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流されて帝国  作者: ギョラニスト
132/205

131話

ディラン視点です


 その情報がもたらされたのはコンラッドが旅立ってから数日後の事だった。


 ヤツは去り際ナディアの評判を更に落として旅立って行った。ただでさえ何故かナディアの評判は悪いのに全く忌々しい。


 結局東門も開放し、明らかに変装してる兵士等除いてほぼ中に入れざるを得なかった事も俺の苛立ちを加速させていた。

それにしても…


「なぁ、何でナディアはあんなに評判悪いんだ?」


 もしかして俺が気付かないだけで、本当は底意地の悪い面でもあるのか?陰でこっそり兵士達に傍若無人な振る舞いをしているとか?

…想像もつかんな…


「えー、ディランが担いだり無茶苦茶したからじゃないの?そんな事よりこの書類数字間違えてるんだけど」


 そんな事とは何だ。


 すっかり立ち直ったセラは『無』になっていた期間を取り戻すべく働いている。あの鬘がお気に入りで他は被ろうとはしない事以外は至って普通だ。


「俺は書類仕事は好きじゃない。それより俺のせいなのか?」


「好きじゃなくてもちゃんとやってよ。ナディア様の事だけど、ディラン、ちゃんとエスコートしたりとかした事あるの?」


 …自分では今までの令嬢と同じ様に接していたと思っていたけれど…


「情勢が情勢だけに仕方ないだろ。エスコートする場なんて無いし」


「そうゆう態度じゃないの?兵士達は結構見てるんだよ。ディランが適当に扱ってるって思われて、結果ナディア様なら悪口言ってもいいって思われたんでしょ?あんまりメジャーじゃない国の公爵令嬢だから尚更。それにナディア様ちょっと間抜けな所もあるし」


 そんな事で?こんな状況で蝶よ花よと扱いドレスや宝石を送り毎日優雅にお茶を飲めと?バカバカしいにも程がある。


 それこそ戦場と変わらないこの場所でそんな事したらそっちの方が顰蹙を買うだろ。そう反論しようとした時ノックもせずラッサが入ってきた。


「殿下!居場所が、陛下の居場所が分かりました!」


ガタッ 


 思わず椅子から立ち上がり駆け寄った


「どこだ!?無事なのか!?」


「はい。ノアからの手紙がここに」


 ノアとはセラの双子の兄で、大怪我をして戦線離脱していたヤツだ。元々セラと違いゆくゆくは将軍になるであろう生粋の軍人で、リハビリと称してちょっと陛下を探しに行くと勝手に行ってしまった。我が儘この上ない人物だ


「見せて!」


手紙を取り上げたセラが目を通すと


「クッ…相変わらず字が汚い…」


 お前の兄だろう。俺はセラから手紙を受け取り手紙を読む。辛うじて読めなくはない字で


『陛下発見。フォールダー辺境伯の砦に匿われ元気そう』


 手紙とも報告書とも言えない様な代物だが、内容に安堵の息を吐いた


「フォールダー辺境伯か…遠いな」


 てっきりこの国を脱出し、姉上の誰かの国に匿われていると思っていたが。フォールダー辺境伯の砦は東西に広いドレナバルの西端に位置する。南にある他国の方がよほど近い。


「ラッサ、すぐに騎馬の小隊を編成してくれ。明日朝にでも出発したい」


「殿下お言葉ですが、今降っている雨はじきに雪になります。と言うか吹雪ますよ。今の時間帯を考えても準備の関係で明朝は無理ですよ」


「チッ」


 思わず舌打ちしてしまう。冷静に考えれば分かる事なのに、人に言われて気付くとは動揺しているのだろう。


「天候次第出発できるよう編成は組んでおきます」


 ラッサはそう言って部屋を出てしまった。とりあえず今ある書類だけでもとペンを走らせていると


「ねぇディラン、ナディア様はどうするのさ」


「どうするも何も、連れては行けないだろ。大人しく留守番くらい…」


「う〜ん…マズイかもよ?」


「何かあるのか?」


「さっきナディア様評判悪いって言ってたけど、兵士達の間で不穏な空気が漂ってるみたいなんだ。できれば連れて行ってくれた方がこっちも安心かな」


思わず眉を顰めた。


「不穏な空気?何だそれ」


「うわゎ…ディラン、漏れてる漏れてる…ちょっとショーンに魔道具借りてくるよ…」


 言いながらセラはヨロヨロと部屋を出た。

 

 不穏な空気って何だ?


 ディラン隊は基本的に貴族はいない。セラやノアは当時子爵家の令息だったが、後に意気投合し街に繰り出した頃に知り合った輩がディラン隊の礎だ。


 人の心を読む事を止めれる様になってからも仲間はどんどんと増え、知り合いの知り合いだの知人の親戚だのが入ってきたりして今の人数にまで膨れ上がった。


 正直後半に入ってきて顔しか知らない奴もいる。ディラン隊は周りで言われてる程一枚岩では決してない。


コンコンコン


「殿下またダダ漏れさせたってセラさん嘆いてましたよ」


 返事も待たず扉を開けショーンが入ってきた


「あぁ、すまない」


 このショーンと言う男だって無理矢理付いてきたしな。ただショーンの作る魔道具は中々秀逸で、今もダダ漏れした魔力を吸収する魔道具を設置し作動させている。


 ちなみに吸収した魔力は別の魔道具作りに再利用出来るよう研究しているらしい。


「もういっそナディア様達が見つけたと言う、聖なる泉へ行ってきたらどうです?ちゃちゃっと魔力吸われてきたらいいんじゃないですか?」


 最初の頃の様な愛想もなく口は悪いが、たまに的確な事も言ってくれるので重宝している


「いい考えだな。よし、これから行ってみよう。ショーンついてこい」


「えええっ!?嫌ですよ。こんなくっそ寒い中。行くんならお一人でどうぞ」


本当に口が悪い…


「俺1人で居なくなったら大問題だろ。ラッサを始め皆んな忙しい。お前しかいないだろ」


「何て事言うんですか!俺は研究で…」


「ハッキリ言おう。お前が一番暇だろ。言い出しっぺなんだから責任持て」


 俺はこれでも皇太子なんだ。断りもなく一人フラフラと出かけようものならナディアの様な目に合うのは火を見るより明らかだ。


 いらぬ叱りなど受けたくはない。

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