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流されて帝国  作者: ギョラニスト
109/205

108話

グレタ視点です


 ナディア様達と別れ、薄らぼんやりした月の明かりを頼りに、ひたすら雑木林を小走りで進む。


 後ろからはセダンさんの足音がして、1人じゃない事に安心感を覚えた。


見つけた!


「セダンさん!ありました。あの馬車です」


 立ったまま休んでいた馬達は私達の気配に気づきブルルルと鳴いていた。


「あぁ、二頭立てなんだな。でも悪いがアンタとはここまでだ」


 振り返るとセダンさんの温厚そうな雰囲気が変わっていた


「どうゆう…事ですか?」


「こっちにも事情があるんだ。アンタのご主人様も今頃…本当に悪いな。命までは奪わないから、大人しくしててくれ」


!!セダンさんの手が伸びてきた。


 セダンさんが敵⁉︎

足元から立った鳥肌が全身に広がる。


 ナディア様…!

 いえ、違う。あっちには師匠が、アイラさんがいるから大丈夫。


 私は私の身を守って、この馬車を泉まで持って行かなければ。


 動かし方がわからないけれど、最悪馬を引いて歩いて行けば大丈夫!!


 セダンさんの手を避け腰を落とす。

今まで何十回も何百回も練習した技!エアリーの様に電撃は出来ないけれど、ひんやりさせる程度ではダメだ。かなりの魔力を込め、躊躇いなく発動した。


「グアっ!!」


 ちょっと魔力を込め過ぎたかもしれない。


 凍らせてしまったかも…

でも6人もお子さんいるのだからいいわよね?


 そこら辺に生えていた蔦をもぎ取りセダンさんの手足を拘束する。


 急がなければ…馬と馬車を繋ぎ、御者台に腰掛けるも高いし怖い。


 恐る恐る馬に鞭を入れるとゆっくりと馬車は動き出した。馬なんて生まれてこの方扱った事は一度もない


 ただ馬達は賢いみたいで最初以降鞭を入れないでも進んでくれる。良かった。この調子で行けばもうすぐナディア様達の所へ行ける


 あ、でももう少し右側に進んで欲しいかも。右手側だけ鞭を入れたら


ヒヒーン 


 右側の馬だけがいきなりスピードを上げた。

嘘!待って!行くのはもうちょっと右なのよ。


 スピードも落として欲しい!つられる様に左の馬も走り出した。嫌だ!怖い!このままじゃいつか何かに激突する!!


「手綱!手綱を引いてー!!」


 誰⁉︎師匠の声ではないけれど!手に力を込めて引く。


ヒヒーン 

ガタガタガタ


…止まった?


 少ししてドッと汗が出てきた。助かった?御者台の上で腰を抜かしていると


「ハァハァ…良かった。大丈夫ですか?」


「マ、マリアンナ、さん?」


 走ってきたのか、息を切らしながら来たのはマリアンナさんだった。


どうしてここに…ナディア様?師匠?


もしかしてセダンさんだけでなく、家族総出で敵だった?


「他の人達はここから少し行った所にいます。あの、セダンは…夫は?」


「…すみません。置いてきました」


「そう、ですか…」


 今の会話で確信できた。

マリアンナさんは全部知っててここにいる。


「あ、こっちに泉があります。ついてきてください。…信用出来ないかもですけど」


 ついて行って大丈夫だろうか?でも、このままここにいても仕方ないから、少し離れてついて行けば2人はそこにいる?


「…いえ、行きます」


 サクサク枯葉を踏むマリアンナさんの足音の後に、馬車を引く私がいる。嫌な予感しか浮かばない


 もし2人に何かあったら私はどうしたらいい?


 馬車を引きながら歩く事数分、目の前が開けあの泉が目に入った。暗くて良く見えないけれど、いない…ナディア様?ザッと周りを見回すとお婆さんの近くに子供達と…


「師匠?」


 駆け寄るとそこには血の気のない師匠が横たわっていた。まさか…


「師匠!師匠!!アイラさん!」


「ま、まだ息はある。あるんだけど、どうも刃物に毒が塗られていたみたいで…」


お婆さんが申し訳なさそうに言う。


「一体何で…っ!ナディア様は⁉︎」


「その、あっちの方に逃げて…」


答えたマリアンナさんは西を指差す


「全部、全部俺のせいだ。スマン!」


 ドランさんが謝っているけど、どうでもいい


 どうする?私1人でナディア様を追う?私1人でどうにかなる?魔法使い達は?目を凝らして見回すと泉から上半身だけだしてグッタリしている


「…どのくらい前ですか?」


「え?」


「ナディア様が逃げたのはどのくらい前⁉︎」


「い、1時間は経っているわ」


 マリアンナさんが答えてくれた。


 ナディア様は体力が無いし、1人で逃げるには限界がある。魔法使いはここにいると言う事は、もしかしたら近くで隠れているかもしれない!


 立ち上がり駆け出そうとしたら手首を掴まれた。


「し、師匠⁈大丈夫ですか?」


「あまり大丈夫じゃない。けど、グレタ1人で探しにいっちゃダメだ」


ハァハァと息も切れ切れに師匠は言う


「何でですか?ナディア様お一人じゃ道に迷うのがオチですよ」


「うん。そうだと思う。だから、グレタ1人じゃダメだ。魔法使い2人は私が泉に辛うじて沈めたけど、他に仲間がいないとは限らない」


そんな…では私は一体どうしたら…


「ウィンディア殿の所に…彼女はアレでも戦の経験は豊富…」


「師匠⁈師匠⁈」


師匠はそのまま意識を失った。


 嘘!咄嗟に両手を師匠の肩に当てヒールをかけてみる。

傷口は何とかなる。だけど毒をどうしたらいいのか分からない。


 どうしよう、どうしよう!師匠がこのまま目を覚まさなかったら…治療をしていると傷から違和感を感じた。


 これは?違和感を探りソレを一箇所に集めてみる。これが毒?身体中に広がっているソレを手繰り寄せるよう集めていると、視界がグルリと回りだした。


 何…コレ?


 魔力が毒を手繰り寄せるのを止めた。止めたと言うより勝手に止まった。


 そうだ、あの泉は魔力を…それなのにセダンさんにありったけの魔力を使ってしまった



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