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流されて帝国  作者: ギョラニスト
117/205

116話


「まっ、待って下さい!!」


思わず声を張り上げた


「ナディア様、これは殿下のご命令です」


「何故!?コンラッドさん…この3人は私を助けてくれた人よ!?しかも関係のない避難民まで!」


 するとラッサ大尉は目を細め、は今まで見た事もない冷静な表情で言った。最近は少し困った顔ばかり見ていたから、少し怖い。


「助けてくれた人?関係のない避難民?」


「そうです!コンラッドさんとエルドさん、フレデリックさんは助けてくれたの!他の人達は無関係だわ」


 ラッサ大尉は何か勘違いしているのだわ!訂正しなければ…色々な事を、と思っていたらラッサ大尉はコンラッドさんに向き合い


「…コンラッド・パーカー殿とお見受けしたが、相違ないか?」


「そうだよ!早く離せ!!それよりお前!一体誰だ!?ナディア様って何だ!?」


 地面にうつ伏せにされ顔だけ上げ叫ぶコンラッドさんは私を憎々しげ見た


「あ、あのっ…騙すつもりはなくて…」


 言葉に詰まってしまった。


 騙すつもりでなくても結果的に私は何一つ本当の事を明かしていない。


 するとラッサ大尉が横から


「この周りの人達はあなたのお仲間では?」


 何を言っているの!どう見ても避難民なの…に?あら?どうゆう訳かみんな顔を伏せて目を合わせてくれない。


 エルドさんとフレデリックさんの顔面蒼白になっているし


「…フン。腐ってもドレナバルだな」


ボソリとコンラッドさんが呟いた


はい!?


「いえ、腐ってないドレナバルです。この2人以外全員連れて行け!!」


 ラッサ大尉の掛け声で、コンラッドさんを始め周囲にいた50人程の避難民ごと連行されてしまった。


 え?本当にお仲間でしたの?単独行動は嘘だったの!?エルドさんやフレデリックさんを見ると呆然としていた。


「さて、ナディア様。貴女を連れ出したのはどちらですか?」


 連れ出した?ラッサ大尉の言葉にポカンとしてしまった


「どうゆう事ですの?」


「遠慮はいりません。エルドかフレデリックにこの村から連れ出されたのでしょう?」


「違いますわ!?…逃げている途中川に落ちただけです…」


 途中から小さな声でラッサ大尉にだけ聞こえるように言うと


「は?」


「ですから川に落ちたのです。滑って転んで!」


 あぁ何故こんなに沢山の人がいる前で恥を晒さなければいけないのでしょう


「連れ出された訳ではない?」


「ええ。私が!滑って!転んで!川に落ちた所!コンラッドさんに助けてい・た・だ・い・た・の・で・す!!」


 段々腹が立ってきた。


 一体何を疑っているのかしら?どうして私が大声で自分の恥を叫ぶのよっ!!


「はぁぁ〜〜〜〜〜〜」


 ラッサ大尉は大きく息を吐いてしゃがみ込んでしまった。


「ウィンディア殿達が戻った後、大騒ぎになっていたのですよ」


「アイラさん!アイラさんは無事なのですね!?」


「ええ。刃物に毒が塗ってあり、一度は全身に毒が回った様で今はまだ休んでいますが、きちんと手当もされ意識も戻りました」


 毒!?そんな事になっていたなんて…でも無事なら良かった。

他の2人も大丈夫よね?


「何故私が攫われた事になっていたのかしら?」


「グレタが…ナディア様は道に迷う事はあっても、1人であの林を抜けれる事はありえない!と…なのでてっきり誰かに拐かされたか攫われたかだと…」


!?


 こんなに大勢の前で更なる恥を明かされた?

案の定周りの人達がヒソヒソと話し出している。


「ま、まぁ…川沿いに戻ろうとはしたのですけどね…」


何とかそんなにダメな人物ではないとアピールをしなければ


「太陽の位置を見れば、どちらに進めば良いかわかりますからね…」


 どうかしら?

知的な所もあると知ってもらえたかしら?


「川沿いに東へ進んだのですか?」


「ええ。陽が昇る方角へ」


「どおりで…ナディア様、私も現場を見に行きましたが、あの川沿いに東へ進むと林からは逸れてしまうのですよ」


何ですって?


「最初の…聖なる泉?の林は途中で途切れ、別の林になっているのです」


「で、でも林の近くに温泉とマリアンヌさんのお宅があるのですよね?」


「ええ。ですから聖なる泉の林の近くにはあるのですが、多分ナディア様は更に進んで、違う林に行かれたかと」


!?林違い?


「いえ、でも…」


 避難民どころか、一般兵士まで兜越しに眉を顰め私を見ている気がするわ。ここは言い訳などしない方が良さそう…



「とりあえず殿下がお待ちです。ナディア様参りましょう。エルド、フレデリックも話が聞きたい。一緒に来るように」


 兵士に囲まれゾロゾロと進み始めると


「ま、待ってくれ!俺達も入れてくれ!王都から逃げてきたんだ!」


 1人の難民が叫ぶと「そうだ!早く中に入れてくれ!」「遷都したんじゃないのか!?」あちこちから声が上がりだした。


「っと、第三小隊、後は頼んだ」


「「ハッ!!」」


 コンラッドさんの掛け声で歩兵の人達が私達から離れ、避難民達に声を掛けて落ち着かせようとし始めた。


 良かったわ。暴動みたいになったら小さい子供やお年寄りは命に関わる。


 ついでに堀の周りに柵を作ってくれたら更に安全なのだけど。


 はね橋を渡っていると堀に落ちた人が結構な人数になっているのがよく見えた。


 這い上がる為のロープも必要そうね。


 もう一つついでに、私はそんなにダメな令嬢ではないと避難民に伝えてくれないかしら?




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