瞬間急ブレーキがかかった。


「全員停止!ラッサ大尉!前方にっ!」


 何だ?馬車を取り囲む兵士達にも緊張が走る。敵?こんな所に?


「馬車付近3頭を残し全員前へ!」


ラッサの掛け声と共に兵士達が前に動き出す


「殿下!」


前に行った筈のラッサが戻ってきた


「どうした?」


 俺の隊の、ましてや精鋭部隊が簡単にやられる訳がない。


馬車を降り目に入ったのは…


「どうゆう事だ?」


 そこにはナディアが乗っている筈の寝台馬車があった




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