表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流されて帝国  作者: ギョラニスト
107/205

106話


「お前パン焼き班の見習いだったのか?」


「は、はい」


 コンラッドさん早く立ち去って!


「なら俺もパン焼き班に異動願い出してこようかな…」


 何を馬鹿な事を⁈

するとフレデリックさんの側にいた人が


「コンラッドさん。傭兵王がパン焼いちゃダメでしょ」


傭兵…王?


「いや、俺ならパンも焼けるハズだ」


「そっちの意味じゃないっすよ!」


「よし!中将のトコ行くついでに頼んでみる」


はい!?


「ちょ、コンラッドさ…」


 行ってしまった。

するといきなり腕を引かれてズキリと手首が痛んだ


「痛っ!」


「うわっ!スミマセン!」


 腕を引いたフレデリックさんは、パッと両手を上げ謝ってきた


「ってその手首どうしたんですか⁈それより何故ここに…まさかお一人で?」


 つい大きな声で話してしまい、私達はこっそりパン焼き馬車の陰に隠れた。


「ふぅ〜〜〜〜〜」


 やっとまともに呼吸ができた気がした


「ナディア様、どうゆう事ですか?」


 真顔でフレデリックさんがコソコソ尋ねてきた


「話すと中々の長さになるのですが…それよりフレデリックさん!ご無事で良かったです」


「ナディア様…」


 感動の再会を果たしていると


「まて。待て待て待て」


 それまで黙って横にいた男性が横から入ってきた


「フレデリック、お前今ナディア様に名前呼ばれたな?いつそんな深い仲になったんだ?」


 深い仲⁈この方は一体誰?ラッサ隊の人よね?

私の事知ってるようだけど…


「小隊長っ!不敬ですよっ。何て事言うんですか⁈」


ええ。その通り。フレデリックさんもっと言ってください


「だって小隊長の俺ですら今初めて喋ったのに!」


 キッとフレデリックさんを睨みつけ言った


「僕、ちょっと前にナディア様の侍女達と一緒に行動していたんですよ。あ、ナディア様、この人ラッサ隊パン焼小隊のエルドさん。小隊長で僕の上司です」


 フレデリックさんは前半をエルドさんに、後半を私に向かって言った。


 …パン焼き小隊?


「エルドです。あ、ラッサ隊は他にも狩猟小隊とか、漁小隊、野菜果実小隊ってのもあります。よろしく…って手首怪我してますよね。早速救護所行きましょう」


 エルドさんは握手をしようとして、私の手首を見て言った


「いえ、大丈夫です。ちょっと捻ってしまっただけですから」


「え?でも…」


 エルドさんは戸惑っているけれど、私には魔術を巡らせる治療は効かないと、魔力が無いと言っていいのか…チラッとフレデリックさんを見る


「と、とりあえずナディア様、お腹空いてませんか?パンならいくらでもあります」


 フレデリックさんも悩ましいわよね。一応殿下から他言無用って言われているし。


 奥に行きパンを取ってきてくれたので


「いただきます」


 柔らかいパンを一口食べたら、自分が物凄くお腹が減っていた事を思い出した。


 令嬢にあるまじき勢いで、お腹を満たした所でエルドさんが口を開いた


「あのう、ところでナディア様、何故こんな所にお一人で?誰かと一緒ではないのですか?俺達を助けに来てくれたんですよね?」


!?


「ゴフッ…ご、ごめんなさい。助けに来た訳では…ないのです!」


私は頭を下げ謝った


「うわっ!ナディア様、簡単に頭を下げちゃダメですよ」


 エルドさんは驚いて私の頭を上げさせようとしたけれど、この2人は助けがくるのをずっと待っていたはずだわ。

 

 申し訳ない事に私と言うお荷物まで加わってしまった


「ナディア様、ではどうやってここに?」


フレデリックさんは心配そうに尋ねてきた


「それが…敵に追われてですね、逃げる途中で川に落ちまして。コンラッドさんに助けて頂き、ここに来た次第です」


「「…」」


 詳しく説明をしたら、敵が泉で魔力を持っていると思うように動けなかったから、逃げ切れたと言わなければならない


 かなり話を端折ってしまったけれど分かってくれるかしら?


「あのぅ…俺にはさっぱりわからんのですが…フレデリック、お前分かるか?」


「いえ。敵に追われてウッカリここに来たと言う事しか」


ですよね。


 私はこのエルド小隊長を事を信用していない訳ではない


 ただ果たしてこの国でそれを打ち明ける事が良いのかどうか…私が考え込んでいるとフレデリックさんが


「ナディア様、殿下を始めアイラやコニー、侍女達殿も知らないんですよね?ここにいる事を」


「ええ。誰も知らないわ。マズイわよね」


「「マズイですね」」


 2人の視線が居た堪れない。


「何とか生きている事を伝えられれば良いのだけれど…」


「それだけではダメです。一刻も早くここを出てハイドン村に行かないと」


 真剣な顔でフレデリックさんは言うけれど、こっそり抜け出したとしてもあの城壁を越える事はできない。


 川だってハイドン村を過ぎた所に、別の川との合流があってハイドン村に近ければ近い程急流になっている。


 村を守る為の城壁と川が、返って私の帰りを邪魔する事になっている


カンカンカンカン


 周りが急にざわつきだした。何の合図?


「あ〜もうそんな時間か」


 エルドさんが言いながら立ち上がった


「ナディア様、この話はまた後で。食事の用意をする時間の合図なのですよ」


なるほど。


「では私も何かお手伝いします」


「「ナディア様はそこで座ってて下さい!」」


「そんな訳には参りません。コンラッドさんに私はパン焼き班の見習いと言う事になっているのですから」


怪しまれない為にも私はここで働いていないと!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ