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流されて帝国  作者: ギョラニスト
116/205

115話


 ハイドン村東門前は中に入れない人でごった返していたので、少し離れた高台から私達は眺めている。


 何だか城壁が更に高くなっている気がするけれど、手前の堀は相変わらず水は無く、大きな空洞のままだわ。


 門へ入る為のはね橋は当然上がったままで、人並みに押されて堀にゴロゴロ人が落ちている。

 大丈夫かしら?早く柵を設置した方が良いのでは?


「恐ろしく守りに入った村だな。やっぱり遷都の噂は本当か…」


 コンラッドさんが独り言の様に呟くとエルドさんが


「もしかしてあの空の堀からハイドン村へ入るんですか?結構な深さがありますよ」


「ん〜、最初はそう思っていたんだがな…これでみてみろ」


 コンラッドさんは細長い望遠鏡をポンとエルドさんに投げて


「城の土台の所…堀から上になるにつれ角度も急だし更に鼠返しになっている。乾季の侵入に備えての作りかぁ?あんまり見た事無いけどコレ作った奴いやらしいな。お前ら誰が作ったか知ってるか?魔法で作るんだろう?」


「誰がも何も俺はこの城壁ができる前に来ていただけで、さっぱりですよ。フレデリックだって似たようなモンだよな?」


「はい。サッパリ…」


 とフレデリックさんが言い終わるや否や、全員こちらを見た。

 ちょっとやめて。私を見ないで


「下っ端小僧に分かる訳ないよなぁ」


 ため息混じりにコンラッドさんは言った。


 良かった…凄まれたらうっかりラッサ大尉が堀係でしたと言ってしまう所だったわ


「仕方ない。とりあえず門に行ってみるか。馬はここに置いて行こう」


 4人で再び歩き進んだけれど、これだけ人がいるとコンラッドさんの恐ろし気オーラは発揮されず、人に揉まれながら必死で逸れないようにした。


 ここで迷子は致命的だわ。


 堀に落ちない程度に近寄りコンラッドさんは難しい顔してはね橋をみていると、ギギギとはね橋が降り、同時に門扉が動きだした。


 おお〜!

周りの人達から歓声が上がったけれど、コンラッドさんは盛大な舌打ちをし


「ここで門開けるのかよ…仕方ない。平民のフリして入るしかないか。おい。隊服上着だけでも脱げ」


何ですって?


「いや、わた…僕はさ、寒いから着たままで…」


「バカ言うな。俺が皇太子なら民間人は入れるけど、隊服着ている敵か味方かわからない奴なんて入れないぞ」


 そうだけど!

 脱いだらぷっぷちゃんを隠せないし、流石に女性だとバレてしまうわ!


 それなのにコンラッドさんは無理矢理私の隊服に手をかけ剥ぎ取ろうとする。


「コンラッドさん!こ、コイツ本当に寒がりだからっ」


「そっ、そうそうそう!」


 エルドさんとフレデリックさんも助け船を出してくれて、4人で取っ組み合っていると、どよっと周りが騒めきだした。


 何?歓声とは違う様子に門に目をやると


「何だ?」


 コンラッドさんもやっと手を止めてくれた。


 はね橋は降り人々が途中まで立ち入った所で足を止め、そこから先に進もうとしない。門を見ると


「おいおいおい…」


 呆然としたコンラッドさんが呟いた。


 はね橋の途中まで進んだ人々が引き返して来て、門から隊列を組んだ兵士達が行進してきた。


 鎧を身に着け槍まで持っていて、入り口は大混乱に陥った。


「うわー!逃げろ!」


「キャー!押さないで!」


「もっと下がれー」


 人々は逃げ惑い堀に落ちる人が更に増えている。


「あいつらここでおっ始めようってんじゃないだろうな?離れるぞ!」


 コンラッドさんの掛け声でひとまず人の流れから外れた所へ避難し、振り返ると歩兵の後ろに騎馬隊がいるのが見えた。


 本当にここで戦なんか始めないわよね?殿下はあの大隊と戦うより村の整備を急いでいたのに何故?


 私達の近くをガチャガチャと鎧の音をたてながら歩兵が進む。一体どこへ…と端にいた歩兵の1人が足を止めコチラを見ている。


 あれは…


 ヒューズ君では?ちょっと離れているし、鎧を身に着けていて顔も細部までわからないけれど、ちょっと似ている気がする。


 声をかけたら殿下の所に連れて行ってくれるかしら?


 手を上げようとした所で、ヒューズ君らしき人は1人踵を返し猛ダッシュで戻ってしまった。


 え?もしかして私を見てUターン?ショックを受けていると


「何だ、今のヤツ…俺達見てUターンしたのか?それとも初戦で腹痛くなってトイレに行ったか…」


 コンラッドさん、なんて失礼な。


 ヒューズ君はそんな事でお腹を壊すようなひ弱な子ではないのよ!そして相変わらず下品だわ!


そう言おうとした時地鳴りの様な音が聞こえた


「な、何だ⁈」


 エルドさんが叫ぶと同時にはね橋の上にいた歩兵達が道を空け、門の中から物凄い勢いで騎馬数頭が駆けている。


 何かあったのかもしれない。


 逃げ惑う人達の間をお構いなしに駆け抜け真っ直ぐ私達に向かって来る馬…


 私達に?え?グングンこちらに近づく騎馬達のせいでもはや阿鼻叫喚と化した東門前、私達の前で騎馬は止まった。


「いたぞ!確保ー!!」


いやー!何!?怖い!!


 逃げる間もなく私以外の3人とその周辺にいた避難民まで取り押さえられた。


 どうしたらいいのかとオロオロしていると、1人の兵士が馬から降り私の前で傅いた。


「ご無事で何よりです。殿下がお待ちです。ナディア様」


 兜を取ったラッサ大尉がそこにいた。

安心した途端足腰の力が抜け、ヘナヘナとその場に座り込むと


「おいコラ…一体どうゆう事だ」


兵士5人がかりで地面に押さえつけられたコンラッドさんが怒り心頭で言うと


「そ、そうだ!仲間の顔忘れたのか!?」


その横でエルドさんが捲し立てる。


「エルド、フレデリック、お前達がナディア様を?」


立ち上がったラッサ大尉が静かに言うと


「そうです!俺達が…」


安心したようにエルドさんは立ち上がろうとした時


「全員連行しろ!殿下の判断を仰ぐ」


!?!?


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