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流されて帝国  作者: ギョラニスト
115/205

114話


コンラッドさんが話を続けた


「多分遷都の噂を流したのは王家の関係者だろう。きっと大分以前から準備を進めていたに違いない」


 全然違いますけど!?


「村の中の整備もほぼ完成していると思うから、近い内王都から脱出した人々を受け入れるはずだ」


 コンラッドさんとんでもなく間違えている。

けれど私達はそれを指摘する訳にはいかない


「だから俺はその前にハイドン村に入りたいんだ」


「コンラッドさんの探し物って一体…」


 エルドさんが尋ねると

「言えないし、言わない。出来れば人が少ない内に探したいからあの人達が村に入る前に潜入だ」


「では傭兵団を呼んだのは?」


 思わず質問してしまう。ハイドン村に潜入した後、傭兵団を招き入れるつもりでは…


「この後も続々と人はここに集まって来るだろ。とりあえずこれ以上この場が混乱しない様にしてもらう」


「え?コンラッドさんいい人…」

 

 思わず口から本音を漏らしたら


「俺は始めからいい人だろ!?何だと思ってんだ!そうは言っても呼んだ傭兵団はニ部隊。テオドール村と王都の近くに潜入しているが、テオドール村は丸一日、王都組は3日以上かかるだろう。この国の人達みたいに魔法を使える訳じゃないからな。それまでに暴動が起こったりしなきゃいいんだが…」


 コンラッドさんて本当にいい人の様だわ。

今まで傭兵ってお金さえ貰えば、何でもアリな恐ろしいイメージだったけれど


「とりあえずお前ら、無事ハイドン村に入れたら皇太子始め上層部に俺やパーカー傭兵団はいい人達だ。敵じゃないと伝えろよ」


 …前言撤回。


 わざわざ敵じゃ無いって言わせるの?それって味方でもないと言う意味かしら?

私が勘ぐり過ぎているだけ?


「何だその顔は!」


「…いえ、その…」


 エルドさんやフレデリックさんも微妙な顔をしている


「心配するなって。ドレナバルをどうこうしようと思ってない。俺は別に国が欲しいとか権力が欲しいって訳じゃないんだ。平和が一番だと思ってる」


「傭兵だよな」

「傭兵ですね」

「傭兵なのに?」


エルドさん、私、フレデリックさんの順に言うと


「お前ら失礼だな。傭兵が平和が一番だと思ってもいいだろう!?」


「平和になったら仕事無くなるだろ」

「無職ですね」

「まさかその為に混乱を!?」


「おいコラ!!殴るぞ!俺は探し物をしてるだけだ!その為にこの国に単独で来たのに、こんな事にになりやがって!困っているのはこっちも一緒だっての。ちょっと位ドレナバルに恩を売ったってバチはあたんねーだろ」


「本当に単独だったんですねー。で探し物って?」


エルドさんも大概しつこい


「言えるか。まぁもし見つけたら、戦どころの話じゃないな。本当にあるのかも怪しいけど」


「そんなあるか無いか分からない物を、何でコンラッドさんが探すんですか?依頼なんですよね?」


エルドさんがもっともな疑問を口にすると


「知りたかったらさっさとハイドン村に入るしかねぇよな?動かすのは口じゃなく、頭と身体だ。ほらボサッとしてないで行くぞ」


 絶対に言う気は無さそう。まぁ仕事だとしたら守秘義務もあるのでしょう。


 陣に足を踏み入れると、そこかしこに人がいる。


 沢山の兵士の間に老人がいたり、妊婦さんがいたり…この人達が王都から逃げてきた人達かしら?


 すると奥の方から言い争う声がしてきた。4人そろそろと近寄ってみると至る所で揉めている。

 中には取っ組み合いの喧嘩をしている所もある。


「ドレナバル軍の兵士もいるのに何でこんな事に…」


 フレデリックさんが呟いた。確かに全く統制も規制もされず、兵士達は知らんぷりをしている。


 コンラッドさんはこれを見て傭兵団を呼んだのね。


「ここにいる兵士は事態収集しようと全く思ってない様なんだよ。任務があるにしても、上官命令だとしてもちょっとなぁ」


 コンラッドさんが首を傾げながら言うと


「揉め事を諌めるなって上官命令っておかしいだろ」


 エルドさんが憤慨して飛び出そうとした所


「おいコラ待て。今はダメだ。ここで騒ぎを起こしたらエルド、お前を見捨てる事になる」


 今この場で止めに入ったら騒ぎになるのは分かるけれど、それでエルドさんを見捨てるなんて


「いや、何言って…」


 エルドさんが反論しようとすると


「見捨てる。何度も言わすな。俺はあの村に「今」入りたいんだ。お前らは違うのか?」


 コンラッドさんの真顔に気圧され、エルドさんは何も言い返せなかった。物凄く怖い。コンラッドさんの真顔…


 でも、確かに私達は今ハイドン村に入りたい。


 私達は喧騒の合間を縫う様に東門へ向かう。あちらこちらから聞こえる怒声に『兵士は何をしているんだ』とか聞こえてくる。


 コンラッドさんも兵士の服を着てはいるけれど、私達の様にドレナバルの制服ではない。私もそうだけれど、ドレナバルの制服を着ている2人はとても悔しそうな顔をしていた。


 私もドレナバルの兵士ではないけれど、揉め事から聞こえてくる貴族達の高飛車な言い分はとても恥ずかしい。


 早く、早くハイドン村に入ってこの現状を伝えなければ。


 東門が見えてきた…人は更に混んでいて、馬で進むのも困難になってきた。


 ちなみに私はコンラッドさんの気遣いとやらでフレデリックさんの後ろに乗せてもらっている。馬に乗れないから有り難く乗せてもらっているけれど、到着したらまず初めにそんな関係じゃない事を言わなければ。


 徐々に城門に近づいている。


「チッ。おい、降りて進むぞ」


 いよいよ進めなくなって4人馬から降りる。こんな人混み馬を引きながら進めるのかしら?と思っていたら、人混みが私達を見るなり割れていく。


 ふと先頭のコンラッドさんを見ると恐ろしい位のオーラを醸していた。異国の特徴を持つ黒髪、黒い瞳のコンラッドさんは体格も大きい。その人が威圧感を撒き散らしながら歩いていたら、そりゃあ避けるわよね。



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